マガジンのカバー画像

本の紹介・読書の記録

169
運営しているクリエイター

2024年5月の記事一覧

「核融合エネルギーのきほん」を学ぶ

核融合には期待している.いつ実現するかはわからないけれども.再生可能エネルギーとして,太陽光や風力は既に利用されているが,日本国内の状況を見ると,ソーラーパネルによる自然破壊が横行しており,人間の愚かさしか感じない. 本書「核融合エネルギーのきほん」を読んで,核融合発電の実現に向けた現在の状況をおおよそ把握することができた. 核融合の実現に向けて,いくつもの方式が検討されている.トカマク,ヘリカル,レーザーなど.最も研究開発が進展しているのがトカマク方式で,核融合エネルギ

「実力も運のうち 能力主義は正義か?」

有名大学に合格した学生が,合格したのは自分の才能と努力のおかげであり,自分の才能と努力は賞賛されるに値すると考える.金儲けに成功した人が,成功したのは自分の才能と努力のおかげであり,自分の才能と努力は賞賛されるに値すると考える. より一般的に,自分自身の成功は,幸運や恩寵によるものではなく,自分自身の努力にって獲得するものである.富や名声や権力を自分の力で手に入れた自分は,それらにふさわしい人間である. こういう能力主義(メリトクラシー,功績主義)的な考え方に反感を抱く人が

「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」その原因を探る

日本社会全体の出生率を動かすのは「大卒かつ大都市居住かつ大企業正社員か公務員」というキャリア女性ではない.非大卒であったり,地方在住であったり,中小企業勤務や非正規雇用であったりする女性が圧倒的多数であり,彼女らが置かれた状況や態度,意識などを中心に考えてこなかったため,日本の少子化対策は失敗してきた. このように家族社会学者を名乗る著者は指摘する. さらに,日本の少子化対策が失敗してきた原因として挙げられているのが,国民性が日本とはまったく異なる欧米各国の少子化対策を真

AI 2041:人類は人工知能をうまく扱えるか?

とても面白く刺激的な思考実験小説と技術解説だ.生成AI・基盤モデルが劇的な進化を遂げる今,自分の頭だけで考えられることなんて僅かだが,こういう本などを読んで刺激を受けたうえで,色々と考えてみることは大切だろう.果たして,20年後の人類社会はどうなっているのか.人類は人類の幸福のために人工知能をうまく使えるだろうか. 本書「AI 2041 人工知能が変える20年後の未来」は,人工知能に関連する技術を取り上げて,合計10個の小説として20年後(2041年)の未来社会を描いている