読書記録:うしろの席のぎゃるに好かれてしまった。2 もう俺はダメかもしれない。 (ファンタジア文庫) 著 陸奥 こはる
【愛が重いからこそ、その愛に応える器が試される】
様々な冬の試練を共に乗り越える物語。
愛が重いと人によっては、負担に感じるかもしれない。
しかし、裏を返せば、それだけ強く想って貰えると言う事。
それだけで恋人冥利に尽きて、幸せな事は無い。
そんな恋愛の真理を、志乃と付き合う事で知った三代。
大好きな彼女と過ごす新鮮な冬。
期末試験に聖夜、実家挨拶に温泉旅行。
波乱万丈な催しも共に乗り越える事で、絆は深く強くなる。
互いの過去を知り、身も心も深く結ばれてようやくスタートラインに立てた彼らは。
ゆっくりと愛を育むのではなく、爆速で恋愛の経験値を積み重ねていく。
ブレーキが壊れた急行列車のように。
行ける所までどんどん行ってしまう。
その理由は、志乃は恋について初めからブレーキがないのに対して、三代は女性と付き合った免疫がない故にブレーキのかけ方を知らないからである。
しかし、互いに相手のそんな在り方を許してしまえる。
相手と長く付き合うのに重要なのは、どれだけ相手の事を許せるのか、思いやれるかにかかっている。
恋人同士となって真っ先に訪れた、期末テスト。
赤点多数、補習常連の志乃にとっては地獄の関門。
そんな彼女が、赤点を回避出来るように、全ての時間を勉強にあて。
心を鬼にして、三代はスパルタ教師となる。
生気を失うどころか、その想いに報いる為に。
血眼になり、かつてないやる気を引き出した志乃は、期待に応えて、見事な結果を叩きだして見せる。
ようやく何の後顧の憂いを残さない冬休みを迎えて。
クリスマスも近くなる中、委員長である四楓院に懸想しているクラスメイト、まひろの相談に乗って四楓院の趣味を知る為に尾行してみたり。
志乃のバイト先のカフェに迎えに行ったら、彼女の同僚である芽衣のポカに巻き込まれ、片づけを手伝う事になって、三代を貶そうとした芽衣に、志乃が言葉少なに怒りを現して、沈黙させたり。
そんなてんやわんやの日々を過ごす中で、二人で過ごす日常が当たり前になっていき。
隣に相手がいるのが当然になっていく。
そんな日々の中、志乃の家族と面通しを済ませ、家族の許可を得た上で。
期末テストのご褒美として二人きりで旅行に繰り出出す。
温泉旅館で二人きり、非日常的な誰にも邪魔されない甘い時間を堪能して、二人の距離も自然と近づいていく。
躊躇など蹴飛ばして、あるがままにお互いを求め合い。
最後の距離はいとも簡単に縮まる。
当たり前のように、そうあるのが予め決まっていたかのように。
遂に、二人は一線を越えていく。
まるで蜜蜂の瓶の底にズブズブと沈み込むような、暖かくて、優しい蜜月を経験する。
期末試験を二人で、必死に努力して乗り越えたからこその、ご褒美としてのかけがえのない甘い時間。
今まで重い愛のアプローチは、全て志乃が積極的にしてきた。
しかし、三代も彼なりに一生懸命に考えて、最後の一線は自分から踏み込むという漢気を見せる。
自ら踏み出してみれば、心の距離は意外と呆気なくて。
勇気を振り絞った行動を真摯に受け止めてくれる相手がいる事が、こんなにも心強くて心地よい。
急速に仲が進展した二人に、周囲は良くも悪くも驚かされ、影響を受ける中で。
三代の幼少期の過去が仄めかされていく。
しかし、そんな事は関係ないとばかりに、志乃の心に火がついて、燃え尽きるまで想いを昇華させていく。
このまま、順風満帆に幸福なハッピーエンドを迎えられるのか?
はたまた、波乱万丈な未来が二人を待ち受けているのだろうか?
それを決める次なる舞台は修学旅行。