君はもう、帰らない
「もう行くね」
テーブルの上にそっと
君は部屋の鍵を置いた
客もまばらな、昼下がりのカフェ
誰かの低い話し声より小さな声で
君はさよならの言葉を探していた
いつからだろう
君は僕を見なくなった
僕だけを見ていた君
僕の言葉を信じた君
僕だけ支えられる君
僕をいつも必要な君
一緒に暮らした部屋は
いつも綺麗に整えられ
君は毎日、咲き誇った
花のように僕を迎えた
「男には帰る港が必要だ」
死んだ祖父の言葉
君が、僕をいつまでも
待っていてくれると今
この瞬間も信じているのに
「私はあなたの夢を叶えるための道具じゃないわ」
君は僕を
見つめる
しかし、その目はもう
僕を遙かに追い越して
注文したコーヒーの
湯気が消えていく時
コーヒーが嫌いな君が
頼んだアイスティーの
氷がすっかり溶ける頃
「あなたを嫌いになりたくないの、これ以上」
君は立ち上がる
そして出て行く
振り向くことも
うつむくことも
知らない強い背
生きて行くためのルールを
壊したのは僕か?君なのか
追いかけることも
泣きすがることも
出来ずに、ここに
僕はいるよいつか
君が帰ってくれる
その日を信じてる
冷め切ったコーヒーを
飲み干して僕は嗤った
分かってる
君はもう、帰らない
【自己お題】TM NETWORK「金曜日のライオン」の歌詞を使うこと
(目を閉じて息を止めて聴いてください…この頃のMVってやつは…)