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毎日読書メモ(158)図書館のレファレンスサービスを活用しよう!:『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館編)

福井県立図書館編『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)、ついつい買ってしまって読みながら結構笑う。

福井県立図書館のウェブサイトには昔から「覚え違いタイトル集」のページがあり、時々、調べ物の途中で流れ着いて幾つも事例を読んでは大笑いしていたので、別に本で読む必要なんてないと言えばない。

これは全国の図書館と本を探している人々に対して、参考になる事例として発信されており、本日(2021/11/7)時点で927件の覚え違いタイトルが紹介されており、書籍に収められたのはそのごく一部(えりすぐり、とも言えるけど)だが、それぞれの覚え違えられたタイトルから正しいタイトルを導き出す過程が簡潔に付され(ウェブサイトでは質問と回答のみ)、巻末に、図書館のレファレンスという仕事についても丁寧に解説されている。

本の情報というのはいろんな形でもたらされる。誰かがテレビやラジオでちらっと話題にしたのを耳にしたり、本屋で見かけて気になったけれどそのときメモしないで買って来たらうろ覚えな記憶だけが残っていたり。曖昧な記憶の中に、その人なりに捕らえたツボがあり、そのツボから図書館員が道筋を探し出す。

この本に出ていた中でわたしが好きだったのは「昔からあるハムスターみたいな本」、この答えは『ハムレット』なんだけれど、「昔からある」ってところが大切なポイント。そこをちゃんと拾えるところがいいな。

この本には収録されなかったけど、わたしが好きだったのは「カンサンジというテレビに出てる評論家 生姜(しょうが)みたいな名前の人」→姜尚中。

ウサギのできそこないが2匹でてくる絵本→これは『ぐりとぐら』らしい。彼らは「のねずみ」なんですけどね...。わたしは『リサとガスパール』?、と思ったのだが、リサガスは「ウサギのようにも犬のようにも見える実在しない動物です」なんだそうだ。そうか、てっきりウサギだと思っていたよ、思いがけず勉強になった。

「独身男性が若い女の子を妻にしようとして色々失敗した話」から、『痴人の愛』を導き出したのも凄いな。

部分的に記憶しているタイトル、ちょっと長いタイトルで単語の順を間違えて覚えているタイトル、かなと漢字の混じり具合とか、Google検索なら拾ってくれそうな誤差を、図書館の検索システムは拾ってくれないので、漢字とかなの配分がはっきりしない場合は全部カナで検索するとか、図書館の検索システム固有のTipsなども案内されている。

レファレンスは、こうした本のタイトルの正解探しだけではなく、何か調べ物をするときに、この図書館でどういう参考資料があるか、この図書館以外からどんな資料を取り寄せられるかといったガイダンスもある。「ひとつの質問にかける時間は、最大で2時間程度を基準にしています。私たちの仕事は研究者とは違って調べて論文にまとめることではなく、あくまで情報を探すお手伝いであると認識しています。司書が納得のいく答えをどこまでも追求するのではなく、答えにつながる資料をお探しする。それがレファレンスサービスの軸だと考えています」(p.173)

レファレンスサービスを活用した結果、どんな素晴らしい研究が出来るかという一つの事例として、『桃太郎は盗人なのか?―「桃太郎」から考える鬼の正体』という、当時小学生だった倉持よつばさんの調べ物を本にまとめたものを紹介したい。本人の探求心もさることながら、地元の図書館の司書さんも素晴らしく、それをサポートして全国に調べ物に連れて行ってくれた保護者も凄いが、図書館をきっかけにこれだけのことが出来る、ということで。



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