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【翻訳】幻想作家ロード・ダンセイニ、インドを詠う ~②~

Agra
アーグラ

薔薇色の壁は護られずとも、かつてのように強固で、
今や宙にただよう塵となりし諸王朝を護った。
インドの入日が、薄紫、緑、黄金の色を湛えるなか、
笛の音色がどこからともなく、かすかに聞こえる。

この瞬間に記さなければ、我が記憶から消えゆくものたち。
突如として曇天の夜に、淡い月光を浴びるタージ・マハルの
丸天井ドームが少しきらめけば、
思わせるのは、枯れゆく川のそばの郷里ふるさとから

刹那ばかり奪われた、深みに再び沈みそうな真珠。
やがてこの見えざるモスクは急に視界に入り、
一度ほほえみ、ねむりに戻る。
こうした光景ながめを記憶にとどめよ、この目が光を灯しているうちに。



以上が、アイルランドを代表する幻想作家ロード・ダンセイニ(1878-1957)が1929年に旅したインドで残した2つ目の詩の翻訳になります。

タージ・マハル以外にも名所を有するアーグラ地区について、ダンセイニは1944年の自伝While The Sirens Sleptにてこのように語っているので、ここで引用いたします。ダンセイニが激しい嫌悪を示した独裁者アドルフ・ヒトラーを引き合いに出しています。

アーグラ城塞とジャスミン塔は他の書籍でも語られていますが、本書では、ヒトラーが爆破したくなるような場所であると言うにとどめましょう。私は妻といっしょに、アクバルの建てた赤砂岩の都市であるファテープル・シークリーも目にしましたが、今やヒョウだけが棲む地です。

While The Sirens Slept (1944) 124ページ

ダンセイニは、アーグラに足を運んだ後、ラムプールヴァーラーナシー(ベナレス)をも訪れます。ヴァーラーナシーについては、つぶさに文章を残しているので、こちらの翻訳を紹介できればと思います。こちらの記事を読んで下さった皆様に、感謝申し上げます。


なお、もう1篇の詩の翻訳につきましては、次の過去記事リンクからご覧いただけます。よろしくお願いいたします。


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