【思春期子育て】「とりあえずハグ」してみた日。
秋。まだ日中は半袖で過ごせる日もある九州だけれど、確実に日暮れは早くなっている。
大人も子どもも、11月は気持ちが落ち込みやすいらしい。日照時間の短縮に加え、夏の疲れが出たり。学校では何かと行事もあったりして、それが終わった安心感と燃え尽き症候群とか。クリスマスのウキウキはもうちょっと先だしなあ。
そういう影響なのか、中1娘の家でのテンションが著しく低い(特に朝)。
梅雨時期もそんなことがあったので、学期半ばに起こる、ありがちな現象のようでもある。
要領が良いとは言えない娘。時間を浪費してそうな時は、「○時だよー。」とか「早く寝なきゃねー。」などと声掛けしているが、気分転換も必要だろうなと思い、あまり口出ししないようにしている。
それに、私は私で忙しい。基本的な衣食住は提供するが、後は娘がどうやってこの状況を打開していくのか、少し離れたところから観察していたのだ。
そんな状況でも、なんとかギリギリで頑張っていたようなのだけれど、ついに先日、糸が切れた模様。朝、いつも乗るバスが来る時間になっても、娘が起きて来ないのだ。目覚めてはいるのに、全く焦る気配がない。夫は気にしながらも出勤して行った。
ーーはは~ん、「学校休みたい…」とか言い出すな、こりゃ。
すでに経験済なので、いつもと違う様子にピンとくる。娘は口には出さないが、図星だったよう。不貞腐れたような、拗ねたような表情で起きてきた。こうなることは想定内だ。
ーーまだバス間に合うよ?あと2本遅らせても全然大丈夫だよ。いつも早すぎるんだよ。
娘「…。」
いつもなら、「なるべく空いている時間のバスに乗りたいから」と、バタバタ準備して飛び出して行くのに。この日は、のろのろご飯を食べ、だらだらと準備している。その間に、小3息子も登校して行った。
そして、ようやく出かける、という段階になって、「…行きたくない。」と玄関で泣き出した。やっぱりかー。
ただ、何となく、この日はあと少し背中を押せば行けそうなレベルだな、と感じた。葛藤しながらも、玄関までは来れたのだから。
さて、どうするかなーと頭の中でぐるぐる考える。
ーーじゃ、とりあえず、ここに座って涙を拭いてごらん。
と、ティッシュを渡す。そんな泣き顔で出て行くのはよろしくない。靴を履き、リュックを背負ったまま、玄関に座って静かに泣く娘。
次は?次は何て言う?
うーん、これでどうだ!
ーー気持ちが落ち着いたら、ゆっくりでいいから行きな。
これでいいのかー?!全然泣きやみませんやん。
いや。いいんだ、多分。今日は、簡単には「休む?」とは言わないんだよーっと。
時間的にはまだ大丈夫。
次の手を考えている間、腫れ物のように扱うのも何だか違うなーと思い、朝のルーティン家事を再開する。私も出勤なのだ。洗濯物を干したり、食器洗いをしたり。
すると、あっという間に時間が経ち、気付けば、2本後のバスも行ってしまった。あちゃー、遅刻確定だ。
ーーあらー、もう間に合わないね。1時間目は何時から?
娘が「8時半。」と答える。見ると、泣き止んではいて、さっきまでの悲壮感はない。その表情を見て、確信した。うん、多分、今日は行ける!プランBだ!
ーーじゃあ、朝の会だけ遅刻しますってアプリで連絡しとくよ?理由は自分で先生に言いな。
と言うと、娘は、「うん。」と言って立ち上がった。おー!(心の中で拍手)
でも、すぐには1歩が踏み出せない。表情をもう一度見る。うん…、明るくはないな。
そうだ、笑顔だ。娘よ、せめて口角だけでも上げるんだ!オプション追加しとくか!!
ーーとりあえず、ぎゅーする?
と聞く。突然だけど、ハグだ、ハグ!
娘は一瞬、「え?」と驚いたような表情をしたが、拒否することはなく、「うん。」と頷いた。
それで、娘の背中に手を回し、ぎゅーっと抱きしめた。私とほとんど身長が同じになっていて、「わあ、こんなに大きくなったのかあ~♩」と、こんな状況なのに、呑気に成長を感じる。そして、華奢な背中をトントンとたたきながら、
ーーがんばってるのは、ちゃんと分かっているからね。
とだけ伝えた。
すると、娘は、「うん。」と頷いて、私の腕からスルッと抜け、玄関から出て行った。振り返りもせずに。
娘の口角が上がったかどうかまでは、見えなかったので分からない。
安心したのと、ちょっぴり心配と。
いや、でも、きっと大丈夫!
そう言い聞かせて、私も仕事に向かった。
*
夕方。帰宅した娘は、すっかり元気になっていた。学校は楽しかったようだ。あー、よかった。やっぱり行ってよかったね。
「寝坊してバスに乗り遅れましたって、ちゃんと先生に言ったよ。」
とのこと。よしよし、それでいい。
朝の流れが気にはなったが、「ハグ、どうだった?」なんて聞くのはウザいだけだよなあと、その点は黙っておいた。
この夜、私は何故かくしゃみと鼻水が止まらなかった(多分、寒暖差によるもの)。すると、そんな私に、娘がふいにこう言ってきた。
「ママ、それ風邪じゃない?わたしも、ちょっと喉、痛かったし。朝、ハグしたから、うつったのかもよー?」
おやおや?ハグ、嫌じゃなかったっぽいね?むしろ、よかったみたいね??(ニヤけるのを我慢する。)
ーーじゃあ、これからはちょっと離れてぎゅーしなきゃね。風邪とかうつるから。
と、微妙な返しをしておいた(上手いこと言えなかった)。
何はともあれ、朝の一件は、きれいさっぱり精算できた様子の娘。この日は、いつになくテキパキ宿題と準備を終え、早めに就寝していた。
*
忙しいだけじゃなくて、心も揺らぎ、難しいお年頃の中学生。長子なので、親の私たちも初めてのことが多く、戸惑うこともたくさん。
だけど、親が思っているよりも、子どもは自分で育っていくし、ちゃんと色々考えている。
だから、その力を信じてあげたい。親にできるのはそんなとこなのかな。
そして、心がちょっとだけ弱っていそうな時、あと1歩踏み出す勇気が必要そうな時は、変にアドバイスする(地雷を踏むリスクあり)より、「とりあえずハグ」くらいがいいのかもしれない。この日のことで、なんとなくそう思えた。恥ずかしがったり、嫌がった時は、別の方法で。手を握るとか、目を見て微笑む(菩薩か)とかでもいいのかも。
私たちの思春期子育ては、まだまだ始まったばかり。正解も不正解も分からない。だから、娘のことは引き続き見守りつつ、親としてできること、逆にしない方がよさそうなことをその時々で考えながら、一緒に成長していけたらなあと思った。
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最後までお読みいただきありがとうございました♩
***2024/11/18追記***