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「PDCA」はもう古い?時代は「CAPD」~さて、どうやって説明する?

私は製造業で工程管理の中間管理職ですが、生産現場の改善では、PDCAは使われなくなってきました。

時代はCAPDです

品質管理など業務管理における継続的な改善方法です。

PDCA
は、まず計画を立て、それを実行してから結果を評価し、次のサイクルに改善を反映する伝統的な改善サイクル

CAPDは、まず最初に現状を評価し、問題があれば即座に改善し、その後に計画を立てて実行するアプローチ手法

目標の数値や成果を達成するまで、「PDCA」「CAPD」を継続して改善を行っていくことを「サイクルを回す」と表現されます。

<PDCAとCAPDの違いを以下の表にまとめました>

ChatGTP:PDCAとCAPD比較表

部下をTQCサークルリーダーに抜擢し、PDCAサイクルを用いて課題解決に取り組ませたところ、期待通りの成果が出ないケースが半数程度見られました。

現場の状況(人、モノ、設備、コスト)を考慮しない提案や、成果が測りにくい提案等、成果に至るまでの時間が長い等・・・計画する事前の段階で様々な課題が出てきます。

提案を見直し、計画を何度も変更して、最終的に始めても、満足のいく結果にはならないことがよくありました。

これは個人の能力の高低の問題ではなく、PDCAの手法にそもそも問題があったからです。うちの会社ではPDCAを使わなくなりました。


<現場改善はCAPDが理想的>

現場改善は【迅速性と柔軟性】が大事です。

現場改善の本質とは、やってみて、初めて見えてきます。

すぐに取り組めるCAPDが推奨される理由がここにあります。

1. 迅速な対応が可能

CAPDは、現状の問題や改善ポイントを「チェック」から始めるため、現場で発生している課題に対して迅速に対応できます。

⇒特に現場では、「目の前に見えている」課題から、改善策を講じることが重要です

2. 既存データやフィードバックの活用

現場でのフィードバックやデータを即座に「チェック」して改善(Act)を行うので、リアルタイムでの情報に基づいた対応がしやすいです。

⇒これにより、現場の問題に即した具体的な解決策を早急に見出すことができます

3. 計画に過度に依存しない

PDCAでは計画(Plan)に多くの時間をかける傾向がありますが、現場では状況が変わりやすいため、計画に過度に依存することがリスクになることがあります。

⇒CAPDはまず問題を解決し、その後で計画を見直すため、変化に対応する柔軟性があります

4. 即効性の高い改善

現場では、トラブルや課題が突然発生することが多いため、まず問題をチェックし、その場で改善を行うプロセスが有効です。

⇒計画段階に時間をかけるよりも、問題が明らかになった段階で迅速に改善を進めることができるため、即効性のある解決が求められる環境に適しています

5. 現場のモチベーション向上

CAPDでは、現場のスタッフが問題発見や改善に直接関わる機会が多くなります。すぐに改善が実行され、その効果が見えるため、モチベーションや責任感が高まりやすい。

CAPDの概念は、雪だるまを作るのと同じ

以上、CAPDは短期間での改善サイクルを繰り返すため、現場での小さな改善を積み重ねて、大きな改善につなげることができるのです。


CAPDをわかりやすく説明する

私は、中途採用者、新人のOJT(現場教育)主任もやっています。

座学で講習をする際、特に中途採用者はPDCAサイクルの信仰が強く、CAPDサイクルとの概念の違いや、使い方を説明するのに難儀しました。

まずは、現場の3S(整理・整頓・清掃)の改善から始めて、SQCD(安全・品質・コスト・納期)に繋げてほしいと説明しても、コスト度外視、短期間で実現不可能なアカデミックな提案をしてきます。

<わかりやすく説明するにはどうすればよいのか?>

そこで、会社の近く電車の高架下の改善事例を挙げて説明することにしました。

【改善事例】市役所とルールを守らない市民との攻防戦

駅の高架下の通路

会社の駅の線路高架下の地下通路がある。150m程度の通路で、会社の多くの人が自転車通勤で、よく利用している。

地下通路では、自転車は降りて押して歩くルールになっているが、守っている人は少なく、自転車と人との接触事故が多発していた。

ここで、CAPDサイクルのお手本になる改善が見られた

【CAPDサイクル:1周目】

注意監禁のアナウンスを実施

<Chek(現状把握)>
地下通路で自転車は降りて押して歩くルールが守られていない。

<Act-plan-Do>
通路にスピーカーを設置し、市職員のおっさんの声で注意喚起のアナウンスを実施した。

「交通ルールを守って下さい」
「市の条例で自転車は降りて下さい」
※命令口調

【CAPDサイクル:2周目】

アナウンスを女性に変更

<Chek(現状把握)>
ルール順守のアナウンスを常に流したが効果はなかった。威圧的だったことも影響。商人の町・関西人には、お上からの命令口調には従わない文化がある。

