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毎日読書メモ(253)『ミーナの行進』(小川洋子)

今日で北京オリンピック閉幕。ということで、オリンピックつながりで、小川洋子『ミーナの行進』(中央公論社、現在は中公文庫)。単行本の挿絵がとてもきれいなので、文庫でなく単行本を見ることをお勧めしたいです。
1968年のオリンピック時点では物心ついていなかったので、わたしの記憶の中のオリンピックは、1972年の冬のオリンピック(札幌)→夏のオリンピック(ミュンヘン)から。ミュンヘンオリンピックはオリンピック史上最悪のテロ事件が起こったことでも知られており、色々思うところはある。

いい本だった! マッチ箱をはじめとする、美しいカラー挿画も大変よかったし、わざと登場人物たちの感情を抑制して描いて、朋子の視点で芦屋の家の1年を見られたのがいい感じだった。「行進」の風景だけがどう想像してもうまく画像が浮かばないが...。わたしも知っている1972年という年を、きっちり切り取って再現出来ているところが読書の楽しみを増進した。ミュンヘン・オリンピックでのテロとローザおばあさんの涙、このシーンはわたしも涙が出た。ジャコビニ彗星、コックリさんの「すいようび」、フレッシー動物園とサブロー、物語の冒頭で出てきて、その後も出番のあった美しい乳母車、クリスマス・ディナー、図書館とトックリさん、ミーナが紡いだマッチ箱たちの物語。新聞記事を朗読してみんなで悼む家族。これは確かにわたしより少しだけ大人だった少女たちの見た、1972年の物語なのだな、と思った。(2011年8月の読書メモより)

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