【虎に翼】第61話(6/24)月曜日が待ちきれないからお父さん、お母さん、優三さんの亡くなり方を振り返る。
昨日の【虎に翼】から一夜明け、やっぱり月曜日まで待ちきれずにウズウズしています。なんでこんなに面白いのか。
前回の朝ドラ【ブギウギ】もかなり面白くて、最後まで楽しく見ていました。でも、こんなにも続きが気になって「翌週まで待ち切れない!」なんていう感覚は今回の朝ドラが初めてかもしれません。
主演の伊藤沙莉さんを始めキャスティングは全員完璧で、脚本の素晴らしさも相まって、どこをどう切り取っても秀逸で、ケチのつけようのない朝ドラ。
亡くなっていく人が増えるたびに悲しさが増すばかりですが、今回は「お母さん」、「お父さん」、「優三さん」の3人の「死」について少しばかり振り返りたいと思います。
人物の対比の巧妙さ
今週はお母さんが亡くなってしまって、あまりにあっさりとした死に方で
「人間、死ぬときなんて実際はこんなものなのかもしれない」
と、妙に現実的に思えて余計に悲しかった。
亡くなる間際に、寅子と花江ちゃんに
「恥ずかしいから古い日記は燃やしてほしい」
と言い遺すあたり、
『そうそう、それだけは読まずに捨てるなり燃やすなりしてほしいよね』と、共感しかなかった。
そうなんだよね、死んだあとに誰にも見られたくないものってあるよね。私も死ぬ前までに身の回りの整理をしておかないとなあ。見られたくない物、めちゃくちゃ沢山あるなあ。
最後、お母さんに
「この家のことは2人になら任せられる…先のことはよろしくね」
と言われて、
涙を堪えながらうなずき、
「はい、任せて……」
と言いかける花江ちゃんの言葉を遮って
「やだあーーーーーー!」
と大声で泣き叫ぶ寅子。
この辺は「お嫁さん」と「実の娘」の違いなのか、
それとも単にこの2人の「性格の違い」なのか。
とにかく一家の中心にいた「母親」という大きな存在が消えてしまうかもしれないというこのシーンでは、寅子が子どものように「やだ」を繰り返すから、おかげで必要以上に「お母さんの偉大さ」をまざまざと見せつけられた。
かなしい。とにかくかなしい。どうしようもできないのが分かっているから余計にかなしい。
それから、
お母さんが亡くなって、花江ちゃんと2人でお母さんの日記を1冊ずつ手に取って燃やしていくシーン。
「たくさんあるわ。1つずつね」
と、花江ちゃんが寅子に日記を渡して、花江ちゃんも寅子も耐えきれずに泣いて、もちろん私も一緒にボロボロに泣いた。これで本当にお母さんとお別れなんだと思ったら、悲しくて寂しくて。
この沢山ある日記の中に、お母さんの今までの全てが詰まっているんだと思うと、余計に。寅子がまだ子どもだった頃から、本当に色々なことがあったよなあと思い出してしまって。お母さん、毎日座って細かく日記書いてたよなあって。
あれは良かったなあ。どう抑えても涙が出てしまう感じ。アドリブだったのかなあ。
一方、お父さんが死んだときはどうだったか。
お父さんが死んだときも私は悲しくて悲しくて、めちゃくちゃ泣いた。
あんなに寅子のことを可愛がってくれたお父さんが、死んでしまったのだから当然だ。悲しかった。めちゃくちゃ悲しくて悲しくて、まるで私も猪爪家の一員のように泣いた。
お母さんが「もう悔いは何もない」と安らかに亡くなっていったのに対し、お父さんは寅子や家族に対して懺悔をしまくって死んでいった。
こんなことを言うのはどうかと思うけれど、初めて人が死ぬ場面で声を出して笑ってしまった。
とは言え、
優三さんが亡くなったのを隠していたのだって、もちろん寅子のためを思ってのことだった。
思えばお父さんの行動はいつもどうしようもなかったけれど、どれも寅子のことを思ってだった。
寅子のことが大切で、可愛くて可愛くて仕方がなかったし、いつだって寅子の1番の味方だった。
寅子はお父さんの自慢の娘で、宝物で、誇りだった。
それだけはどこをどうひっくり返しても事実だったんだよね。
死に際までお父さんらしい、どこか愉快で、くすっと笑ってしまうような死に方だった。なのに悲しさがどんどん溢れてくるから、お父さんの存在って大きかったんだなと改めて思い知った回だった。
お父さんはお父さんらしい、お母さんはお母さんらしい、それぞれの人柄をよく表した亡くなり方だったと思う。
花江ちゃんと寅子の対比、お父さんとお母さんの対比、どちらも素晴らしかった。このドラマの本編内では、しばしば人物の対比が使われていて、それは「花岡と優三さん」だったり「よねと轟」だったり、その時々によって何度も、さまざまな人物たちの対比が絶妙な効果を発揮している。
そして伊藤沙莉さんの演技がうまいのは知っていたけれど、花江ちゃん役の森田望智さんがあまりにも上手過ぎて。何度この人の演技で泣いてしまったことか。直道が戦死してしまったという知らせを受けた際の花江ちゃんが泣き崩れるシーンなんか、ほんとに。どうしたらいいのか分からないくらい悲しくて、私まで震えた。
セリフの巧妙さ
また、優三さんの亡くなり方は間接的だった。
優三さんが戦地へ向かう前、最後に寅子に言い残した言葉。
自分が今から戦地へ行かねばならず、いつ死ぬのかも分からない状況で、こんな言葉をかけられる優三さん。
どれほど寅ちゃんのことを大切に想っているのかがよく分かるし、優三さんの底知れぬ優しさを具現化したような、鳥肌もののセリフ。こんな人に出会えた寅子は幸せだったに違いないだろうな。寅子が羨ましくもあり、優三さんのような人間になりたいという気持ちさえも芽生えてくる。
この言葉を胸に、寅子はまた前を向くことができた。
きっといつまでも心の支えになることだろう。(私の心の支えにもなりそうだ。)
別れの日には、なんとも言い難い表情で、無理矢理作った笑顔を寅子に向けた優三さん。行きたくなかっただろうなあ戦争なんか。生まれたばかりの優未ちゃんや、大好きな寅子を置いていくなんて、胸が張り裂けるほど辛かっただろうなあ。
昔からお腹の弱かった優三さん。
死亡通知書によると、亡くなった理由は「戦死」ではなく「戦病死」だった。なんとなく優三さんらしいなという気持ちと、もう少し丈夫な身体だったら、もしかしたら復員できていたのかもしれないという悔しさも残る。
収容所の病室のベッドがたまたま隣になっただけの兵士に、
「このお守りにはとてつもないご利益があるから。絶対助かる」
と寅子からもらった何よりも大切なお守りを、躊躇なく握らせてあげることのできる男。
それが優三さんなんだよなあ。
「お父さん」も「お母さん」も「優三さん」も、素晴らしい人格者であり、寅子の心の拠り所だった3人が亡くなってしまった喪失感は大きい。
未だに優三ロスが続いている私としては、おばけでもなんでもいいからあと何回かは優三さんに登場してきてほしいと思っているのだけれど。
花岡の死についても書きたかったけど、ちょっと長くなってしまったので今日のところはこの辺で終わりにしようと思う。
こんなことを考えながら時計を見ると、とっくに日付が変わっていた。
でもまだ日曜日。【虎に翼】61話まではあと1日あるのか……。ながいな。