ここまでわかった犬たちの内なる世界〜#08「嗅ぐ生活」〜なぜ、脇の下のにおいをこすりつけた請求書に効果があるのか?
いきなりですが、皆さんにクイズを出します。
えっ、またですか?
と、前回から引き続き読まれている方は身構えたかもしれませんが、
出題は1問だけです。
でも、ありきたりのものではありませんよ。
次のショート・ストーリーをよく読んで、【 A 】にふさわしい言葉を
8字以内で考えてください(ハードボイルド仕立ての物語にしてみました)。
✳︎
ジャーマン・シェパードのマックスは、アメリカ合衆国のある都市警察のK-9課で仕事をしています。昨夜、マックスのハンドラーであるスミス巡査は、麻薬密売の容疑者を発見しました。ここからは、その後の展開です。
玄関だ。
マックスは早速、スミス巡査にサインを送った。
ややこわばった顔に、どことなく亡羊とした瞳。
バランスを欠いたままの表情で、ハンドラーを一瞥する。
「本気ですか?」とマックスが尋ねるときの例のサインだ。
スミス巡査の険しい眼と引き締まったあごのラインを読んだマックスは、
「これから始まるゲームは、真剣勝負なんだ」と了解した。
内側の気配をうかがっていたマックスは、「中ですね」とスミス巡査に視線を送り、同意を求めた。
10秒後。
密売人は自分の隠れ家に、見慣れない1人と1頭がいるのを認めた。
「おとなしく逮捕されなさい。ここにいるのは訓練された警察犬だ。
抵抗すれば、咬みつくぞ」
警告を受けた容疑者は、警察犬の牙に恐れをなしてすぐさま降参する。
犬を放す必要もなく逮捕に至る。これがふつうのパターンだ。
しかしマックスは、今はそうならないことを知っていた。
なぜなら、スミス巡査からも男からも【 A 】が立ちこめているからだ。
「男の気分」を感知したマックスは、全ての神経を動員してゲームの目標物を
見やった。
こわばった男の影が落ちた床の上で、マックスは最初のステップを踏みたい
衝動にかられた。
マックスの鼻が一瞬、ひくつく。
そしてもう一度、人間の肉に自分の牙を射し込むことへのためらいを封じ込めるかのように、鼻腔に空気を送った。
男が動いた。
机のへりの位置で宙ぶらりんになっていた男の左手が、引き出しの取っ手へ伸びていく。
(銃を取り出すつもりだな)
スミス巡査は、迷わず「アウス」と叫んだ。
物心両面の応援は、いつでも歓迎しています。 皆様からのチップは、より良い作品づくりのために自由に使わせていただきます。