「中学生のやる気」を引き出す親のサポート術
今年は夏休みも思うように充実した日々を過ごせず、ストレスがたまったまま、受験シーズンに突入するという家庭も多いのではないでしょうか。
だらだらと過ごしているようにしか見えない子どもの姿を見て声を荒らげる前に、1度立ち止まって子どもの悩みやストレスを理解した上で、よりよい関係を築くための解決策を考えたいものです。
1.多くの親が抱える悩み 中学生の子どもとの関わり方
思春期の子どもとのバトル
なにかにつけ反抗的な態度をとる、携帯ばかりいじって、他のことになにも関心を持っていないようにも見える思春期。
そんな時に携帯電話を力ずくで取り上げてお互いに怒鳴り声をあげたり、ともするとつかみ合いの喧嘩になった、という話もよく聞きます。
「小学校時代にうまくいっていた親子関係が、このところうまくいかない」、「親子との会話がほとんどなくなってしまった」と悩む家庭も多いようです。
中学生親子の会話時間ってどれくらい?
個別指導塾の「明光義塾」が一般の保護者など750人に実施したアンケートによると、54.3%の保護者が、子どもとの平均会話時間を1日「1時間未満」としています。
子どもとの会話時間の大部分は事務連絡や小言だったりして「会話」をしているという感覚になっておらず、親は「子どもとの会話がない」と悩んでいるのかもしれませんね。
「子どもは学校から帰るとすぐに部屋にこもってしまうので、なかなか話をする機会がない」という意見も。
2.現代の中学生が抱えるや悩みやストレス
内申点を取るために大変になる 部活と勉強
中学入学後、小学校時代は勉強もある程度簡単で、宿題や提出物にもそれほど時間をかけずにスムーズに学校生活を送れていたお子さんでも、「中1ギャップ」に悩まされるようになります。
「中1ギャップ」とは、小学校生活からの環境の変化に悩む中学生が不登校などに発展する現象のことを指します。
確かに子どもの宿題や、教科書を覗いてみると進度の速さや課題の複雑さに驚くことも。また、試験の結果に順位がついたり、内申点が高校進学の材料になったりと、小学校時代には考えられないほどのシビアな現実に、体調が悪くなったり部屋に閉じこもりがちになったり、不登校になる中学生も増えているのだとか。
また、入学時点ではほぼ全員が部活動に入部します。慣れない朝練や、先輩との上下関係、同級生との競争に疲れても、やめてしまうと内申点に影響するという現実に、苦しみながら部活動を続ける子どもがいるのも事実。
この年頃の子どもの心のうちや、本当の悩みは目に見えにくく、親が全てを理解することは容易ではありません。
子どものストレスに拍車をかける「コロナ禍」
さらに、中学生親子のストレスに拍車をかけているのが、このコロナ禍。「国立成育医療研究センター」が実施した「コロナ×子どもアンケート」では、新型コロナが子どもたちに及ぼす影響が明らかになりました。
2020年の11月~12月に実施された4回目の調査では、コロナ以前の生活と今を比べ、中学生が友達と話す時間はコロナにより大幅に減り、勉強の大変さはコロナにより増え、楽しいと思うことは大幅に減ったという内容になっており、中学生の24%に「中等度以上のうつ症状」が見られたという結果がでています。
学校行事や部活動の大会などのほとんどが中止となり、やる気や目標を失ってしまった中高生たちや、過酷な中学受験を経て中学に入学したものの、入学式すらまともに出席できず、度重なるオンライン授業や部活動の自粛にストレスを感じる中高一貫生、入学して以来のマスク生活でお弁当もおしゃべりしながら対面で食べたことがなく、「友人や先生の顔をまともに見たことがない……」と嘆く子どもたち。
親が当たり前に経験してきた青春を失った子どもたちのストレスを考えると、うつ状態に陥る子どもが増えてしまうことも不思議ではありません。
