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【親子とは】 新作歌舞伎 「ファイナルファンタジーX」
諦めずに自分の道を進んでみろ
IHIステージアラウンド東京、またの名をぐるぐる劇場。
劇団☆新感線の「髑髏城の7人」花鳥風月極、「メタルマクベス」disc 1-3と、2年ほどお百度参りのように足繁く通った劇場です。月髑髏に至っては、豊洲に住めば毎日見られると、日々物件サイトを見ていたのも今は昔。
いよいよ閉館との噂を聞いて、最後にもう一度行ってまいりました。
演目はこちら。
ファイナルファンタジーX!
![](https://assets.st-note.com/img/1680252680344-aCOi3Au4Af.jpg?width=1200)
アニメ業界のAKIRAか、ゲーム業界のFFか、というほど海外でも長く愛されているファイナルファンタジー。
それが、歌舞伎になるなんて!
これは行かねばなりますまい。
そんなわけで、行ってきましたぐるぐる劇場。
以下、原作ゲーム未体験な観客の感想です。←え
シーモアバトルが前半の見どころなら、後半はユウナの異界送りの舞。確認したら、ゲームの完コピ!歌舞伎の舞は、優雅で優しくて、たおやかで、ああ、これでやっと彼らはゆっくりできる、と感じられました。ゆったりとした動きの中に重みがある歌舞伎ならでは。
実態速度はゆっくりなのに体感は早いのは、バトルについても同様です。現代劇ならド派手な殺陣やパルクールによるスピーディな展開になるところを、歌舞伎なら、ストップモーションのような動きの連なりで、静の中の激動を実現できる。
それは、召喚獣のシーンでも、ジェクトとティーダの親子バトルでも同じ。
刀を揺らす刀捌きも様式美なら、切られる方も、大きく倒れ込んだりすることはない。でも、そこでのやりとりははっきりと見える。劇画に近いのかも知れません。
拳だろうが刀だろうが、触れ合いが生じる戦いには、やりとりがある。銃撃戦だとそうはいかない。だから現代的な戦争って果てしなく残酷になるのだと思う。やりとりが生じなければ、情も生まれはしないのだ。
ジェクト役の、彌十郎しい様パパ最高。(色々混じってる)
ジェクトの中に少しだけ残っている理性が、別れた当時の幼い息子ティーダの姿に反応して隙ができ、そこで息子にとどめを刺される様が、これまた歌舞伎の様式美で展開される。
1000年前にできた、召喚士の命と引き換えにしてでも、束の間の平和を人々に与える仕組みは、当時の人々が懸命に考え抜いた解決策だ。それに感謝しつつも、別の形を模索しよう、という考えは、伝統芸能そのものにも当てはまる。
古典をきちんと引き継ぎつつ、新しい題材と融合させて新作歌舞伎を作り上げることは、ティーダや召喚士らが、新たなやり方を0から模索する様に重なる。
最後かも知れないから、全部話しておきたいんだ
誰かを犠牲にすることなく、死人は死人として天に返す。死んでまで負担をかけることのないように。生きることの希望は、コロナ禍を経た今に響く。
シーモアの生き様も、現代に呼応する。
シーモアの、声にならない叫び声が、ずっと痛かった。自分の置かれた境遇の理不尽さに対峙しつつ、ただ両親に愛されたかっただけの彼は、子どもの頃からずっと心から血を流し続けていたのだろう。親御さんもそれに気付きつつ、それでも世界の安寧を願ったのだ。親子って、どうしてこんな風にすれ違ってしまうのだろう。
寒いな。寒いのは嫌いだ。(中略)気合入れろ
今回、最前列ぐるぐるだったのだが、客席が回るスピードと演者が歩くスピードがシンクロすると、目の前で歩き続ける皆さんのアドリブ会話がきっちり聞こえる。ビバ最前列。上記は、雪の道中のアーロン獅童さんの会話。
歌舞伎ならではと言えばもう1つ。ユウナもルールーも、女性以上に女性すぎ。
召喚士ユウナレスカパイセンが登場した時、「あ、歌舞伎でも例外作るんすね。これは流石に女性なんすね。歌舞伎の家系の女優さん?」と思い込んでおりました。
帰宅してキャスト確認して、当たり前だけど、普通に男性なことに愕然とした。古典歌舞伎でも思うけれど、新作だと女形の皆様の女性味が増幅される、気がします。女性以上に女性って、世の中の女性の立つ瀬が無くなるからマジやめて、と己の努力不足を棚に上げて声高に主張したい。
ルールーの着物の捌き方とか、すすすっと流れる平行移動の歩き方とか、ユウナの首の傾げ方とか、全部盗みたい。ガサツな私にインストールしたい。
そして、最後に事件は起こりました。
今回、カテコは写真撮影アリなのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1680252738821-Ky14vxpKPL.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1680252739243-qCZZjQTKg8.jpg?width=1200)
中村獅童さん、こちらにトコトコいらっしゃり、前列のお子様においでおいでして、2ショットで写真撮っておられました。
![](https://assets.st-note.com/img/1680252907985-MsGbMlAbaw.jpg?width=1200)
優しい!そういう大人になりたい!そして今だけ、クソダサ眼鏡っ子だった9歳の自分に戻りたい…
歌舞伎の懐の深さを改めて思い知りました。
いのうえ歌舞伎で幕を開け、新作歌舞伎で幕を閉じたぐるぐる劇場。出来過ぎなほどシンクロしている、始まりと終わりでありました。
明日も良い日に。
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![いしまるゆき](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/6861758/profile_2d9497630ae04c91a48c5f1d9d222193.jpg?width=600&crop=1:1,smart)