村本大志

映像演出家 / デニムブランド downnorth jeans 主宰。 小説『透明な耳。』双葉社 お問い合わせはHPからお願いします▶︎ http://taishimuramoto.downnorth.jp/ 第5回かつしか文学賞・優秀賞『佐山家の彼岸』

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『あかり。』➀ 相米慎二監督の思い出譚

相米慎二という映画監督がいた。いまから20年くらい前に病気で亡くなってしまった。 いま、あの頃のことを思い出しても胸が熱くなる。 監督が残した映画は全部で13本。その映画には多くの資料や証言が残されているので、詳細はそちらに譲りたい。DVDもある。ときどき、ミニシアターで熱心な映画マニアの主催の特集上映もある。 未見のひとは、ぜひ見ていただきたい。 よく、映画監督が映画を撮っていないときにどうやって暮らしているのか?と半ば、興味本位に話題にする人がいるが、実際のところ僕も

    • 『あかり。』第2部 S#79 無題・相米慎二監督の思い出譚

      肌寒くなると、辛子色のシルクのステンカラーコートを羽織っていた。 スタイリストのKさんがあつらえたもので、触ると生地が素晴らしい。 たぶん中井貴一さん用に用意したものだと思うのだが定かではない。 それを監督が「お、これいいな」と奪ったのだった。 それを気に入ってよく着ていた。 ステンカラコートに下駄履きというのも妙だが、監督にはよく似合っていた。 辛子を(チューブだが)小皿に出していて、ふいにこんなことを思い出した。 まさに辛子色のコートだった。 ポケットから出てくるの

      • 『あかり。』第2部 S#78 許されざる者・相米慎二監督の思い出譚

        深夜、見たい映画が配信でどうにも見つからなくてグルグルとタイトルやキャストやなんやかやを見続け、時間が過ぎていくことはないだろうか。 僕はたまにある。 何日かかけて『SHOGUN』をようやく見たのはいいが、その後ハズレが続き、なかなかはまらない。 それは作品が悪いのではなくて、こちらの気分と合致するものに当たらないだけである。 そんな夜に、何度目かの『許されざる者』(日本版)を見た。 オリジナルは、C.イーストウッド主演・監督の名作である。 この映画のことを相米監督はすごく好

        • 「あかり。」第2部 S#77 湯治場の熱い湯・相米慎二監督の思い出譚

          監督と数日、湯治場で過ごしたことがある。 新潟のどこかの山奥だった。 常々、腰が痛い、背中が痛いと言うひとだったから、新潟の知人を尋ねるついでに湯治をしようとなったのだろう。よく効くという話だった。 元々、僕は同行する予定はなかったのだが、 「なんでよ、行こうじゃないか」と半ば無理やり誘われたのだ。 別の同行者は女性だったので、僕は遠慮もしていたし、間に入るのも嫌だった。 あれはどういう意味なのか? 二人きりになりたくないとか、そんなことなのだろうか。とりあえず僕を連れて

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        『あかり。』➀ 相米慎二監督の思い出譚

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        • 下北沢周辺ダイアリー
          20本

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          『あかり。』第2部 S#76 命日は過ぎゆく・相米慎二監督の思い出譚

          9.9は監督の命日です。 関係者は『救急車』と覚えるそうです。 命日が過ぎてしまうと、変なもので『あー、もうすぐ命日だな』とか思う必要がなくなるので、来年までそういうカウントダウン的なものとはさよならです。 とはいえ、日々の中で監督との問答は時折りあります。 「そろそろ引き時じゃないか」 とか 「まあ、そんなもんだよ、あいつらの考えることは」 とか ちょっと腹が立つようなことがあった時に、監督に目を向けると、そんなふうに応えてくれているような気がするのです。 「まあ、そ

