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【美術展】恋とさすらいの系譜/國學院大學博物館
同じ日に展覧会をハシゴする元気は基本持ち合わせていないが、こちらの展覧会は「無料」だったので、規模はそれほど大きくないだろうとふんで「松岡美術館」→「国立科学博物館附属 自然教育園」の後で行ってきた。
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新古今和歌集
「新古今和歌集」に入集してある「紫式部」の和歌のページ。
▼赤の印から解説がなされていた。
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はやくよりわらはともだちに侍ける
人の、としごろへてゆきあひたるほの
かにて、七月十日のころ、月にきおひて
かへり侍ければ
童女の頃からの幼ななじみの友達だった
人と、年頃になって出会いました。僅かな
時間で、七月の十日の月に競うように
帰られたので
めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに
くもがくれにし よはの月かげ
せっかく久しぶりに逢えたのに、それが貴女だと分かるかどうかのわずかな間にあわただしく帰ってしまわれた。まるで雲間にさっと隠れてしまう夜半の月のように。
この展覧会では久我家の江戸時代の嫁入本「源氏物語」の場面が5帖分、展示されていた。
第八帖「花宴」
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御簾のなかに半身を入れて
「あづさ弓いるさの山にまどふかなほのみし月の影や見ゆると」
私はいるさの山で迷い歩いています。あの時ほんの少し見た月の光(貴女)が、もう一度見えるのではないかと期待して
と詠いかける光源氏に、
「心いる方ならませばゆみはりのつきなき空に迷はしやは」
もし貴方が私を気に入っておられるなら、月のない夜空でも、見当違いの所に行くことなく、まっすぐ私の部屋を訪ねてくることができるのではないですか
と答える朧月夜が描かれている。
第十二帖「須磨」
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須磨に流謫中の光源氏。眠れない中、七絃の琴を弾きつつ、都に残した女君たちのことを思って和歌を詠う。
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第十三帖「明石」
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右側のページの後ろから二行目に源氏が詠んだ和歌、
「秋の夜のつきげの駒よわが恋ふる雲居をかけれ時のまも見む」
が読める。
秋の月の夜に、なあ月毛の馬よ、月毛と名乗っているのなら、私が恋してやまぬ都の、あの雲のあたりへ月のように翔って行っておくれ。すこしの間でも、あの愛しい人をみたいから
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光源氏が、明石の君を訪ねる場面。都に残した紫の上に思いをはせながら、馬に乗って海辺を行く光源氏が描かれている。
第二十二帖「玉鬘」
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玉鬘一行が舟に乗り京を目指す場面。舟首には豊後介(玉鬘の母親・夕顔の乳母の息子)、その後ろには、乳母と相対する玉鬘の姿が描かれている。玉鬘は後姿の方かな?
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第五十一帖「浮舟」
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匂宮(光源氏の孫)が浮舟を小舟に乗せて対岸の家に連れ出す場面。
他の帖では描かれる場面が様々取り上げられるが、こと「浮舟」に関しては「舟に浮舟を乗せて連れ出す」が多い。
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「源氏物語画帖」伝 土佐光元 16世紀・室町~桃山時代
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手に取って見させて下さい!!と思ったのが、これ、
谷崎潤一郎訳「源氏物語」(新訳)草稿
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会期は6月16日(日)までなので、行かれる方は竹内教授による解説を見てから行くとより楽しめるんじゃないかな。
伊勢物語
この展覧会は「恋とさすらい」をモチーフにしているので、この場面も展示されていた。
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昔男が東下りの途上、三河国の「八橋」で「かきつばた」を句頭に折り込みながら歌を詠む場面。
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根津美術館蔵の国宝「燕子花図屏風」尾形光琳 には橋は描きこまれていないが、
メトロポリタン美術館蔵の「八橋図屏風」には橋が描かれている。
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そんな違いを発見するのもまたたのし。
この展示会は國學院大學博物館の中の「企画展示室」で展開されていて、博物館内には他にこの大学にとって王道も王道の「考古学」や「神道」の展示室があった、そして以外にも楽しかったのが「校史展示室」にあったこれら。
「校史展示室」~これをカワイイと言わずしてなんと表現する
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イギリス、ガラード社って何?
ググったら、「王侯貴族の専売特許!ハイセンス、ハイクオリティーなジュエリーを提供してきたイギリス最古のジュエラー」だそう。ご縁が無さ過ぎて道理で私が知らないわけだ( *´艸`)。
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写真では伝わり辛いがとても精巧なだけでなく、とても小さいものだった。
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この「校史」の一角だけキラキラ感が半端なかった( *´艸`)。
博物館を後にしてから知ったのだが、キャンパス内にある3か所の学食を一般の人も利用できるとのこと。
Cafe Lounge 若木が丘
和[NAGOMI]
Memorial Restaurant
次、山種美術館に行った時に利用しようかな。