キャリアオーナーシップを意識しよう【前編】
起業し、株式会社EpoChを設立して1カ月半が経過しました。
組織戦略・人事戦略アドバイザリーとエグゼクティブコーチングで幾つかの企業様に入り、それぞれの組織と人事課題に向き合っている中で、経営層自身の「キャリア」、そしてそこで働く従業員の「キャリア」に関するお話やご相談を伺う機会が予想以上に多いことに日々気づかされます。
今回は2週にわたり「キャリアオーナーシップ」について語ります。
GW連休を目前に控え、連休期間にふと自身のキャリアについてリフレクション(内省・振り返り)してみるのも良いかもしれませんね。
キャリアオーナーシップって?
「キャリアオーナーシップ」とは、個人それぞれが「キャリア形成の当事者」と認識し、主体的にどう働き、ひいては、どう生きていくのかを考え、人生そのものを能動的に形成・構築していくことを指します。
具体的には、個人が自己認識とリフレクションを繰り返しながら、能動的にキャリア開発を行っていくことが必要です。
また、企業側目線でも、予測不能な変化に柔軟にしなやかに対応するために、従業員の自律的なキャリア形成を考える重要性が高まってきています。キャリアオーナーシップが推進されることで、特に企業側目線では「言われたことだけをやる受け身集団」から「自ら考えて行動する従業員が多い自律型組織」へと組織が変革し、個々の専門性や強みが強化される機会にも繋がり、結果、その組織の「生産性向上」を導く効果が期待できます。
それを支えるためには上司とのキャリア対話や1on1フィードバックが必要不可欠となり、経営層やHRによる「マネジメント力強化」のための支援が活発になります。
更に、キャリア対話や1on1での双方向の対話が効果的に推進されていけば、「チーム内での相互理解」や「個々が抱える多様な価値観に対する理解と受容」も深まり、従業員の「エンゲージメント向上」にも繋がっていくことになります。
その結果、その組織は「社内人財のリテンション(社内活躍機会による離職率低下)」と「社外人財のアクイジション(競争力ある候補者を惹きつけ獲得できる)」 双方に秀でる可能性が高まります。
その双方が合わさることで「タレントアトラクション」企業に進化します。
外資系企業と日系企業で体感したキャリア感
上記では、企業側目線でのベネフィットで敢えて述べてみました。
と言うのも、これまでの日本の組織傾向では、企業や組織側が個人のキャリアを主導する考えが主流だった現状があるのでは、と思ったからです。
私自身が17年間外資系企業を経験し、その後、4年弱、日系企業のCHRO(最高人事責任者)に就くことで、経験から感じるキャリアに対する考え方の違いの傾向が見えました。あくまで私の経験からくるものですので「一つの考え方の選択肢」程度にサラッと読んでいただければ幸いです。
まず、私が長年の外資系企業経験で得ることができた考え方や価値観の一つが「個人が自身のキャリアとその開発に責任を持つ」という点です。
昨今、日本でも同様のことが言われ始められているのは、主に、
① Covid-19での世の中の働き方や価値観の大きな変化と不確実な未来
② 人的資本経営含めた様々な外的要因やトレンド
などが起因してのことかと推測します。
<そもそも「キャリア」って?>
キャリア、つまり「career」は、「carriage(馬車)」「carrier(物を運ぶ人)」と同義語と言われています。そのため、「career」の意味する語源含めた意味は「馬車がたどってきた道程を示す“轍”」「自分自身の長期的な生き方・働き方」「たった一度限りの仕事生活における節目での選択の流れ」と捉えると分かりやすいかもしれません。
「キャリア」と言うと、いかに昇格すべきか、給与を上げていくべきか、転職をしていくべきか、と単眼的に捉えてしまうかもしれませんが、決してそれだけではなく「自身の一度限りの人生をどうやって生きていくのか・働いていくのかを中長期的に考えていくこと」です。
こんな大事なことを、先にも述べた通り「企業や組織が個人のキャリアを主導する考え」だけでいいのか?とまずは問いかけてみることが大事だと私は思います。
そうすることで、自分事として生き方も含めたキャリアを棚卸してデザインしていくこと、そしてその開発の必要性を認識し、今後に向けて行動変容することで、社内外双方での活躍の場(=可能性)の「選択肢」を広げ、自身のライフステージも含めた波の中で自発的にチョイスしていくことにも「備える」ことができるはずです。
その結果、自発的にチーム間での共有と対話も深まり、透明性が高まりチーム間での信頼と相互理解・受容が生まれ、組織も活性化し「新しい価値の創造とイノベーションの促進」が進んでいくことにも繋がります。
その様な環境に身を置くことで、個人の働きがいや成長意欲も高まっていくことが期待できます。当然、それが第1章で述べた企業と組織側のベネフィットにも繋がっていきます。
きれいなことをたくさん羅列しましたが、これがなかなか上手くいかないから難しい・・・ですよね。
難しいからこそ、ふと立ち止まって向き合うことに意義があるのです。
外資系企業の傾向として、同じ組織内で多様性の理解と受容が非常に高いことがあげられます。個々の価値観やライフステージでの変化が組織内で尊重されていることが一般的に多いのが実態です。
そのうえで、個々が「キャリア」を「自分自身の長期的な生き方・働き方」と捉え、ライフステージを見据えて、思考し、周囲に表明し、たった一度限りの仕事生活における節目での選択の流れに来たここぞという際には、舵取れる傾向が高いのかもしれません。
私は、17年間の外資系企業の中で7年間日本法人のHR責任者に就いておりました。各々の社員のライフステージに沿った働き方とそれにまつわる生き方を近くで見届けたり、1on1で相談に乗ったり、時に影響力を発揮する場面もあったり、その様な貴重な経験ができたからこそ、よりリアリティ持って実感できております。
一方で陥ってはいけないと思う視点もあります。
それが、決して「自分本位だけにならないこと」です。
「キャリアオーナーシップ」の意義って「自らの主体的なキャリア形成を通じて、組織や社会にも貢献していくこと」だと色々な方々との上記のような向き合いで気づくことが多かったです。
キャリアオーナーシップを持つ多くの方々が、「会社をこうしていきたい」「世の中をこうしていきたい」という強い想いとエネルギーが伴って、高い成果を上げている姿を見せてくれました。
キャリアオーナーシップを持つことで、その過程で、「心理的幸福感」や「コミットメント」が高まる可能性があるのかもしれません。
次号はGW連休前!
次号では「今日からでもできること」として、キャリアの棚卸に関するTipsをお届けいたします。
GW連休がそれに最適!という方も少なからずいるかもと思い、このタイミングでこのトピックを2週にわたりお届けしております。
ここまでお読みいただいた方々、本当にありがとうございます。
次号も是非ご覧ください。
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