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昼間の贅沢時間

夏のワンコの散歩は、敏感で引きこもりの私にとって、なかなかハードルの高いものだった。眩しい日差し、べっとりとした湿気を含む風、耳障りな蝉の鳴き声、汗ばむ体…。鬱々としてる時は尚更、全てが刺激的であり、たかが10〜15分でも帰るとグッタリ。。ワンコも暑いだろうということを理由に、明け方の日が昇る前とか夜の散歩がお決まりだった。

しかししばらく続けていくうちに、散歩以外ほとんど外に出ないので、日に当たる機会もほとんどないことに気がついて、鬱や免疫力低下、妊活にも影響するかも…と考え直し始めた。そして踏ん張って明るい時間に行ってみようかな…と、気持ちも身体も重いままリズムを変えてみたのだ。

いつも歩く道はアスファルトだしワンコの足に悪いし、余計なお節介オバちゃんもいるから、それを避けて車でちょっと行った芝生のある公園へ。しかしそこは草がボーボーで足がチクチクする…ここはなんだか嫌だなぁ。もう少し遠出をして、あまり行ったことのない場所に到着した。


駐車場には数台、休憩時間なのかトラックの運転手が休んでいる。「人はいるかな、、、」と少しビクビクしながら歩き出すと…なんと、全く誰もいない!よく刈られた緑が広がっていて、その周辺には大きな木が並んでいるだけ。私は、光から逃げるように大きな木の下に行き、だだっ広い緑の隅っこ、周りをぐるりと歩いた。


公園のすぐそばにある海からの風が、サワサワと木の葉を揺らし、葉と葉の間から木漏れ日が差している。大きな木の下に太陽から隠れて拍子抜けした。「あれ?なんか、涼しいな…。」当たり前のように30度は超える夏日が続いている、しかも真昼。おかしいなぁ。。嫌な暑さも湿気もあまり感じない。むしろ気持ちがいい。大きく深呼吸した。草の香りがした。木陰って、真夏でもこんなに涼しいものなのか…!!


そんな発見があってから、そこはもうお気に入りの場所に認定されたのだけど、毎日そこでの散歩が日常になってから、あんなに嫌だった日差しや虫の声さえも心地よく感じるようになっていった。光の刺激が苦しくなっても大丈夫、私には木の下という避難所があるから。そう思いながら、ワンコに引っ張られるがまま光の下を歩いたりしてみるうちに、驚くことに汗をかくことさえも気持ちよく感じてきたのだ。ストレスに感じていたことが、むしろ心地よく感じられるようになることもあるんだ!そもそも、私の身体はこういったことを求めていたのではないか?自然から影響を受けている心身が喜んでいるのを感じ、感じていることを喜んでいる。


少し離れた向こう側の工場の音が少しする以外、全てが自然の音で、人っ子一人いない。ワンコと二人、貸し切りの贅沢時間。雀を追いかけてみたり、立ち止まって写真を撮ってみたり、ワンコに話しかけたり、海をボーッと眺めたり、木陰で本を読んでみたり…なんか、自由。。この感覚なんだろう。瞬間瞬間、思い立ったことを誰の目も気にせずにやる。子どもみたいになりふり構わず。こんな感覚、ずっと長いこと忘れていた、、久しぶり過ぎて初めましてに近い。

こんな贅沢な時間が満喫できること、そして発見できたこと、それだけでお釣りが出るくらいの収穫だなぁ。何も恐れずに外に出られる喜びを感じながら、今日もワンコとウキウキしてあの場所へ向かう。

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