『人質の朗読会』(小川洋子)(毎日読書メモ(268))
小川洋子『人質の朗読会』(中央公論新社、現在は中公文庫)については、かつて、小説の内容でなく、表紙に使われている土屋仁応の作品についてちょっと書いたことがあった(ここ)。
2011年12月に読んだときの短い感想が出てきたのでそれも載せておく。
外国でゲリラに拉致され、監禁された状況の中、自分の人生を振り返り、想い出の中から一番印象的だった物語を紡ぎ、それをみんなに朗読する人たちの物語。どの物語もよく練られていて、ありふれた情景のようなのに、しみじみとしたものを読者に与えてくれる。極限状況の中で作られた美しい物を描くのが、小川洋子はとても上手。
|土屋仁応〈つちやよしまさ〉の彫刻の、見ていてちょっとひりひりする感じが、小川洋子の小説にマッチしている。
手に取った時の心のざわめきが、静かに物語へ導入してくれ、読みながらまた心が震える。