災害後の暮らしに必要な知識と、プライマリーヘルスケアアプローチ #中編
災害後の暮らしに必要な知識と、プライマリーヘルスケアアプローチについて。
岡本正先生 x EpiNurse代表理事神原咲子 対談、中編でございます。
前編から、ぜひご覧ください
日頃の生活の中ではタイムマネジメント
神原:
健康の面で言うと、日頃の生活の中ではタイムマネジメントですね。
例えば日頃24時間ぎりぎり生活してる人は、やっぱり災害が起きた時にすぐ倒れています。
それは時間が本当に足りない上に、ギリギリまで時間を使うっていう生活習慣なんですね。
だから災害の時も、とても無理をしてしまいます。
日頃から睡眠不足だったら、災害時も必ず睡眠不足になってしまいます。
それが原因で一気に倒れてしまうっていうことが起きています。
他にも、どんな薬を飲んでるかわからない等、お薬のマネジメントができてない。
やっぱり体力や免疫はつけといた方がいいなどもあります。
日頃の生活習慣から正しい食事をしていないと、災害のストレスや偏った食事がトリガーになって糖尿病が発症した事例も聞きます。
やはり日頃の生活を安心した暮らしにするという事を合わせて考えていることって大事で、家族の中でそこに投資をすることが重要かなと言うことが見えてきた思います。
個人情報っていうのは個人自身自分のもの
神原:
私たちの中で一つ課題になるのは、信頼関係と人間関係によって、出てくる情報が変わってくる事です。
私たちは健康問題のエキスパートなので、みなさん体調が悪くなったときには、私たちに声をかけられて、実はここが悪いっていうようなことをお話しされます。
普段他人には解決してくれると思ってないので、言わないようなこと、いつも恥ずかしいって思ってる事も話してくれる事があります。
逆に言ったら、私たちだけでそれを持っておくのも、解決しなかった時に責任があるなと思います。
同じように、家庭内のトラブルや、お金のことを市業の方々に伝えている事も多々あると思います。
私は研究する中で、やっぱり個人情報っていうのは個人自身自分のものだし、コミュニティのための個人情報です。
だから、それを今色々なテクノロジーを使って共有していかなきゃいけないし、自分でも自分の情報を持っていかなきゃいけないなと考えています。
日頃から基本的な適正技術の使用と、他のセクターの協調を改めて、住民のニーズに基づいて整理し直さなきゃいけない。
地域の人たちや被災地の中での対話が大事なのではないでしょうか。
岡本先生のお考えを聞かせてください。
支援者間で個人情報を共有できる仕組み
岡本:
そうですね。やはり災害時の個人情報の取扱いは常に課題としてあがって来るように思います。
専門家が被災地に入り活動することはどうしても必要なことです。
ところが、それぞれの専門家どうしが、どこにどういうニーズがあるのかわからないまま、毎回ゼロから現地の支援をしているのが現状です。
困っている人がいた時に、その「人」の単位でどのようなニーズがあるかを共有できる仕組み、つまり支援者間で個人情報を共有できる仕組みが必要だと思います。
それが、支援から取り残されている人を作らないということに繋がるはずです。
本来、災害対策基本法の「被災者台帳」が果たすのはこのような役割でなければなりません。
個人情報の利活用や、専門家同士の情報の連携を実現するためには、被災者全体の情報をうまく統括管理するプラットフォームが必要です。
技術的な課題と個人情報保護法をクリアしていく議論が大事になってきます。
相談できる相手が人々を守る
神原先生:
災害ケースマネジメントを実現した後に、本当にケースマネジメントは有効だと思えるようになるために、今おっしゃった部分を解決しない。
相談相手が決まったとか、フォーマットが統一されましたっていうだけであれば、技術的にやればできる話ではありますが、そもそもなんで必要かということにもなりますのでここに関わっていることに関して、信頼を受けてちゃんと相談できる相手が人々を守るっていう役割が大事かなと思うんですね。
職場関係の中や雇用の問題を守り、コミュニティの中にちゃんと聞ける人がいるのか。
自助共助の部分で地区活動って言いますけど、地区活動ってやっぱり表示されてないので、その中につなぐ人、ラストワンマイルの向こうに誰かがいるのか。今言うと民生委員さんとよく言われますけど。私たちは潜在看護師が、例えばそういう役割とか、あるいは市民参加っていう形で入っていけないのかなと思います。
最近地域おこし協力隊の方の村の活動をみると、私たちは専門家ですって入ってきなくて、たまたま住民と一緒にお茶してて、たまたま知識を持ってたので、個人の困りごとと解決する人をつないでいるのがすごく有効だなと見ています。
「災害復復興法学」
岡本:
そうですね。先ほど私が「災害復復興法学」という学問を提唱していると述べました。こういうと、やや堅苦しいですし、法律家のバックグラウンドがなければ支援が難しかのように思えます。
しかし、実のところ、プライマリーケアにせよ、お金とくらしの支援を始めるにせよ、とっかかりを作っていただくのは法律家からではなくても大丈夫だと思ってるんですね。
そもそも災害時にどんなケアができるのか、支援に役立つ法律制度のお品書きを、一般的な教養レベルの知識にすればよいのではないかと考えています。
例えば、「罹災(りさい)証明書」という制度がありますよとか、「被災者生活再建支援金」という制度があって、窓口でも相談できますよとか、弁護士などの無料法律相談が受けられる窓口がありますよ、といった知識です。
こういった知識は、地域で日常から話題にするだけでも充分防災になります。
災害時に役立つ制度に関する知識を持つ人たちがどんどん増えていくことを望んでいます。
たとえば、看護師のような方々が、地域の担い手として、プライマリーケアによる健康支援の知識に加えて、生活福祉とか、法律支援なども念頭において、トータルのコーディネーター的な立ち位置を担っていただけるのではないかと思っています。
このような「災害ソーシャルワーク」的な活動は、国家資格の有無にかかわらず、誰でも担い手になれると思っています。
だからこそ、色々な人たちへ「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」の防災教育を展開して行きたいなという思いがあります。
神原:
防災士の教育も変わるかもしれないし、その一コマに入れてほしいなと思いました。
岡本:
防災士向けの研修でも、「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」をテーマにすることが増えているように思います。
防災士の皆様にも、それこそ「プライマリケア」や「減災ケア」と併せて漫談でいただきたいと思っています。
それが次のステップだと思います。
神原:
この原則に乗っ取って住民のニーズを知る方法から含め、どうつなげていくか。
時系列や、場所支援、その受援の立場の距離感だとか、信頼関係とか、コミュニケーションにとっての適正技術のあり方も整理できそうな気がしましたね。
絶対オフラインじゃないと難しいとか、オンラインでもできる事や、あとは外部支援でもできる、同じ知識を持っててもですね。
外部支援でできる事と、内側の地元の人間はできない事が少し分かると、もっと自助共助と外部支援の整理もできるかなと思います。
避難所支援ということで、実際私たちは先行研究から、避難所の情報や、アセスメントの共通項目っていうの同定されたらいいなと考えています。
今回はここまで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。