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絵本好きにはたまらない!店主厳選の良書が揃う店 福島県「石川屋」

絵本のセレクトショップを発見!

コロナ禍で大型書店から足が遠のいていた、2021年1月。本を買いたい欲が限界まで膨れ上がった私は、まだ見ぬ1冊に出会えるセレクト型書店を探していました。それも、絵本専門店を。そうして見つけたのが、福島県 田村市にある「石川屋」でした。

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(店内の様子と店主 石井修一さん)

さっそく訪れてみると、店内は壁一面、天井まで絵本、絵本、絵本!そうそう、こういうところに行きたかった!

店内に並べられた本の表紙を1冊ずつ見ていくと、大型書店の並びと全く違う印象を受けます。定番どころもありますが、古典と呼ばれるものや、洋書、あまり知られていない小さな出版社の本など、実に個性的な品揃えです。
「これは、お店の方に相当なこだわりがあるぞ!」と思い、店主 石井修一さんに絵本の選び方や絵本に寄せる思いなどを伺いました。

店主 石井修一さん(48歳)
江戸時代末期創業「石川屋」の8代目店主。
世の中の活字離れをどうにか食い止めようと、誰もが親しみやすい絵本に注目。小さな子どもはもちろん、大人のための絵本も豊富に取り揃えた店舗づくりを心がけている。お客さんと会話しながらおすすめの絵本を選書していくスタイル。思い出の絵本は『ジョニーのかたやきパン

店主 石井さんが絵本に寄せる思い

いとう「なぜ絵本に特化したお店にしようと思ったのですか」

石井さん「絵本屋にしたのは、活字離れした大人のためです。子どもの頃からずっと本を読み続けている人にとっては、本を読むことは苦ではないと思います。でも、いったん活字離れをしてしまうと、本を読むことへのハードルが高くなります。そういう人が、もう一度本に触れるための入り口になればいいなと思って大人向けの絵本を取り扱っています。絵本なら簡単に言葉を得られますから。」

確かに、子育てがうまくいかないとき、今後の人生を思うとき、私自身誰かの言葉を借りたいなと思うことがたびたびあります。でも、自分の時間がなかなかとれないと何万字もある大人向けの本を読む気になれない。そもそも活字を追えなくて内容が頭に入ってこない。そんな時期がありました。そこで「大人のための絵本」の出番なんですね。

石井さん「絵本は問題そのものを解決することはできないけど、そのときの気持ちに寄り添って支えることはできると思っているんです」

そんな風に大人も絵本をうまく活用することを石井さんは提案されています。

石井さん「子どもたちに関しては、書いてあることの意味を正しく理解できる人になってほしいと思っています。読むことは生きる上での基礎的な力ですから。活字に慣れていないと読もうとしなかったり、正しく読めなかったりします。だから、活字を読む・本を読む習慣の入り口として絵本を贈りたいです。

「あと…これはちょっと話が大きくなっちゃいますけど」と控えめに笑ってこう続けます。

良い絵本を読めば、想像力が鍛えられます。物事の多様性を学ぶこともできる。どっちが正解か、じゃなくて世の中にはいろんな考えがあるっていうことを知ってほしくて。絵本で読んだそういう経験が積み重なって、思いやりや平和を願う気持ちを育てる。そう考えて絵本屋をしています」

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(店主 石井さんが描かれたイラスト)

「良書の選び方」

いとう「石川屋さんに並ぶ本は、他の大型書店とは違うな、という印象を受けました」

石井さん「ここに置く本は、私がなにかひっかかりを感じたものです。表紙が絵画のように美しいだとか、内容的にぜひ読んでほしいだとか。ベストセラーだからと言って安易に置くことはしません。自分なりに読まれている理由を分析して、納得したものだけを置くようにしています」

店内の絵本は、どれも表紙が見えるように置かれています。およそ2000冊の表紙はまさに大迫力!表紙は絵本の顔だと言われますが、みんながこっちを見ている!目が合った!という気持ちになります。(いとう個人の感じ方です)

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(よく選ばれている本や今おすすめしたい本はテーブルに)

