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大学・大学院・教育・研究のあれこれ

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#教育

「大学は何処へ 未来への設計」で過去を学び未来を考える

この20年ほど改革を迫られ続けて今や疲弊の極みに達している,そして実際に論文数はガタ落ちになっている(それでも「改革が足りないからだ!」とか言えてしまう人達に囲まれている),日本の大学の将来を考える上で,まずは過去を知る必要がある.その観点から,とても勉強になった.というか,これまで知らなさすぎた. 著者である吉見俊哉氏は,現状を以下のように指摘している. では,1930年代以前はどうだったのか. 明治時代以降,旧制高等学校が,高等教育機関として,帝国大学を中心とする旧

[メモ]MacにPythonとJupyterLabをインストールする

使用中のMacBook ProでPythonを使うために,PythonとJupyterLabをインストールした.これまでJupyter Notebookしか使ったことがなく,JupyterLabは初めてになる.環境は以下の通り. macBook Pro (2021) Apple M1 Max macOS Mnterey 12.3.1 作業日 2022/5/9 作業手順は以下の通り. Homebrewのインストール(必要なら) pyenvのインストール(必要なら) p

お世話になったら礼を言う,すぐに礼状を書く

2020年度は,システム科学専攻の専攻長(持ち回りなので偉くはない)を担当している.この専攻長に漏れなく付随してくるのが就職担当という職務だ.就職担当とは言っても,親切に手取り足取り指導するようなことはなく,基本的には「頑張れよ!」と言うだけで,後は学生に任せている.もちろん,企業の採用担当者と面会したり,学校推薦の手続きをしたり,学生の就活の状況を把握したり,学生が不合格とされたときには担当者にその理由を尋ねてフィードバックしたりはする.決して何もしないわけではない.ただ,

ハーバードの次はスタンフォードの講義「20歳のときに知っておきたかったこと」

非常に示唆に富む本だ.本書「20歳のときに知っておきたかったこと」を際立たせているのは,これがスタンフォード大学で起業家精神について教える集中講義の様子を伝えていることだろう.多くの自己啓発本のように,自分のためだけに読むこともできるが,教育に活かすこともできる.冒頭には,次のように書かれている. わたしは,スタンフォード大学の工学部に属するSTVP(スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム)の責任者を10年にわたって務めています.科学者や技術者に起業家精神と

私の講義での漫談も「ハーバードからの贈り物」のように意義があるといいな

私は担当する講義でよく漫談をする.担当科目には直接関係ないが,学生に伝えておきたいと思うことを話す.それは,私が学生のときに聞いてよかったことや聞きたかったことでもある. 「しょせん,人間は,自分が学べることしか学ばない」というメフィストフェレス(ファウストに登場する悪魔)の言葉がその通りだとしても,教師の役割は学生が学べる範囲を広げることだろう. 私が話すのは,「学生/技術者/研究者向けアドバイス一覧(随時更新)」にズラリと並べた記事のようなことだ.例えば,新入生対象の

英語論文を書くために「理科系のための英文作法」を参考にする

英語論文の書き方を伝えようとする本は数多いが,本書の特徴は,数理工学を専門とする著者が,安全な英語を書くための規則を論理的に解説している点にある.そのために,文章の読みやすさに影響を与える要因を,様々な「仮説」として提示しているところが面白い.「○○しなさい」に納得して従える人はそれでいいが,「△△なので○○すべきである」と言われないと納得できない私みたいな輩には本書の書き方はとても良い.まさに,理科系人間による理科系人間のための英語論文執筆指南書と言える. 杉原厚吉,「理

バックアップしとけよ.パソコンもプリンタも課題や論文の提出前に壊れるから.

