【白斑diary②】光線療法2回目はコタツの中の焼き魚
この夏から、毎週一回「光線療法」を受けに皮膚科に通っている。
私が通っているクリニックでは「光線療法」と呼んでいるけど、要は紫外線を照射する治療方法なので「紫外線療法」とも言われている。
私は『尋常性白斑』という病気にかかっていて、皮膚の深部にある「メラノサイト」(メラニン色素を作り出す細胞)が、ぽつぽつと消失してしまい、それがどんどん広がっていき、今はカラダの一部分が色抜けして白くなっている。
そこで、この白抜けした部分に特殊な紫外線を当てて、メラノサイト細胞を再生しよう…というのが、この光線療法(紫外線療法)である。
普段は、処方されたビタミンD入りの軟膏を、朝と晩、せっせと患部に塗り、日中は太陽の光を浴び過ぎないよう気を付け、週に一回、光線療法を受けにクリニックへ行く。
とまぁ、こんな新たなルーティンが、私の日常に組み込まれてしまった訳だ。
もうホントに忙しい~。
◇
さて、光線療法の日。
クリニックの受付で、診察券を出しながら「光線、お願いします」と一言伝える。すると、他の診察の患者さんとは別に、処置室にダイレクトに呼ばれる…というシステム。
受付を済ませて数分で、早速「Emikoさん~!」と呼ばれた。
他の患者さんが、一斉に「えっ?この人、待合室に来たばかりなのに、もう呼ばれるの?」という驚きの目で私を見つめる。
「いやー、ごめんなさいね。実は私、光線なんですよ」
と、心の中でつぶやきなら、ちょっとすみませんねぇ…というポーズを取りつつ、皆さんの前を通って、そそくさと処置室の方へ向かった。
ドアを開けてスルリと中に入ると、カルテを手にした看護師さんが、立って待っていた。
「どうぞ、こちらにお入りください」
と、光線療法の機材やベッドがギューギューに置かれた小狭いスペースへ、私を誘導する。
ベッドにちょこんと腰を下ろすと、奥から先生がやってきた。
「どう?前回初めて光線をやってみて、その後、肌は赤くならなかった?」と聞かれ、私は「はい、大丈夫でした。今はこんな感じです」と答えながら患部を見せた。
先生は、白斑の部分をあちこちチェックして「うん、大丈夫そうだね」と言い、そばにいた看護師さんに「それじゃあ、前を3分、背中を3分、脇は…片側1分〇〇秒…」と細かい指示を伝えていく。私にはとても聞き取れないくらいの早口&小声なのに、看護師さんはハイハイと頷いている。おぉ、これぞまさに阿吽の呼吸だ!
一通り指示を伝えると、先生はスッと診察室へ戻っていった。
看護師さんは聞いたばかりの指示を取りこぼさないよう、忙しそうにカリカリとカルテに書き込むと、
「それでは始めましょうか」
と私に言った。それに合わせて、私も服を脱いで準備を始める。
◇
ここのクリニックの光線療法の機材は、電気コタツのヒーター部分がひとまわり巨大化して厚みも増したような感じのものだった。広範囲に光線が当たるようになっている。
もちろん横へ光線が漏れないよう、ヒーター部分の周囲にはぐるりと黒い幕がかけられていて、見た目も確かに「コタツ」みたいである。
患部以外は、黒い幕のお陰で光は当たらないようになっている。でも一応、用心のため、治療中は目をしっかり閉じておくよう固く注意された。
私はベッドに上がり、あおむけになった。
◇
さて、いよいよ治療がスタート。
まずはカラダの前部分(お腹側)に3分。
スイッチが入ると、光線が照射されているところがほんわかと温かくなった。痛くも痒くもなく、気持ちのいい温かさだ。
次は、後ろ部分(背中側)に3分。
うつ伏せになり、光を当ててもらう。
この時、ふと、魚の干物がグリルでこんがり焼かれているシーンが目に浮かんだ。
なんだか今の私、干物みたいだわ。
いい色目でふっくら焼きあがったアジの干物のように、私の肌の色もまた戻ってくれるといいなぁ…。
褐色に焼けた美味しそうなアジを思い出しながら、色抜けした白斑の箇所が、他の健康な肌色と同じ色に復活することを、心の中で静かに祈る。
◇
最後は両脇。片側ずつ1分と少々。
さっき当てたばかりの箇所に、再び光を当てないよう、すでに照射済のところには黒い布がかぶせられる。
細かいところまで気を付けてくださる看護師さんに感謝しながら、片側ずつ当ててもらう。
こうして、この日の治療は無事に終了。ここまでが光線療法の1クルーだ。
服を着て、処置室を出た。
この後、会計を済ませる。
こんな感しで、毎週通わなくてはいけない。ガンバロウと思った。
◇◇
そして今日。
今週の治療のため、またクリニックに行く。
ところが、今日はCORONA拡大のため、緊急性のある患者さん以外、治療はお休みとのことだった。
玄関前で次々と来院する患者さんに状況説明していた看護師さんに聞いたところ、現在、CORONAの影響でスタッフが不足してしまい、てんてこ舞いなんだとか。ひぇー。
「本当にすみません。今は『今後どうなるのか?』も全くわからない状態で…。とりあえずお盆休みが終わる頃に、一度『やっているかどうか?』を電話で問い合わせてもらえますか?」と平謝りの看護師さん。
実は、現在、私が住んでいる市では、CORONAがものすごい勢いで増え続けていて、ちょっと心配な状態なのだ。しかも、市中感染がジワジワ広がっている最中なのに、お盆の帰省者や観光客もどんどん増えていて、ちょっとカオスと化している。
発熱外来とは関係ない科でも、こうしてCORONAの影響を受けるんだもの。今回の波はかなり広く深く蔓延していると言えよう。
こんな時だもん、了解、了解。
「わかりました。来週、電話してみますね」と答えた。
そして、看護師さんに「大変ですね。ご苦労様です」と労いの気持ちを伝えて、駐車場へと戻った。
やる気満々できたから、なんだか肩透かしにあったような気分だけど、まっ、こんな日もあるさ。
次週は受けられるといいなぁ…と思いつつ、家路についたのだった。
③へつづく