いとう「子育てをしていると、子どもにどんな絵本を与えたら効果的なのか迷うことがあります。良い絵本、良書の選び方ってありますか?」

石井さん「良書…私がうちに並べている本ですね!(笑)専門的なことを言えば、絵の技法がどうとか、内容の構成が素晴らしいとか、視点はいろいろあります。でも、子どもにとって一番の良書は『お母さんが選んだ本』なんじゃないでしょうか。それだけで子どもは安心して絵本を楽しめます」

まさかの結論「良書とはお母さんの選んだ本」。そこに専門家の視点が加わると、お母さんが選んだ本に付加価値がつくような気がしました。絵本に対して豊富な知識と情熱のある店主が厳選した結果が並んでいる、そんなお店でビビッとくる1冊を探す。石川屋さんはそんな体験ができる貴重なお店です。

これだけは読んで!『りんごがたべたいねずみくん』

インタビューをする者の特権として、我が家の4歳児に必ず読ませた方がいい絵本はあるのか伺ってみました。ありました、幼児の必読書。石井さん曰く、絵本として完璧な1冊で、物語に移行する3歳を目安に読んでほしい本だそうです。

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『りんごがたべたいねずみくん』
作:なかえよしを
絵:上野紀子
出版社:ポプラ社
※全国学校図書館協議会推薦図書

木になった赤いリンゴ。でも、ねずみくんには木が高すぎてとれません。トリくん、とんできて1つとり、サルくん、のぼって1つとり・・・。(ポプラ社公式HPより引用) 

なぜこの絵本が必読書なのか。それは、繰り返し表現・想像力・思いやり、この3つの要素が盛り込まれているからだそう。これほど完璧な絵本はそうそうない、と石井さんは断言します。ラスト2ページ、絵だけで語るあたたかな結末をぜひお子さんと一緒に体験してください。

『もこ もこもこ』の使い方、教えます

ここで石井さんから「絵本の使い方、ご存知ですか?」との投げかけが。使い方?どういうこと?と悩んでいると、一冊の本を見せてくれました。

『もこ もこもこ』、皆さんのお家にもありますか?この本はおすすめの使い方があるそうです。ここから先は、お手元に『もこ もこもこ』をご用意して読み進めていただけるとより分かりやすいです。

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『もこ もこもこ』
作:谷川俊太郎
絵:元永定正
出版社:文研出版
※全国学校図書館協議会推薦図書

「しーん、もこもこ、にょきにょき」とふくれあがったものは、みるまに大きくなってパチンとはじけた。詩人と異色の画家がおりなす不思議でおかしな世界の絵本。(文研出版公式HPから引用)

この本は0歳から楽しめます。最小限の言葉と抽象的な絵で想像力を育む絵本です。

読み進めると、「ぱく」というページが出てきます。これは、「生きる上で一番大切なことは食べることだから載っている」と石井さんは分析します。そして、次のページで「しつけ(マナー)」を伝えているそうです。何のことか分かりますか?口を閉じて食べましょう、というメッセージです。

もう少しめくっていくと、言葉がないページがあります。みなさんはそのページをどうしていましたか?私は勝手に「シューンシューンシューン」と音をつけていました。飛んでいくイメージです。
石井さん曰く「この言葉がないページは何を表しているのか、それを想像力で補うことが大切」なのだそうです。

このように、絵本の描写の1つ1つの意味を考えながら読むと、また違った価値に気付けます。これをきっかけに、他の定番絵本も名作と呼ばれるゆえんを自分なりに考えてみようと思います。

「石川屋」の上手な利用方法

こんな風に店主 石井さんの厳選した絵本だけが置かれている石川屋さん。ぜひ行ってみたいけど遠くて利用できない…という方もいらっしゃるのでは?また、実際に行ってみたけれど、どれを選んでいいのかわからないという場合もあるかもしれません。ここでは実際に店舗に足を運べる人も、遠方の人も知っておいてほしい、石川屋さんの上手な利用方法をご紹介します。

