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【8】高い完成度を目指さず、目をつぶって最初から最後まで書きとおす

お久しぶりです、江口絵理です。仕事モードのマガジンに戻ってきました。

前回の「仲本ウガンダ本」執筆プロセスはこちら(↓)。

休み方に気を配りつつ、朝から晩までキーボードをたたく日々が続きます。勝ったり、負けたり、休んだり(詳しくは前回の記事を)。

この時期、自分に何度も言い聞かせるのは「完成度の高い原稿を目指さない」こと。

これが、なかなかできないんですよね。頭の中には素材が渦巻いていて、外に出るのを待ってる。いい形で外に出してやりたい、素材の魅力をうまく書き表したい、と思って机に向かってるわけだから。

ごくごくたまに、最初の一筆で「これだ!」という文章になることもあるんです。そういう文章は、書いてから本になるまで一度も直す必要を感じなかったりします。唯一絶対の正解、百点満点の文章とは言わないけど、たぶん自分の中で95点ぐらいはとれてる。

でもそのレベルだけを目指していると、ぱたりと先に進まなくなるタイミングが出てきます。それが多くなると、自己評価がどんどん低くなる。そして書けなくなっていく。大げさ!と思われるかもしれないけれど、ほんとにそうなんです。

自分への期待がなさすぎてもうまく書けないし、かといって、自分自身の逃げ場をなくすほど強く掲げすぎてもいけない。そんな危ういバランスをとりながら長距離を歩き続けようとすると、どこかで綱から落ちる。

だから、ここで採用すべき気持ちのもちようは「完成度にこだわらないこと」だと思っています。

40点でも30点でもいいからとにかく書き続ける。立ち止まらない。

40点、30点の日は自分の頭をかきむしりたくなるけど、そこで自分を責めないで、あとで、いくらでも完成度を上げるための努力はできる、と自分に言い聞かせる(いま、ここに書きながらも自分に言い聞かせています)。

推敲前の「しばらく放置」が大事

推敲は何段階かに分けてやっていきます。

1) 原稿を書く。目安は一日一章。

2) 翌日、画面で読み返しながらざっと直す。書いてから一日経っているので、書いたときつまずいた箇所がわりとするっと書き直せたりする。あまり細部まで入り込まずに、次の章を書き始める。

3) それを繰り返しながら全章書く

4) データをpomeraからパソコンに移す。

5) 印刷する
※30点レベルの部分が残っているのに印刷するのはやはり気が進まないもの。もうちょっと直してから…と何度もためらう。でも、千数百字の記事なら画面の中でそれなりのレベルまで推敲できるけれど、何万字に及ぶ書籍の原稿は、俯瞰で見渡さないと見えてこないものもある。だからえいや!で印刷する。

6) 放置する
※印刷まですると、やっと腹がくくれる。ダメな自分がダメなまま表に出ているので、もう「ここが出発点だ」と認めるしかない。とはいえ、まだ筆の痕が生々しくて客観的に見られないので、距離を置くためにしばらく寝かせる。できれば、激しいスポーツなどで、原稿のことを完全に忘れる時間をもつのがいい。

7) 紙でしっかり読み、赤字をがっつり入れる
※一度放置したので、書き立てほやほやの時期に比べると、自己嫌悪だの40点だのといった雑音はあまり気にならなくなっている。

8) パソコン上のファイルに紙の赤字を反映させつつ、画面上でもさらに推敲
※この7)と8)がもっとも大がかりな推敲プロセス。時折、第一稿よりうまく書けてほくほくすることもある。

9) 印刷して再び放置。

10) 一気に読み通して、再び推敲

11) パソコン上のファイルに紙の赤字を吸収しつつ推敲

これぐらいまでやると、全体をならせばなんとか60点を超える。編集者さんにギリ見せてもいいぐらいまで来た、と判断します。祝、第一稿完成! 

編集者さんに送るときに、言い訳や補足は書かない

そして、メールソフトを立ち上げ、新規メールの宛先に編集者さんのアドレスを打ち込み、件名の欄に「仲本さん本の原稿(第一稿)」と書く。

言い訳やら補足説明やらを山ほど書き添えたくなるけれど、我慢。書きたくて書きたくて、1000字以上書いてしまいそうになるけど、いっさい書かない。我慢

いざ本が出たときには読者ひとりひとりに補足をつけて本を届けるわけにはいかない。最初の読者である編集者さんにも読者と同じように、まずは原稿とだけ相対してもらったほうがいいと思うから。言い訳なんて、どうしてもしたければ後からいくらでもできる。

それに、わたしが今ぐじぐじこだわっているポイントは、編集者さんからしたら「別にいいんじゃない? これで」というぐらいのことかもしれない。

わたしがぐじぐじ書いてそれにつきあわせてしまうと、編集者さんはそっちのケアに力をとられてしまって、この本をほんとによくするには何をどうしたらいいか、というところに注意が行かなかったりするかもしれない。それは困る。

原稿に何が足りないか、何が過剰かを先入観なしに見てもらおう。言い訳で自分のプライドを守るより、素のままの原稿を見てもらおう。

震える手でメール送信。シュワッ!……あああ、行ってしまった。

開放感と虚脱感の両方があふれだして、しばし動けず。足がうまく地に着かない。

よし!とこぶしを握り締める。しかしここが工程の半分

本一冊分の原稿だし、きっと編集者さんは忙しいし、すぐに読んでもらえるわけじゃない。落ち着かない日を何日か過ごすことになるだろう、と覚悟していました。

ところが本書の編集者さんは、すぐに読んでくれたのです。その日のうちに、(児童書なのに)「大人の私でも考えさせられ、また、感動いたしました」と温かい言葉をかけてくれました。

よしっ!(と、こぶしを握り締める) 無事に船出ができました。

これまでの本づくりの感覚だと、ここまで来て、全行程のだいたい半分ぐらい。次は、編集者さんからの具体的なフィードバックを待ちます。

(【8】終わり)


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