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和歌のように感情を込めた写真を撮りたい

和歌との出会い

私が初めて和歌を学んだのは、高校の古文の授業だったと思う。
高校に入って最初の授業が古文で、たしか動詞の活用を1番に習った気がする。

その授業の最後、習ったばかりのカ行変格活用を暗唱しろとクラスで最初に当てられたのが私だった。

いきなり当てられたうえに、顔と名前を覚えてもいないクラスメイトに注目されて焦った私は当然うまく答えることができなかった。
「次回の授業でまた当てるから覚えておくように」と言われて授業は終わった。

当時の私は、勉強がそれなりにできることだけが取り柄だったから、答えられなかったことがすごく悔しくて予習復習を完璧にこなした。

10年以上経った今ですら当時のことは鮮明に覚えているから、よっぽど強烈な体験だったんだと思う。

結局、次の授業では別の人が当てられたのだが、それがきっかけで予習復習の習慣がつき古文は得意科目になった。

和歌を含む古典は、動詞の活用形と単語の意味さえ覚えれば、ある程度現代語に訳せる。私は文章を単語ごとに区切って意味を当てはめる作業がパズルみたいで好きだった。
その作業が得意だったから古文は好きだったが、意味を深く味わうことはしていなかった。せいぜい「掛詞いくつも重ねるのすご〜」と和歌の技法に感心したくらいだと思う。

社会人になってからの和歌と私

古文は受験科目の一つとしてしか捉えていなかったため、大学受験を終えると和歌に触れることはなくなった。

私が再び和歌に触れたのは、大学を卒業して社会人になって何年か経ったころ、友達が薦めてくれて読んだ『小説 伊勢物語 業平』だ。

本作では、古典の名作「伊勢物語」を単に現代語訳するのではなく小説として紡いでいて、物語の中心には和歌がある。

この本に掲載されている和歌の中には高校生のころに勉強したものも含まれているはずだが、あらためて読むと当時の私は感じることのなかった感情を抱いた。

五・七・五・七・七のたった31文字で表現された文章の中に、【移ろいゆく風景に自分の人生を重ねた儚さ】や【叶わない恋に身を燃やす人の思い】などを感じた。
高校を卒業してから20代後半を迎えるまでの人生経験がそうさせたんだと思う。

千年以上も前に詠まれた歌なのに、まるで私自身の気持ちを詠んでいるような歌もあり、忘れていた過去の記憶や感情が鮮明に浮かびあがってきた。

そして、最近もう1冊和歌についての本を読んだ。『つながる短歌100』という本だ。

この本では、『万葉集』から現代までの歌を百首選び、二首ずつ(ときには三首)をくらべてつなげ、歌人、時代背景、そして歌の歴史へと、思いをたぐり、めぐらせます。

つながる短歌100  「はじめに」より

この本を読んで印象に残ったことは、異なる時代に異なるモチーフを詠った歌でも根幹にあるテーマが似通っている場合もあることだ。
逆に、同じ時代に同じモチーフを詠っていても、視点が変わることで違うテーマになっているものもあって面白い。

和歌のような写真

私は趣味で写真を撮っているが、この2冊の本を読んで、私は和歌のような写真を撮りたいんだなと気がついた

和歌は風景について詠んでいることが多いが、伝えたいことはその風景の美しさだけではなく、風景を見て感じた思いや風景に喩えた自分の心情だ。

その心情自体は作者だけの個人的なものだが、風景というフィルターを通すことで読者も自分の経験や感情に置き換えることができる。だから和歌は、時代を越えてたくさんの人に愛されているんだと思う。

私も風景写真を撮ることが多いが、ただ単に綺麗な、いわゆる「映える写真」を撮りたいとは思っていない。
和歌のように、風景を見て私が感じた思いが伝わるような、写真を見てくれた人がその人自身の経験や感情を思い出すような、そんな写真を撮りたいと思っている。

※あくまで私が撮りたい写真ではないだけであって、「映える写真」を否定しているわけではありません。そういう写真を見るのは大好きです。

SNSに写真を投稿していると、どうしてもたくさんのいいねが欲しくなって、ついつい何の意図もなく流行りの色味に寄せてしまったり、いいねの多い写真の構図を真似てしまったりすることもある。

でも、そうして撮った写真はやっぱり自分の中でしっくりこないことが多い。
シャッターを切ったのは私なのに、私の写真ではないような気がしてしまう。
そこには、私の感情が反映されていないからだ。

いいねの数に踊らされず、自分の表現ができるように、これからも写真を撮り続けたい。


最後に、今まで撮ってきた中から何枚か写真を載せたいと思います。
写真を見て何か感じていただけたら嬉しいです。


ここまでご覧いただきありがとうございます。
普段はTwitterとInstagramで写真を投稿しています。

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