【店舗に行ける場合】
1.お店の扉を開けて、絵本に圧倒される。
2.石井さんに今日の目的を話す。
(自分用なのか、お子さん用なのか、プレゼントなのか、どんなテーマの本を探しているのか)
3.紹介してもらった本を小脇に、もう一度店内をゆっくり見渡す。
4.納得したらお会計に進む。

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(しかけ絵本を開く息子と見守る夫)

【オンラインでの利用を希望する場合】
1.Facebookのメッセンジャー機能から石井さんに「オンラインで選書してほしい」と伝える。( https://www.facebook.com/ishikawayasan/
2.メッセンジャーでビデオ通話しながら選書してもらう。
3.ビビッと来た本を伝えて、本を郵送してもらう。
(オンライン選書でも、せめて絵本の表紙は見せたいとの思いからビデオ通話が基本スタイルですが、顔出しに抵抗のある方はそれでも対応してくださるとのこと)

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(高いところの本は石井さんが取ってくださいます)

求める本に出会うためのこつは、石井さんとなるべくたくさん会話することです。目的や好みを具体的に伝えることがポイント。選書代は無料です!(※購入目的以外の選書依頼の場合は別途費用がかかります)

いとう家が実際に買った本はこれ

2回お店に伺って、計10冊購入しました。参考までにお見せします。

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左上:『しあわせなふくろう』オランダ民話 文:ホイテーマ 絵:チェレスチーノ ・ピヤッチ 訳:おおつか ゆうぞう 出版社:福音館書店
右上:『動物の描き方』著者:ジャック・ハム 出版社:嶋田出版
左下:『ペタッとくっつく!マグネットえほん こうじげんばの のりもの』文:マリー・フォルダク 絵:オリヴィエ・ラティク 訳:関根光宏 出版社:パイ インターナショナル
真ん中下:『MOTION SILHOUETTE モーションシルエット かげからうまれる物語』著者:silhouette books かじわら めぐみ にいじま たつひこ 出版社:グラフィック社
右下:『そのままのキミがすき』作者:きむらゆういち 絵:高橋和枝 出版社:あすなろ書房

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左上:『つきよのくじら』作者:戸田和代 絵:沢田としき 出版社:すずき出版
右上:『りんごがたべたいねずみくん』作者:なかえよしを 絵:上野紀子 出版社:ポプラ社
左下:あかちゃんがよろこぶしかけえほん『お?かお!』作者:ひらぎみつえ 出版社:ほるぷ出版
真ん中下:『Curious George』作者:H.A.Rey 出版社:Houghton Mifflin Company
右下:『ソロモンの白いキツネ』著者:ジャッキー・モリス 訳:千葉茂樹 出版社:あすなろ書房

私が一番嬉しかった買い物は、「おさるのジョージ」の原作本(洋書)です!
黄色い帽子のおじさんとジョージの出会いが描かれています。文章はもちもん英語表記ですが、そもそも「おさるのジョージ」は幼児向け絵本。英語が得意でない私でも、さほど難なく読めました。日本語も英語も読めない4歳児は絵でお話の内容をおおむね理解できていました。一人でもページをめくってはケラケラ笑っています。

もっとマニアックなことを言うと、表紙も背表紙も中のページも触った感じが日本の絵本と違う!それもまたドキドキで心に刺激をくれました。生涯大切にします。

今回、石川屋さんを訪れてみて、ときめきや癒しは買えるんだ!と実感しました。世の中には大人のための絵本がたくさんあるということも分かりました。忙しい人にこそ、絵本はおすすめです。
あなたも、「石川屋」でまだ見ぬ特別な1冊に出会えますように。そして、あなたに寄り添って背中を押してくれる言葉に出会えますように。

ー店舗情報ー
石川屋(店主 石井修一)
場所:福島県田村市常葉町常葉字中町36番地
営業時間:9:00~18:30
定休日:日曜日(その他不定休あり)
営業日などは、FacebookもしくはInstagramで確認を。
公式HP:https://ishikawaya.shop/
電話番号:0247-77-2001

※この情報は、2021年2月24日現在のものです。

(文責・写真ともに いとう さやか/フリーライター 思い出の絵本は『かばのイヤイヤくん』)

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いとう(絵本案内人)
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