毎日読書メモ(77)『魔女の息子』(伏見憲明)
伏見憲明『魔女の息子』(河出書房新社、現在は版元品切っぽい)、すごくいい小説だったと思うのだが、文庫にもなっていないのかな。残念である(Kindleがあるからいいのかな?)。
今日は伏見憲明『魔女の息子』(河出書房新社)を読む。文藝賞受賞作。この人はもともとゲイ・ムーブメントについての論評などを書く、カミングアウトしたゲイなのだが、自分とオーバーラップさせたような、40歳くらいで母と2人暮らししながらハッテン場で遭った男達と性行為を行っているフリーライターの男性を主人公に、亡くなった父親に対する葛藤とか、母や兄、母の恋人との関係、仕事を回してくれる女性編集者、彼女にインタビューされる運動家の女性、それぞれの生き方とかスタイルとかがはっきり書き分けられていて、読んでいて気持ちいい。文藝賞は、割とお子様っぽいイロモノが受賞する文学賞、という印象があったのだが、これはこれでイロモノだけど、今まで読んできた文藝賞受賞作とは一線を画す、骨太な作品。しかし、これだけきっちり自分のライフスタイルとオーバーラップさせて書いちゃうと、次回作を書くのは難しそうだねぇ。もう消息がとだえて等しい、わたしの近辺では唯一だったカミングアウトしたゲイの男の子が、昔から伏見憲明を勧めていたが、彼は今どこでどんな風に暮らしているんだろう?
(2006年9月の日記より)
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