<Act-plan-Do>
アナウンスをお姉さんに変更 

「交通ルールを守りましょう」
「事故にあったら危険です」

※ソフトな口調になる

【CAPDサイクル:3周目】

通路に障害物を設置する


<Chek(現状把握)>

アナウンスがおっさんから、お姉さんに替わり、言葉遣いがお上品でお願い口調になったが、自転車を降りて歩く人に変化はみられなかった。

<Act-plan-Do>
アナウンス(ソフト面)は効果が無いと判断。とうとう市役所は物理的(ハード面)な強硬手段を決断する。

⇒障害物を設置 

通路の出入り口付近に自転車避けのポールをあちこちに設置して、強制的に自転車から降ろすようにした。

【CAPDサイクル:4周目】

青春路線:地域の女子高生アナウンス

<Chek(現状把握)>
市民は通路に設けられたポールの間を颯爽と自転車ですり抜けていくため、ますます危険になってしまった。

警備員が毎朝出入り口に立つようになったが、一時的なもので市民の意識は変わらない。問題が大きくなり、後戻りできなくなった市役所は、更なる改善を行った。

ここから、市役所の本気が伺える

これ以上障害物を増やすと、利用者の利便性を大きく損なう。ハード対策に限界がきてしまい、ソフト路線をもう一度試みた。

<Act-plan-Do>
⇒アナウンスを近所の女子高生に変更 

「自転車押して 歩こうよ」
「交通ルール 守るあなたが  カッコイイ💗」
「○○高校 放送部」

⇒青春路線へ大きく舵を切る

〇ターゲットを選択
通学路なので、危険運転をするターゲットを高校生に絞った

〇地域の監視性の法則を利用
近所の高校の女子放送部によるアナウンスをさせた

地域の人達にボランティア活動してもらい、主体的な意志を持たせることで、ルール違反を躊躇させ、断念させるのが狙いだった。

【CAPDサイクル:5周目(完結)】

<Chek(現状把握)>
近所の女子高生によるアナウンスの効果は薄く、限定的であった。

特に、ターゲットにしていた反抗期の男子生徒には逆効果で「守ってるのがカッコイイだってよ」と自転車を立ち乗りして、尻を振り回しながら爆走するようになった。

また、サラリーマン、主婦、お年寄りにはガン無視されていた。メディアの世界で万能であるはずの女子高生は、世間では全く通用しない。

<もはやこれまで、万策尽きた>

あきらめかけたその時、あるアイディアで劇的な変化が起こる。

<Act-plan-Do>
⇒アナウンスを近所の幼稚園児に変更
 

効果絶大:幼稚園児のアナウンス

「おにいさん、おねぇさん 事故に遭わないでね」
「自転車は降りてね。僕たち私達からのお願いです」
「〇〇幼稚園 〇〇組」

<<凄まじい効果であった>>

年齢層を問わずみんなが自転車を降りて歩いている。自転車で幼児を乗せて二人乗りをしていた母親、お年寄りが一斉に自転車を降りる様になり、それを見た学生やサラリーマンも自転車を降りる様になった。


CAPDサイクル成功の要因

今回のCAPDサイクル事例が成功した要因を考えてみましょう。

  1. Chek(現状把握)で成果の確認を怠らず、サイクルを回し続けた

  2. ハードとソフト面の対策を両立させていた

  3. 柔軟な対応で費用対効果が高い

成功した1番の要因は、Chek(現状把握)を重要視して、成果がでるまでサイクルを短期間で回し続けたことです。

「改善サイクル」を回す上で、よく失敗する事例は「障害物を設置した」で止まることが多いのです。

ハード面の対策で、費用を掛けて何かをやったという行動に満足し、Check(評価)をするのを避けてしまいます。

また、ソフト面のアプローチを怠らなかったことに感心しました。

自転車で通路を走ることが、小さい子供から見てどれだけ危険なのか、誤って事故を起こしてしまえばどうなるのか?それが、近所の子供や家族であったとしたらどうなるのか?

ルールは何のためあるのか、守るべきものは何かを利用者に問いかけたのです。結局、ハード面をいくら整備しようが、人の意識が変わらなければ有効性を維持できません。

今回の事例でもう一つ評価できるのは、「幼稚園児のアナウンス」の費用対効果が高いということです。

仮に今回の「CAPDサイクル」を途中で止めていた場合、警備の常時手配、新たな障害物を設置する等の余計な費用が永久的に掛かったと考えられます。

柔軟な改善を試行錯誤して生まれた成果ですね。

設定した目標に向けて「CAPDサイクル」を回し続けた結果、ハード面で事故予防対策、ソフト面では市民の自発的な行動を促し、利便性を損なわず「線路高架下で自転車は降りて押すルール」を推進することができました。

このアナウンスは今も続けられて、地域の安全に貢献しています。


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