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耳鳴り潰し272(解体、カレー、Kindle Unlimited再開)
声の出し方に工夫をすれば咳は出なくなってきた。
子どもたちのアレルギーの薬やらが切れかけていたので揃って小児科へ。医院の隣にあった巨大な屋敷の解体工事が進み、広大な空地に土が盛られていた。屋敷があった時には見えなかった、向こう側の景色が見えてくる。その屋敷とともにあった長い歴史が土と鉄筋と重機と作業員によって塗り替えられている。記憶の中にはまだその屋敷の絵が広がっている。漫画に出てくるお金持ちが住んでいるようなその家は、もうどこにもない。
前も書いたな、と思ったら、解体工事開始は三ヵ月前のことだった。
息子も鼻水が出てきたので小児科へ。小児科の隣に巨大な屋敷があったのだが、取り壊し工事が始まっていた。どのような経緯でこんなに大きなお屋敷が取り壊されることになったのか、などと想像を巡らせる。防音シートの隙間から瓦礫の山が見えていた。
自宅になっているであろう、小児科の二階の窓際で日向ぼっこをしている猫が外から見えた。
「先生って猫飼ってたの?」と診察の際に娘が訊ねる。
「あら、日向ぼっこしてるの見えた? 何匹飼ってると思う?」
「2?」
「3匹」
そんな会話で盛り上がっていた。私は咳を出さないように口を閉じていた。
買い出しの最中、トイレに行った息子が「あのカレー屋に行きたい」と突然言い出した。土曜の昼間だけやっている、子ども食堂的な店だ。調べるとまだ開店中だったので、もう一件の買い物は後回しにしてそちらへ向かう。ことあるごとに息子が「また行きたい」と言っていたお店だった。
到着して奥の座席に座ると、娘がカウンター席に知り合いの顔を見つけた。お隣さんの兄妹のお兄さんの方だった。私のイメージは彼らが小学校高学年の時のままで止まってしまっている。隣に住んでいても顔を合わす機会はほとんどない。カレーは私と妻はすぐに平らげ、息子はゆっくり味わって食べ、娘はなぜか「辛い」と言いながら(カレーは大して辛くはないのだが、娘は辛味に敏感)、ルーだけを先に食べていた。
高校生以下と大人では料金が違う。お会計の際に「大人三人、子ども一人ですね」と勘違いされた。娘は中高生を飛び越して大人扱いされていたことが嬉しそう。背は高いが小学六年生だと説明する。
「息子がまたここに来たがっていたんですよ」と妻が店長さんらしき人に説明すると、とても喜んでくれていた。
店を出て自転車を走らせた直後、後ろを走る妻から「お腹空いた」との声が聞こえる。続いて「『え、今食べたところですよね』って顔してるの、見えないけど分かるよ」との声。うんその通り。確かに大人には物足りない量ではあったけれど。
「青春小説集」に久しぶりに新作追加。あまり久しぶりの感覚がないのは「全農の野菜」とか「あとがきの続き」とか、構想するだけしている話があるせいだ。最近の息子とのグリムジョー・ジャガー・ジャックごっこを踏まえた「本当は怖いグリムジョー・ジャガー・ジャック」。題名の元ネタであるグリム童話とは何の関係もない。グリムジョーの活躍する回だけを息子と観た後、リアルタイムで観ていた頃の自分と会話をする話。
図書館読書に切り替えたところ、多数借りても一冊しか読了しなかったことを踏まえ、Kindle Unlimited再開。個人的な本を読みたい、電子書籍読書に慣れてしまった、などの理由で。
青山結「生きづらさスパイラル: 青山結 短歌集」読了。短歌、絵、付随する一言、が一ページずつまとめられている。「生成画像付き短歌集」のkindle書籍化に際し、どのようなレイアウトにしようか悩んでいたことに対するヒントをもらえた気がする。
「店員に声かけられてツーアウト次は雑談行きつけチェンジ」など、親しく接してこられることをつらく感じる作者の感情が流れ込んでくる。終盤が不穏になっていたので作者が生きているかと確認したら、まだ活動しておられたので、フォローする。
同じく歌集。柳 六三四「ハートのベランダ: リハビリ日記短歌集 隅田の川辺の病棟で」読了。脳出血で倒れて入院した際に詠まれた短歌集。自分の体験とも重なるところがあった。
そして投げ銭設定に切り替えた「異想随筆集」が購入される。駄目で元々のつもりであっても実際購入されることがあるのだから、やっておいて良かった。
今日の一枚「解体されていくビル街」
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