米澤穂信「古典部」シリーズ(毎日読書メモ(329))
最初に読んだ米澤穂信は『クドリャフカの順番』だった。順番違うやろ! 既に構築されている物語世界を十全には理解出来ないまま、高校の文化祭の熱気と謎解きに溺れた。
それから『氷菓』(角川文庫)に戻り、順番に読む。当時は『遠まわりする雛』までしか出ていなかったので4冊。ちょっとあけて『ふたりの距離の概算』、ずっとあけて『いまさら翼といわれても』まで6冊。2015年に飛騨高山に行ったので、神山高校のモデルとなった、作者の出身校を見に行ってみた。その時に『氷菓』と『クドリャフカの順番』を再読したので、この2作の感想は2つある。残念ながら『いまさら翼といわれても』の感想は書いていなかった…。もしまだ続きが刊行されるなら、そのときにまとめて読み返したい!
『氷菓』(角川文庫):先に読んでしまった『クドリャフカの順番』から、古典部シリーズ第1作に戻ってきました! 人生の省エネ男折木奉太郎と、好奇心女千反田えるを中心とした物語。過去に泣いてしまったことを忘れない粘着質なえるが求めた謎ときが、古典部の扉を開く! 学園ものの日常の謎シリーズ。好きなテイストです。(2010年8月の読書メモ)
アニメの『氷菓』は見てないけど、丁寧に描かれた、高山の街のはずれの、米澤穂信自身の出身校である「神山高校」を眺め、奉太郎と里志、えると摩耶花が歩いた町並みを、歩きながら、小説を再度噛みしめる。神山祭は○○だからカンヤ祭だし、「氷菓」は○○だからこのタイトルになった。机上の空論だけで、過去の謎がひもとかれる。(2015年10月の読書メモ)
『愚者のエンドロール』(角川文庫):古典部は、何故ミステリー映画の結末を探さなくてはいけなかったのか。結末(というか犯人?)よりも、古典部に探させた、その理由がミステリー? たまたま暑い真夏に読んだこともあり、文化祭の準備をする高校の夏休みのけだるい空気みたいのが自分のなかで培養されて、けだるく読めた。こんな高校生活ならちょっと戻りたい。ちなみに読書メーターで他の人の感想読んでから、すべての謎が解けた自分が情けないっす。(2010年8月の読書メモ)
『クドリャフカの順番』(角川文庫):初米澤穂信。図書館でぱっと手に取って、単発ものかな、と思って借りてきて、特に違和感なく読み進めたが、どうも、前の事件の話への言及がある、と思ったら「古典部」シリーズの第三弾ではないですか! でも前作知らなくても大変面白く読めたのは筆者の力ですかね。神山高校の雰囲気、文化祭の雰囲気、とてもいい。この年になって学園小説を読むとキビシイこともあるのだが、この作品は問題なし。ミステリとしても、くどい部分もあるけれど面白かった。(2010年7月の読書メモ)
高山旅行に行くための予習として借りてきて、結局旅行から帰ってから読むが、神山高校のモデルをイメージしながら、自分自身の高校の文化祭をも思い出しつつ懐かしく読む。色々な部活から、既に失われたものたち。壁新聞部、放送部、活き活きと走る登場人物たち。さりげなく討議される芸術論、人生の省エネ男奉太郎のわらしべプロトコル。再読でも、最後までわくわく読む。(2015年11月の読書メモ)
『遠まわりする雛』(角川文庫):短編集。古典部のこれまでの3つの物語を縫うように、4人の春夏秋冬が描かれる。しかしっ、これまで描かれてこなかったことが、ひとつひとつの短編で少しずつ進展しているではないですか! きゃー、萌え萌え! ホータローったら、もうっ! もうっ!(2010年9月の読書メモ)
『ふたりの距離の概算』(角川文庫):20キロ走る学校行事の中で奉太郎が、考え、語りかけ、最後に謎解きをする。集中力がありすぎて、情報をインプット出来るときと出来ないときの落差が大きい奉太郎が、何もかも、持って回った考え方ばかりする登場人物たちと裏の読み合い。高度で疲れる人間関係? 高校生にしては大人びすぎている? 本人はあくまでも省エネのつもりだが、全然そうでもないような。場はマラソン大会だが、全然ランニング小説になっていない、という点も面白かった。わかっていて当然のことを隠すとはどういうことか。(2011年1月の読書メモ)
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