
前とは違う自分
こんにちは。
青山美智子さんの『リカバリー・カバヒコ』という作品を、今年の夏に買ってから、しばらく読みかけで放置していたのですが、先日ようやく読み終わりました。
5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。
近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで“リカバリー・カバヒコ”。
アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。
誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。
連作短編集になっていて、5人の主人公たちが登場します。
読み終わって、やっぱり青山さんの書く作品って好きだなと思いました。
心がほっこりするんです。
それから、より良く生きるヒントにつながる言葉が散りばめられていて、気づきを得られます。
悩みを抱えている人にとてもおすすめです。
作中のあるセリフが印象に残りました。
それを要約すると、
人間の体は、病気や怪我のリカバリーのあと、全く同じようには戻らない。
病気や怪我をしたっていう、その経験と記憶が体にも心にも頭にもつく。
リカバリーしたあとは、前とは違う自分になっている。
このセリフを読んだときに、まさに今の自分に当てはまっているなと思いました。
私はうつ病を患いました。
早期の治療や、症状が軽度だったことから、約三ヵ月で寛解しました。
そのため、先日精神科で診察を受けたときに、「調子が悪くなる前の自分に戻った気がします」と言いました。
しかし、言ったあとで、前の自分に戻ったっていうのはなんだか違うなという風に思いました。
そこで上記のセリフを思い出しました。
私の体は、うつ病を患う前の自分とは違う。
新しい自分だ。
このことを嫌だなとは思いません。
むしろ自分にとってとても良いことです。
学校に行けなくなった自分。休学を選択した自分。
生きるのがつらくて泣いた自分。
将来が不安で苦しんだ自分。
眠ってばかりだった自分。
一見ネガティブに見えますが、この経験があったからこそ、今の自分がいます。
今では、復学を意識し始め、講義を受けている自分を脳内でシミュレーションしてみたり、バイトやボランティアをやってみようと調べてみたり、将来の夢が見つかったりなど、良いことがたくさんあります。
うつ病の療養期間は、人生の休息の時間だったとも言えます。
人は休まなければいけません。
無理をしたら壊れてしまいます。
私はうつ病を患うまでずっと無理をしていました。
休まず頑張って勉強やバイトや遊びを両立することが、充実した生活だと思っていました。
しかし、今ではそれは違うと思っています。
時には休息が必要です。
休むからこそ日々の生活がより輝くのです。きっと。
それを今回学ぶことができました。
こうやって、物事を深く考えることができるようになったのも、この経験のおかげです。
だからこそ、うつ病の経験を肯定することができました。
このことに気づかせてくれた『リカバリー・カバヒコ』や青山さんにも感謝です。
『リカバリー・カバヒコ』、とても素敵な作品なのでぜひ皆さんも読んでみてください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。