大人は、子どもたちのストレスを「思春期だから……」とひとくくりにせず、まずは子どもそれぞれの苦しみや悩みを把握する努力が必要です。
3.思春期の子どもの自信とやる気と引き出すサポート術
あまり満足した子どもとの会話が持てない中で、漠然とした悩みを抱え、やる気を失っているかのように思える中学生の子どもとよりよい関係を築くために、効果的と思われるサポート術をご提案します。
①子どもの話に耳を傾けよう
中学生の子どもを持つ親は、ようやく子どもが手を離れ仕事を再開したり、共働きで時間的な余裕の無い家庭も多いはず。
まずは、子どもが話をしたら、耳を傾けること。
たとえその時は忙しくて話半分でしか聞くことができなくても、「うんうん」「なるほど」などと相槌を打ちながら、少しだけ首を縦に振るなど、「しっかりと話をきいていますよ」という姿勢を見せてみてはいかがでしょうか。
または、オウム返しをすることで子どもは「自分の気持ちを分かってもらった」という気持ちになれます。
中学生とはいえ、まだまだ小学生から数年たっただけの子ども。
多少のことは多めに見て、絶対的な味方となって話をきくことで子どもは、「親に自分を受け入れてもらえた」と感じ、少しは心が軽くなるはずです。
②子どもを承認するスキルを身に付ける
子どものやる気が見えず、生活態度に不満があると「褒める・認めることが大切なのはわかっていても、褒めるところが見つからない……」という話を聞くことがあります。
具体的に褒めることが見つからないからと言って、無理やり褒めてみてもこのくらいの年頃もの子どもたちは「褒め殺し」や「嫌味」としてとらえてしまう可能性も。
そこで親が身に付けるべきスキルとして「存在承認」があります。
「おつかれさま」「おかえり」などとねぎらいの言葉をかけたり、ちょっと髪型を変えたところをすかさず「今日のヘアスタイルいいじゃない」「髪型かえたのね」と言葉にして伝えてみたり、「○○くん、おはよう」など、挨拶の前に名前をつけるだけでもいいそうです。
子どもが1番嫌なことは「存在を無視されること」なので、こういった声かけにより「存在を認めてもらえた」という自信につながります。
一見簡単なことなのですが、なかなかできていないこのスキル、ぜひ身に付けたいものです。
③中学生に親がしてあげられるのは「自立に向かうためのサポート」
気分の昇降が激しく、まるでジェットコースターのような中学生。
大人っぽいことを言ってみたり、甘えてきたり、信じられないくらい幼い失敗をしたり、親にとってもどう扱っていいかわからないときがあります。
つい心配で先回りをしたり、口だけでなく余計な手だしをしたくなりますが、ここはぐっとこらえて、「子どもが自立に向かうためのサポート」に徹することが大切です。具体的には、以下のようなサポートが考えられます。
《学習や生活の環境を整えてあげること》
「中学生になったのだから部屋の片づけくらいはするだろう…という予想を裏切られた!」というケースは多いようです。
毎日勉強と部活でへとへとになって帰ってくると、残った気力体力を片付けに回すのは難しいのでしょう。
親は、面倒な上、「自立の為に自分でやらせなきゃ!」と放っておいてしまいがちなのですが、勉強する環境が整っていない状態では、机に向かうことをしなくなってしまいます。
部屋を勝手に片づけてしまうことは大きな親子バトルにつながりますが、散乱したゲームや教科書、脱ぎ散らかした衣服を整えるなど、さりげなく机に向かいやすい環境を作ってあげることが必要です。
我が家の場合、ここで部屋が汚いことや、丸めたテストやプリントにについてぐちぐち小言をいうと、「勝手に片づけないでよ!!」とバトルに発展するのですが、小言をぐっとこらえ「ちょっと片づけといたよ」とだけ伝えると、「自分でやるのに……」といいながらも、綺麗になった部屋に満足して机に向かう時間も多くなります。
