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読書記録:陽キャになった俺の青春至上主義 (GA文庫) 著 持崎湯葉 

【陰と陽、どちらも正解、それらが交わるのが青春】


【あらすじ】

【陽キャ】と【陰キャ】。

世界には大きく分けてこの二種類の人間がいる。

限られた青春を謳歌するために、選ぶべき道はたったひとつなのだ。

つまり――モテたければ陽であれ。


元陰キャの俺、上田橋汰は努力と根性で高校デビューし、陽キャに囲まれた学校生活を順調に送っていた。

あとはギャルの彼女でも出来れば完璧――なのに、フラグが立つのは陰キャ女子ばかりだった!?

ギャルになりたくて髪染めてきたって……いや、ピンク髪はむしろ陰だから!

あらすじ要約
 

新たな青春バイブルの物語。


世界には、陰と陽、二つの人種がいる。
どちらが正解という訳ではない。
ただ、勝手な偏見としては、陽は仲間でつるみ、陰は独りを好むといった傾向がある。
異性からモテるならば、陽の方が良い。
そんな信念で、努力と根性で陽キャに成り上がる橋汰。
順調に青春を送る彼が無視出来ない不思議少女、遊々との遭遇から不器用な陰キャ達が彼の元に集う。
皆が努力の方向を間違えて、底抜けに明るい日々を過ごすのは楽しくて。

元々は陰キャ、しかし意を決して高校デビューを果たし、陽キャ側に生まれ変わった橋汰。
オタク以前に優しいギャル、夏絵良や脳筋で阿呆な友人、徒然と共に。
取るに足らない、しかし、充実した日常を過ごす中で。
彼はある日、クラスで陰キャのオーラを放つ遊々の衝撃的な光景を目撃する。

それは、彼女の髪に大人の珍味である鮭とばが付着している、眼を疑うような光景。
見過ごす事が出来ず、陽キャらしく助け舟を出してあげると、それが何故か琴線に触れたのだろうか、彼女はストーカーと化してしまう。
やんわりと好みではないと伝えた翌日、彼女は自分が思い描くギャル像になるべく、劇的なイメチェンを果たす。
そして、橋汰のグループに何食わぬ顔で入り込んできたのである。

仕方がなく受け入れた事で、橋汰は更なる陰キャと関わりを深めていく。
遊々の友人としての縁で、触れる物を皆傷つける小動物系陰キャ、水乃と関わって結果的に友人となる。
更には、担任である小森先生に依頼され、クラスでおどおどしている男子である龍虎と接する事になる。
橋汰の何気ない一言で龍虎はイメチェンを果たし、メスガキ系男の娘という新たなるジャンルを開拓してしまう。

気づけば、知らぬ間に橋汰の友人グループが拡大していく中、ある時は皆でおでかけしたり。
またある時は、橋汰の家で遊ぶ予定が、何故か皆が続々と集合して、最後にはお泊り会に発展するアクシデントも起こる。

そんなアクシデントさえも楽しい時間に変えて。
陰も陽も関係ない、陽ばかりを集めても味わえない面白い時間。
だがその日々の中で、遊々に因縁を持つ女子が再び絡み始め、なかなか自分を変えられない内面に、彼女は自己嫌悪して、橋汰もフォローの仕方を間違えて傷つけてしまう。

橋汰は陽という生き方を貫くならば、そもそも遊々と関わらなければ良い話だ。
しかし、それは彼の望む所ではない。
彼の主義主張に背くし、せっかく友達になったのなら、遊々には笑っていて欲しい。

ならば、どうするべきなのか?
答えは単純明快。
ヒーローらしく、その枠組みをぶっ壊してしまえばいい。
しがらみも枠組みも実に馬鹿らしい。
たとえ、共感性羞恥で、周りもろともに悶え苦しんだとしても。
知らぬ間に、縛られていた枠組みの檻を破壊して。

恥も外聞もない彼のポリシーの先で、望んでいた姿に到達する。

陰キャでも陽キャでも、価値観や境遇が違うからこそ、新しい化学反応が起こる。
ステータスを区別する事自体がナンセンス。
陰キャ、陽キャの線引き自体が必要ない。
陰キャも陽キャも所詮、個性に過ぎない。
そんな風に、関わってくれる人を選別するのは傲慢であり、本当に大切なのは、その人自身の個性に着目して受け入れてあげる事。

優劣づけや分断は、今の時代ではダサくてカッコ悪い。
心にこびりついた先入観を洗い流せるのは、柔軟な若者の特権で。
陰と陽のボーダーラインを越えて、カテゴライズを気にする事なく、自分が本当にしたい事を、欲望に忠実にこなしていく。
世間に迎合するのはつまらない。
つまらない大人にならない為に、若さを武器にして、無茶を突き通す。

誰かの決めた自分でなくて良い。
自分がなりたい自分を目指せば良い。
そうやって、自分の殻を打ち破って、理想像に向かって突き進んでいく。
当然、価値観の違う人間だからこそ、衝突や葛藤も生まれる。
それでも、「自分はこういう人間なんだ」と思い切ってカミングアウトしてしまえば、意外と相手も心を開いてくれる。

ありのままの自分を認める事が出来れば、結果として、友人の生き方も肯定してあげられる。
同じ立場であったからこそ、その抱える気持ちにそっと寄り添う事が出来る。

そうやってカテゴライズを再構築して、自分の個性として昇華させていけば、世界が彩り豊かに見えてくる。
陰キャも陽キャも、最早関係なく、仲良くなる為の努力と行動を積み重ねた先で、縛られた枠組みを壊していく。

皆が自分らしく、思うがままに自由な好きな事を、好きなようにやる。
バラバラな行動であるようで、不思議な一体感があるからこそ、楽しさが途切れる事はない。
その人となりを理解して、否定する事なく、錯綜させた果てに見出した答え。

陰も陽も関係ない、結論なんて至極単純な物。
それは、「その人の個性を自分は好きになれるか?」という事。
「その個性の爆発を自分が受け止めきれるのか?」という事。

陰キャだの陽キャだの、そんなのは人の勝手。
他人に指図される謂れはない。
大切なのは自分らしく好きなように生きる事。

そうやって、遊々に因縁をつけて、無作為に傷付けた女子に、思いっきりプレゼンテーションしてみせた橋汰の潔い清々しさが眩しく映った。

自分達なりの青春の群像が、自由な世界を齎していく。

個性の爆発を共に迎える愉快な仲間達と、橋汰はどんな青春を書き描いていくのだろうか?












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