唯一の仕事用マシン(デスクトップは持ってない)であるMacBook Proのdeleteキーが壊れて,突然,勝手に連打されて,書いた文章は全部消されるし,スライドは全部消されるしで,まったく仕事にならない.もうどうにかして欲しい. パワーポイントでスライドを作成していると,突然,スライドが消え始めて,60枚くらいあったのが瞬く間に消滅して,なぜか削除の取消もできなくなってしまっていて,それまでの作業が全部なくなる.前回保存した状態にまで戻らなければならない.そんな事態が頻発

プレゼンテーションの心構え

講演でも学会発表でも,プレゼンテーションの準備をしているときに,そしてプレゼンテーションの本番前に,私が強く意識していることがあります.それは,自分のプレゼンを聞いてくれる人達は貴重な時間を割いて聞いてくれるのだから,それに見合う以上の価値を届ける,聞いて良かったと思ってもらえるプレゼンをする,ということです.そういう想いがプレゼンの質を高めますし,自分のプレゼン技術を向上させます. もちろん,プレゼンの中身が重要であることは当然です.あなたがプレゼンする立場になったら,そ

私自身のプレゼンテーション

優れたコーチが優れたプレイヤーだったとは限りませんが,プレゼンテーションが下手な人にプレゼンテーションを教えてもらいたいとは思わないでしょう.ここまでプレゼンテーション・アドバイスと称して色々と書いてきましたが,私の言葉に説得力を持たせるためにも,少しこれまでの経験を書いておきます. 研究発表・プレゼンテーションのアドバイス プレゼンテーション・アドバイス(1):プレゼンが成否をわける プレゼンテーション・アドバイス(2):スライド作成の前にすべきこと プレゼンテーション・

教育とは何なのかを「クリシュナムルティの教育原論」を読んで考える

これまでに読んで衝撃を受けた本はいくつもある.その中に,思わず正座して読んだ本がいくつかある.そのひとつがこの「クリシュナムルティの教育原論―心の砂漠化を防ぐために」だ.大学の一教育者として,改めて自分の不明を恥じるばかりで,自分なんかが教師を名乗っていてよいのかと憂慮せざるをえない.いや,教師の務めを果たすべく,精進するほかないと思わされる. ジッドウ・クリシュナムルティ(Jiddu Krishnamurti),「クリシュナムルティの教育原論―心の砂漠化を防ぐために」,コ

プレゼンテーション・アドバイス(7):質疑応答で守るべきルール

最近の学生はプレゼンが上手だと感じます.もちろん個人差はありますが,一昔前に比べれば総じて上手になっていると思います.それに,ここで述べているようなアドバイスに従って,スライドと原稿を用意し,徹底的に練習すれば,それなりに上手なプレゼンはできるはずです.できないとしたら,それは準備不足が原因でしょう. 問題はその先です.質疑応答です.どれだけ上手に発表しても,質疑応答がダメだと評価は低くなります.口先だけで,内容を理解していないことが露呈してしまうからです.このため,質疑応

プレゼンテーション・アドバイス(6):発表本番時に守るべきルール

発表までに十分な準備をしてきました.いよいよ発表本番です.ここでは,発表本番で守るべきルールを示します. <発表のルール> 1) 発表原稿は見ない.もし持つなら工夫する. 2) 発表態度で好印象を与える. 3) 聴衆を見ながら話す. 4) ゆっくりと大きな声で話す. 5) 強調すべきところで強調する. 6) ポインターを振り回さない. 7) 時間を厳守する. このルールを守るだけで,拍手喝采を浴びるプレゼンにはならないまでも,目的を達成できいるプレゼンに近付きます.ここで

Zoom講義の録画が怪しい

私はZoomでリアルタイムに講義を配信している.本当はそれだけにしたいのだが,学生のネット環境も様々だし,なにより録画した講義動画を視聴したいという学生からの要望があったので,講義の最初と最後の漫談だけはカットした動画ファイルを用意した. Zoomなので,共有している画面の他に,自分も映る.いい感じだ.キャンパスに来ることができない新入生のためにバーチャル背景を時計台にしていることにも配慮が感じられる.感じられるだろう.感じて下さい. それはともかく,この講義動画を見てみ

プレゼンテーション・アドバイス(5):原稿作成・推敲・練習・練習

前回,ようやくスライド作成まで漕ぎ着けましたが,発表本番までにすべきことが残っています.原稿の作成,原稿とスライドの推敲,そして練習です.今回はその重要性を説きます. 原稿を作成し,スライドと共に推敲する「スライド作成のルール」に従って,思い描いたストーリーに沿ったスライドができたら,発表原稿を作成します.「スライド作成前にすべきこと」を実行していれば,プレゼンテーションの目的は明確になっているはずですし,誰が聴いてくれるのかも把握できているはずですし,伝えたいことに優先順