《たまには予定を確認すること》
「大切な提出物を期日までに出すのを忘れた!」「三者面談の日程を親に伝えていなかった」「模試の集合時間を間違えて受けられなかった」等、ネット上には中学生の失敗を嘆く親の声であふれています。
中学生も親も「もう予定の管理は自分でするべき」と考え、親がスケジュールや提出物をチェックすることは少なくなりますが、まだまだカンペキに自己管理ができない年ごろ。先を見越して時間を逆算し予定を立てるのは難しいのです。
「過保護になってしまわないか」「過干渉になるんじゃないか」と悩んでしまうところですが、「大切な提出物はないの?そろそろ三者面談の時期じゃない?」「明日の模試は何時から?じゃ、○時に起きないと間に合わないから起こすね」となどと具体的な声かけをしてあげることもまだ必要なのかもしれません。
《相談にのってあげること》
友達とのLINEに夢中な子どもを見て、「中学生になると友達が全てで親の出る幕はないのかも」と感じることも多いのですが、学研教育総合研究所が2020年8月に調査した「中学生白書Web版」では「悩み事の相談相手」の第1位に「母親」、第3位に「父親」がランクインしていることに驚きました。
親の時代以上に複雑な悩みを抱えている子どもたちの状況をなるべく把握した上で、自分の経験談などを交えて相談に乗ってあげられれば、子どもは自分の存在を認められたと感じるようになって心が安定します。
親が「聞き上手」になれば、子どもは親にたくさん話をし、親は、目やサポートの届かない場所での困りごとへのSOSを、早めにキャッチしてあげられるようになります。
子どもは悩みを解放できる場所があるだけで、勉強にも集中できるようになるのではないでしょうか。
《塾や通信教育など必要な方法を一緒に検討すること》
中学校に上がると、勉強の難易度はUPし、内申点の確保や受験対策で周りの通塾率が倍増します。小学校時代の塾探しは親が主体でした。
しかし中学生になると子どもは自分の情報網をたくさん持っているため「志望校に強い○○塾に行きたい」「友達と一緒の塾にいきたい」など意見が出てきます。
家族でしっかりと話し合ったうえで「塾に行く」or「塾に行かない」を検討しましょう。
また、経済状況から「塾費用だけでなく交通費などもかかる通塾が難しい」と考えるご家庭もあるでしょう。
そんな時は費用が抑えられる通信教育を検討したり、比較的費用が安く、塾費用以外の経費がかからない「オンライン塾」がお勧めです。
ぜひ「塾図鑑」で、お子さんと一緒にご家庭に合った塾探しをしてみてください!
まとめ 「共感すること」がサポートの第一歩
「小学校時代はあんなに素直でかわいかったのに……」と嘆く中学生の親の声をよく聞きます。
体も心も大きな変化を迎える思春期。
親はその変化を簡単に受け入れることができず悩みますが、本人たちの悩みや戸惑いは親の比ではなく、その悩みに「共感すること」が、親が中学生の子どもにできるサポートの第一歩です。
「成績が下がっているのにやる気のない子どもを変えたい」と悩む前に、親自身が子どもへの接し方を変えるちょっとした努力をすることで、子どもの表情が明るく・柔らかくなり、言動が良い方向に変化し、勉強する時間も増えるかもしれません。
いままでの子育ての【答えや結果】がでてくるこの時期に、もう1度子どもとの接し方や関係を見直してみてはいかがでしょうか。
【参考資料・文献】
・「コロナ×子どもアンケート第4回報告書」国立成育医療研究センター2020年11月~12月実施
・「中学生白書Web版」、学研教育総合研究所 2020年8月調査
・「会話の時間は足りている? みんなの家庭内コミュニケーション事情」明光義塾ブログ
・「「言うことを聞かなくなってきた子」の育て方」PHP出版 東ちひろ著