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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

#掌編小説

「憧れの文芸部部長の手で森の中に埋められながら、執筆の悩みを聞かされる話」#シロ…

 木の実と葉にまみれて、山中に埋められた死体の気持ちになっている。 「気分はどう?」  憧…

泥辺五郎
3か月前
16

「怪獣たちの日常」#シロクマ文芸部

 金色に光る身体を持つ怪獣が手で稲刈りをしている。夕焼けが反射して色がうるさい。  地球…

泥辺五郎
4か月前
12

「夕焼けは裏切り」#シロクマ文芸部

 夕焼けは裏切り、と松永久秀は一人呟いた。清少納言「枕草子」のパロディである。 ・春はあ…

泥辺五郎
4か月前
16

「ノートPCを携えて放浪する山頭火」#シロクマ文芸部

 風の色具合を見ながら種田山頭火(1882-1940)は「こういう解釈も出来るのか」と感心した。…

泥辺五郎
4か月前
12

ぬいぐるみ小説集「壊れかけた月の下で何役もこなし続けるウサギ」(半分)#シロクマ…

※こちらを含む「ぬいぐるみ小説集」をkindle出版しましたので、公開済のものの内容を半分程度…

泥辺五郎
4か月前
10

ぬいぐるみ小説集「スーパーの廃墟のレジに立つ犬」(半分)#シロクマ文芸部

※こちらを含む「ぬいぐるみ小説集」をkindle出版しましたので、公開済のものの内容を半分程度…

泥辺五郎
5か月前
15

「憧れの文芸部部長にレモンの汁を目に垂らされる日常」#シロクマ文芸部

 レモンから絞られた汁が僕の目に垂らされていく。憧れの文芸部の部長である彼女の実験台にされる日々の中で、本日の僕はレモン汁を目に入れるとどうなるのだろう、という彼女の素朴な疑問に付き合わされているわけだ。 「中年男性が中年男性に拷問をしているところを書いてるの。目にレモンを垂らすところで『目をつぶるんじゃない! じっと俺を見ておけ!』ていう台詞を思いついたんだけど、実際にやってみるとどんな感じなんだろう、て思うじゃない」 「沁みます。痛いです。目を開けていられないです」 「

「欠けて降る月描けて書けて」#シロクマ文芸部

 今朝の月大粒ですぐ積もりゆくかつては空にありしものたち  早朝に起き出して窓を開けると…

泥辺五郎
5か月前
8

「憧れの文芸部部長に手錠をかけられる話」#シロクマ文芸部

 花火と手錠を交互に見ながら僕は部長に訊ねた。 「どうして僕は部長に捕まっているんですか…

泥辺五郎
6か月前
21

「燃え上がるかき氷/すくわれないスーパーボール」#シロクマ文芸部

 かき氷の屋台から火の手が上がっていた。かき氷を作る機械を酷使し過ぎて燃え上がったようだ…

泥辺五郎
6か月前
17

「老人とウニ」#シロクマ文芸部

 海の日をウニの日に変えた老人の話をしようか。  老人はある時海で溺れていたウニを助けた…

泥辺五郎
7か月前
17

「フライングフライパン」#シロクマ文芸部

 夏は夜になるのが遅いので、黒いフライパンが空を飛ぶ様子がよく見える。早めに夕飯の支度を…

泥辺五郎
7か月前
13

「オオアリクイが夫になったきっかけの話」#シロクマ文芸部

 手紙には蟻文字が記されていた。文字の代わりに蟻が這いまわって文字の形を取るというやつだ…

泥辺五郎
7か月前
15

「音がら」#シロクマ文芸部

※「声がら」の続編にあたります。前回読んでいなくても問題はないです。  ラムネの音がらがまだ残っている。ラムネを開栓する音だけは響くが、ラムネも、それを開けた人も、もういない。彼と一緒に見た窓からの花火の音も、彼が出ていった時の、乱暴に閉められたドアの音も、音がらとして去年の夏から残り続けているのに、新しい夏が来てしまった。  蝉が脱皮して抜け殻を残して飛び立っていくように、去っていったものの音だけが残る現象を「音がら」という。教えてくれたのは二歳上の姉だった。姉の部屋に