微熱
微熱5日目。
コンディションの悪さに体が慣れてきた。
引越しから2週間。何度目かの一人暮らし。
私の体は環境の変化に弱い。嫌になる。
今回の引越しでお世話になった不動産の営業の人とランチに行くことになった。
土日休みの私に合わせて、土曜日である今日の昼の仕事のスケジュールを空けてくれた。
お肉が食べたいという私のために、おしゃれな個室の焼肉屋さんを予約してくれていた。
おいしいおいしい、ともりもり食べる私の姿を見て満面の笑みを浮かべる彼。美味しそうに食べるね、といつからかタメ口になっていた彼。
好きなものを最後に取っておく私のお皿に残ったタン。タン好きなんでしょ、と彼が言った。正解。
一緒にいた時間の中で、彼が何度か私に触れた。ごはんを食べている私の頬、おかしなことを言った時の私の肩、帰り際助手席でシートベルトを外す私の頭。
私はどんな顔をしたらいいのか、どんな言葉で、どんな行動で返したらいいのか分からなくて、全てを笑って受け流した。
車を降りて振り返らずにアパートに入った。
部屋に帰って熱を計ったら37.4度だった。まだ下がらない微熱にため息が出た。
次はラーメンを食べようと約束した。次に会う時には体調が戻っているのかな。体調が良ければ、私も彼に触れたいという気持ちが湧いてくるのだろうか。