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■ 其の307 ■ ひどい発言の心理

📙元法政大学総長の田中優子さんが、野党候補の応援演説で高市早苗さんをこきおろした件で批判が出ています。
‥‥‥あ、まずいと思った。日本の歴史に残る最初の女性の首相がこの人だった 
           ら、ちょっと恥ずかしいでしょ。
‥‥‥安倍さんが女装して現れた。言っていることは安倍さんそのものだ。女性
           がどういう歴史を歩んできて、どんな目に遭って今まで生きてきて、政治
           がそれに対して何をしないといけないのか、一度も考えたことないのだと
           思う。
‥‥‥だから、中は男でしょ。安倍さんでしょ

安倍元総理は襲撃事件の被害にあった故人でもあるし、ちょっと酷い言いようです。どうして田中さんのような理知的であるはずの人が(支援者の集まりとはいえ)公衆の面前でここまで言ってしまうのでしょう。

📙思えば岸田総理の3年間で、社会の空気や大衆の記憶はかなり洗い流されたと思います。ですが、その前の安倍・菅時代の9年間、自民党政権の圧力は相当なものでした。それに抑圧・封殺された側の怒りは今も消えてはいません。

森友・加計問題が連日取り上げられた国会で、首根っこを押さえられた官僚の白々しい答弁は「忖度」や「保身」と言われました。国民はその姿に幻滅し、学生たちは「あんな国家公務員にはなりたくない」という気持ちになりました。
国会前を埋め尽くすデモも起きました。
また菅総理は日本学術会議の新会員任命で、政府の考えにそぐわない6人の研究者を排除しました。年々研究費は削られ、学問の自由が制限される流れに、大学界のとりわけリベラルな人達の怒りは沸点に達しました。

大衆の記憶は薄れても、アカデミズムやジャーナリズムのリベラルな人達の心から、安倍憎し・菅憎しの感情は消えるものではありません。「理性」で表面的な取り繕いはできても、腹の底にある怒りや恨みまで抑えられるわけではありません。

📙保守とリベラル(右と左)において、保守は言いたいことを言って押し切るスタンス、リベラルは理性的に振舞いながら理論を展開するスタンスです。
力と技‥‥真逆のイメージです。

とはいえ根っこは同じ人間。正しいのは「自分」です。
保守はリベラルのことを「頭でっかち」と非難し、リベラルは保守のことを「頭が悪い」と揶揄やゆします。
また保守は、一見議論に応じているように見えても、面倒臭くて「頭でっかち」なリベラルと同じ土俵で勝負する気はありません。
一方リベラルは、理屈の通じない「頭が悪い」相手を見下しており、油断すると理性のストッパーが外れて「本音」が出てしまいます。

人間は社会的な立場やプライドが高くなるほど、考えの違う相手とは折り合えないものです。

📙ところで、二十歳の成人にも、四十歳の不惑にも、六十歳の還暦にも、等しく5才、10才の時期はありました。
当時、「お兄ちゃんが叩いた~」と言って泣いたり、「母さんに告げ口すんな、ばか!」などと文句を言っていたふつう●●●の子供たちは、年を重ね成人になっても、聖人になる訳ではありません。

理性で大脳を制御しているつもりでも、その奥には、負けず嫌いの「正しい自分」が生き続けています。
相手をやっつければ快感だし、負ければふてくされる。でも悔しいから一矢報いてやりたい。
そんな本音に関しては、保守もリベラルも同じなんだと思います。



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