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#短編小説
Silver Days Devotion.
愛することも、愛されることも叶わないならば、せめて邪魔にならないようにしたい。
細く曲がりくねった半透明のチューブのなかを満ち満ちて流れてゆく、蛍光グリーンの溶液。その流れに浮かぶ大小のあぶくたち。ひとつひとつに閉じ込めた情緒と風景の記憶がゼロの乱気流に飲み込まれ消えてゆく。
僕は延髄に深々と刺さったチューブに繋がれて、蛍光グリーンのあぶくを循環させて夢を見る。
白く、埃っぽいコンクリ
#不思議系小説 阳炎
陽炎が踊る真昼の中華街。
路肩の植え込みに投げ捨てられた、ラベルに見たこともない文字の踊る空き缶からこぼれたビールに真夏の陽射しが煌めいて、むわっとしたやるせない香りを放つ。気の抜けたビール、缶底に残って腐れたビールの匂いは、そのまま幼少時代に味わった地獄の匂いそのものだった。
プルタブの外れた飲み口の溝に溜まった薄黄色の液体に小バエが溺れて浮かんでいるのだけが、朦朧とした視界の片隅で何故
#不思議系小説 雨傘はソーダの海を泳ぐ深海魚のように
渦巻く銀河の暗黒にどぎついピンクでロゴが描かれた500ml缶のプルタブを引く。
パシッ! と音がして蓋が開く。中の液体を飲み干す。過剰なカフェインを含んだ甘苦い炭酸飲料が舌を駆け喉を走り胃袋に落ちてゆく。後に残るのは空き缶だけ。どこにも誰にもわからない。
この体の中に満ち満ちた憎悪と後悔のソーダなど。その苦さも。甘さも。
ピンクの錠剤ニコニコなめて
市販の咳止めマイニチ飲んで
糖衣が私を邪
#不思議系小説 粘膜商店街
腐敗ガスを動力にして走る肉骨(にっこつ)バスが1メートル80センチほどの骨格標本に肉新庄(にくしんじょう)と乱雑に書いたブリキ板を打ち付けただけのバス停に到着する。肉骨バス特有の、上腕三頭筋の感触に近いクッションにぶよぶよの皮膚を張り付けたシートの座り心地は最悪で、足早にバスを降りた。
ほかに降りる客は居らず、肉骨バスは再びしゅうしゅうがしゅがしゅと目に沁みるような臭いのする腐敗ガスを撒き散