【読書】「木挽町のあだ討ち」永井紗耶子
直木賞と山本周五郎賞、ダブル受賞しただけある。心が疲れている時にお勧めしたい一冊。
ある雪の降る夜、芝居小屋のすぐそばで、「完璧な」仇討が成し遂げられた。
一合、二合と刀を合わせる音、雪の白と上がった血しぶきの赤。
仇討ちを成し遂げた菊之助は白皙の美少年。
対する仇は、悪い噂の絶えない博徒の作兵衛。
「父の仇、作兵衛、討ち取ったあり」高らかに菊之助が、作兵衛の首級を掲げる。
それは一幅の絵にしたいほど、美しく、完璧だった。
快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れる。
人の温かさ。
涙をのんで無常を受け入れ、そして前を向いて生きている人の逞しさと美しさ。
「真に」成し遂げなければならないことへのチーププレーの見事さ。
伏線の回収。
最近、どうしてこれが直木賞なん?山本周五郎賞なん?な作品が散見されるが、W受賞するだけある作品だった。
胸アツな一冊。