吉田大輝(金足農業2年)
センバツ絶望かを考察
屈辱の初聖地TKOから約1ヶ月後、新チームの主将として臨んだ秋季秋田大会初戦は辛くも逃げきったが、次戦で秋田工業の前に沈んだカナノウ不動のエース吉田大輝。
翌日の秋田魁新報やスポーツ紙には「金農センバツ絶望的」という衝撃的な文字が飛び交った。ベスト16で敗退となれば、そう報じるのも無理もない。
では果たして金足農業のセンバツ出場は、完全に断たれてしまったのか。望みは薄いが、まだ21世紀枠が残っている。
とはいえ金足農業を降した秋田工業の東北大会優勝、ひいては明治神宮大会ベスト4位以上進出が前提の上での話だ。
カナノウには、今夏の甲子園出場はもちろん、その原動力となった昨秋の新チームでの秋田大会優勝という実績がある。
今秋は秋田工業の前にベスト16で退いてはいるが、内容は2対3の白熱した投手戦だった。
仮に秋田工業が明治神宮大会で善戦すれば、高野連も熟考するはずだ。
その秋田工業が明治神宮を逃したとしても、可能性は極めて低くなるが、まだカナノウにはセンバツ切符のチャンスがある。以下3つの条件が揃えばだ。
秋田工業の東北大会決勝進出
東北大会決勝は秋田勢同士の対決
秋田工業を接戦で降した秋田勢の明治神宮大会ベスト4以上
東北大会の出場枠は3つ。
仮に秋田工業が3位通過だとしても、その準決勝が接戦かつ、相手チームと東北大会決勝で再び接戦した上での敗退であれば、高野連も相当の評価を下すだろう。
つまり、それだけ秋田のレベルが高いことを東北大会と明治神宮大会で印象づけるのが必須だ。あとは神頼みしかない。
そんな訳で、ここからは吉田大輝を軸とするシン・カナノウ旋風について振り返りながら、最新の投手成績までを見ていこう。
シン・カナノウ旋風、第2章へ
初めて踏んだ、聖地のマウンド。
秋田ではランナーを背負いながらも要所を締めてこられたが、やはり一筋縄にはいかないのが夏の甲子園だ。
大会屈指の“西短打線”に畳みかけられ、自身初の大量失点を許す形で途中降板。いわゆるKOで、シン・カナノウ旋風の第1章は幕を閉じた。
同時に翌春のセンバツに向けた、第2章が動き出した日でもある。
第1章はあっけなく終わったものの、最終回には地鳴りするアルプススタンドの声援から魔物を発動させた点は、さすがのカナノウだ。
やはり、ただじゃ終わらせなかった。
カナノウ初戦は甲子園3日目
第106回全国高校野球選手権大会の組み合わせ抽選会が4日、大阪フェスティバルホールで行われた。
金足農業は大会3日目の第2試合、プロ注目の柴田獅子を決勝で撃破した福岡代表の西日本短大付属との対戦カードが決定している。
カナノウ旋風6年ぶり再来へ
2018年の甲子園100回記念大会で一大フィーバーを巻き起こした金足農業が、久しぶりに聖地へと帰ってくる。
金足農業のエースは、2年生右腕の吉田大輝。6年前にエースナンバーを背負いカナノウを全国準Vに導いた立役者、吉田輝星の弟だ。
この日の吉田大輝は秋田商打線に自己ワーストの16安打を浴びながらも、9回を1人で投げ抜き優勝投手に輝いた。
カナノウは秋田全5戦中4試合で吉田大輝が先発を務め、いずれも完投勝利。まさに6年前の旋風が頭をよぎる戦いぶりだ。
私学優勢の高校野球において、頼もしい公立校の躍動に地元秋田は早くも兄超えムードが高まっている。
兄・輝星がシャイニングスターなら、弟・大輝はビッグシャイニング。6年ぶりとなる聖地で、秋田県勢初の全国優勝を狙うシン・カナノウ旋風に注目だ。
カナノウ吉田大輝:夏の甲子園2024までの軌跡
決勝戦◯ 6-5 秋田商
準決勝◯ 8-0 秋田工(7回コールド)
準々決勝◯ 2-0 本荘
3回戦◯ 4-0 大館桂桜
2回戦◯ 3-2 明桜(延長10回タイブレ)
吉田の注目度を高めたのは明桜との一戦だ。相手は春の秋田王者で第一シード。
この夏ノーシードで臨んだ雑草軍団が、初戦からジャイキリをやってのけた。
序盤から金農ペースで進め、先発の吉田も7回に捉えられたが、それ以降はゼロ行進。金農が10回に均衡を破り、その裏を吉田が見事に封じて初戦をモノにした。
吉田は10回5安打11奪三振での完投勝利。初戦から壮絶な試合を繰り広げたことで、魔界𝕏では「ある意味で秋田ファイナル」と大きな反響を呼んだ。
そして吉田は、この明桜戦の8回から築いたゼロ行進を大幅に伸ばしていく。続く大館桂桜と本荘戦で2試合連続完封。
大館桂桜戦では自身初の無四球完封、それも104球とマダックスに迫る省エネピッチングを披露している。
準決勝の秋田工戦は登板せず、ゼロ行進は決勝の先発マウンドから再スタート。惜しくも3回に2失点を喫して記録が途切れるも、ゼロ行進を23イニングまで伸ばした。
「先発したら必ず投げ切る」が信条の吉田大輝。
そんな兄譲りの気魄にとどまらず、体つきや投球フォーム、ひいてはルックスまでも兄を彷彿とさせるものがある。
もちろん兄の代名詞、侍ポーズも健在だ。
TikTok上では6年ぶりに甲子園切符を掴んだ秋田決勝の直後から俄然、吉田輝星・大輝の兄弟コラボ動画の投稿が殺到。
シン・カナノウ旋風は既に場外で始まっている。
吉田大輝:プロフィール
吉田大輝:全データ
中学時代の自己最速は132km。金足農業に進学後の春季秋田大会でベンチ入りメンバーに選ばれ、続く夏の大会初戦で3番手として初マウンドを踏んだ。
惜しくも1点及ばず惜敗を喫しているが、決してホロ苦デビューではない。
6.2回を1安打4奪三振。ランナー2人を置いたワンアウトの場面でマウンドに上がり、難なく火消し役を演じてのけた。
結果2失点で敗戦投手となるも、自責点はゼロ。自己最速も140kmの大台に乗せ、むしろこの一戦で評価を高めている。
同時にシン・カナノウ旋風も、この一戦から口火を切った。
秋季大会で兄・吉田輝星以来の秋田チャンピオンに輝くと、翌春2月には自己最速も145kmまで到達。
兄譲りの成長力で、2年生にして秋田を代表する右腕へと上り詰めている。
ということで、公式戦デビューを飾った1年夏の投手成績から順に見ていこう。
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