カラマーゾフの兄弟(原卓也 訳)
はじめて読んだのが数年前、その時がロシア人作家も最初で、人物名と愛称など戸惑いながら読みました。長すぎる(繰り返す)一人台詞や癲癇の発作の連発などに違和感を持ちながらも人物の圧倒的な生命力に驚き、いくつかのエピソードが記憶に残りました。
その後に、解説本を読んで知ったのですがカラマーゾフの兄弟には第2部の構想がかなりしっかりとあったそうです。確かに冒頭の作者の言葉通り、この本がアレクセイの一代記というには割と短い期間の内容です。亀山郁夫さんの解説本による第2部の内容が本当ならば(ここでは書きませんが)、確かにアレクセイ・カラマーゾフの一代記となったと思います。
今回再読して、前よりも少しは内容の理解度が上がったような気はしました。この本全体というよりは記憶に残ったいくつかを記しておきたいと思います。
スネリギョフ二等大尉とアレクセイ
ドミートリィに暴力を振るわれ、その場に居合わせた息子イリューシャのその後の行動。そして、アレクセイがお金を二等大尉に届けた際の場面です。スネリギョフ二等大尉は息子との誇りにかけて、アレクセイが渡したお金を一旦は受け取りますが『手品を見せましょう』と話すや、お札を握りつぶし、踏みつけます。しかし、決して破り捨てる事はしませんでした。現実として喉から手が出るほどお金を必要としながら、誇りがそのまま受け取る事を許さず、しかしながら破り捨てることも出来なかった二等大尉のセリフが心に残ります。
ゾシマ老人の死とアレクセイ
ゾシマ長老が亡くなり、聖人ならば腐臭はしないという他者の言葉がある中で、確実に腐臭を放つ長老の遺体があります。様々な葛藤の中でアレクセイはゾシマ長老からの心の声を聴き、地面に倒れ伏して大地を抱きしめ嗚咽します。ロシアを理解するに”大地”というのがキーワードになると思いますが、そういう事も読み取れる気がします。
大審問官
この章は有名ですね。この場面が、という事ではなく神の存在に対する肯定と否定がイワンの創作する話の中で語られていきます。キリスト者であるはずの大審問官は人民に対する強烈なペシミズムの中で悪魔と共にある事を選択しています。再び舞い降りたキリストからの愛になすすべもなく立ちすくみながらも、キリストに他の地へ去る事を命じます。
書いていくとこれはエンドレスになりそうで、この辺りにしていきます。他にも、スネリギョフ二等大尉の息子、イリューシャの葬儀の場面でのアレクセイと少年たちとの会話も心に残ります。
私は新潮文庫・原卓也さんの訳で2回とも読みましたが、亀山郁夫さんの訳も出ているので、もし3回目読むなら亀山訳にしようかな。でもやはり時間はかかるので、次回はいつになる事やらです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。