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医療現場でのメモの具体例

こんにちはからこんばんはまで、臨床医の森下(仮)です。

前回の記事「医療現場でのメモの活用」ですが、どこが医療なんだとご指摘を頂き確かに医療ぽいことは何も書いていないことに気づきました。

今回はフィクションでもう少しお話したいと思います。

1. 研修医A先生の場合

救急部での研修していたA先生を例にしてみます。

彼はとても真面目だったので言われたことはすべてメモしていました。

そんなある日、

看護師さん
「受け入れ要請です、A先生。70代男性、夜中にトイレに行こうとして階段から転落。意識ありません。長女が付き添いできます。電話番号は・・・」
A先生
「70代ね…男性ですね…階段から転落して意識がない、と。もう一回電話番号を…」
看護師さん
「受け入れOKですか?」
A先生
「あぁ、はい、、、どうぞ」
看護師さん
「先生、吐血がすごいです、SpO2 70%です!」
A先生
「頭部打撲だと思ったのに!」

受け入れみると咽頭部の損傷で呼吸困難、息ができなくて意識がありませんでした。

事前に情報収集ができていれば呼吸器内科の先生を事前に呼ぶことができたのですがこのときは後手となってしまいました。

すべての情報を漏らさないようにメモをとることに集中すると、受け身の情報収集になってしまい確認作業が疎かになってしまいます。

これ以降、A先生は↓のようになりました。

看護師さん
「受け入れ要請です、A先生。70代男性、夜中にトイレに行こうとして階段から転落。意識ありません。長女が付き添いできます。電話番号は・・・」
A先生
「お薬手帳持参するように救急隊へ連絡、それから外傷の情報がないから確認してください。電話番号は今伝えなくていいです。あとで紙でください」

なにが違うのでしょうか。

A先生に尋ねると

紙にメモすることと頭の中でメモすることを分けたんだそうです。

紙にメモすることは、
・電話番号
・ややこしい家族関係
・内服薬

頭の中にメモすることは
・70代
・男性
・階段から転落
・意識レベル低下

頭の中でメモすることは大変そうな印象ですが、70代男性が階段から転落する様子をイメージすればすぐに頭に入ります。

A先生に言われて気づいたことがあります。

私たち医師はカンファレンスというプレゼンテーションを毎日行って同じ科の先生で情報を共有しています

その場で話すときには10人程度の患者さんの情報をなにも見ずに話すことができます。

それは大まかに頭のなかで想像しているからということに気づきました。

紙にメモしていることは、患者さんに紐付けることができない情報です。
電話番号や面談日などがそれにあたります。

医療の現場では患者さんが中心にいます。
その患者さんに紐付けてイメージすることでメモとしています。

すこし記憶術と重なるような気もしますが、医療の現場でのメモというのは頭の中と紙にすることが多いのかもしれません。

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