          『あかり。』第2部 S#76 命日は過ぎゆく・相米慎二監督の思い出譚

          『あかり。』第2部 S#75 浮世の監督・相米慎二監督の思い出譚

          浮世という言葉がある。 世俗的とか通俗的とか、多分その中に含まれる。 監督と一緒にいると、いつもそういうものとの距離を考えることになった。 何年も、もしかしたら何十年も甕で寝かせた紹興酒を飲まれたことがある人はわかるだろうが、紹興酒などどちらかというと上品な酒ではない。庶民の酒だ。それが、時間を経ると、とてつもなく上品な味わいに変わる。 ただ、甕の中で静かに寝ていただけなのに、である。 僕はときどき、そういう妙味を味合わせてもらった。 酒の飲めない僕でも流石に違いがわかる

          『あかり。』第2部 S#75 浮世の監督・相米慎二監督の思い出譚

          『あかり。』第2部 S#74 撮りたかったもの・相米慎二監督の思い出譚

          あのとき自分が撮りたかったものってなんだろう……と思い出そうとしてもあまり思い出せない。 断片的に撮った映像は思い出せるのだが、そこに映し撮りたかったものが思い出せないのだ。 未熟だったんだろうと、いまはわかる。 撮っているときは、わからない。 ただ一つ一つのショットが成立していたとしても、編集で繋いでみたものは映画とは到底呼べない代物だった。すべてが寸足らずだ。 いまはこう言えるけど、当時は思っていても言えなかった。 撮った本人が吐いてはいけないことがある。 きっと

          『あかり。』第2部 S#74 撮りたかったもの・相米慎二監督の思い出譚

          愛犬ジャックの死

          10日前、愛犬ジャックが死んだ。 15歳と11ヶ月の犬生だった。 日増しに喪失感は大きくなり、今では口を開くのも億劫だ。 この悲しみがなにかに似ていると思ったのは、数日前のことである。 それは師である相米慎二監督が亡くなったときの心の動きに似ているのである。 「犬といっしょか、オレは」 監督に笑われそうだけど、ほんとうなんだから仕方ない。 あの頃、これほどの悲しみはもう訪れないだろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。 犬が死ぬとは、これほどの痛みなのか。

          愛犬ジャックの死

          小泉式納豆丼

          小泉式「納豆丼」について。僕は小泉武夫さんという発酵学者を敬愛してやまないのですが、とある番組で彼のレシピの「納豆丼」を紹介していて、あんまり旨いのでご紹介します。 1  丼に飯を用意。 2  フライパンに油を引き納豆1パックを焼く。 3  真ん中に凹みを作り卵を割入れる。 4 水を少量差し蓋をして数分蒸し焼き。 5 御飯の上に乗せて周囲に鰹節をパラパラと捲き醤油を好みの分量廻しがける。 6 かき混ぜながら、わしわしかっ込む。  旨い。バカみたいに旨い。 グルタミン酸とイ

          小泉式納豆丼

          ぎっくり腰デビュー

          初めてのぎっくり腰をやって一週間ほど過ぎた。 噂には聞いていたが、これほど痛いとは思わなかった。 しかし、接骨院での治療のおかげで、今はずいぶん楽になった。 インフルエンザの高熱に浮かされて、熱が引いていくような感じである。 自転車事故で肩と腰を痛めた時とはぜんぜん違っていた。 先生にぎっくり腰のメカニズムを聞いてなるほどと思った。 脳の指令で、インナーマッスルが動いてからアウターマッスルが動く。それが人の正常な動作らしいのだが、ぎっくり腰はなんかの拍子で、先にアウター

          ぎっくり腰デビュー

          『あかり。』 第2部 S#73 相米慎二監督の思い出譚・言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション

          三日前に、初めてぎっくり腰になった。ジャックの犬友だちにおやつをあげていて、なりました。こんな15年も続けているなんでもない動作の中にこれほどの衝撃が待っていたとは……考えたこともなかった。いまは多少は良くなりましたが、現在寝込んでいます。 腰が痛い……といえば、相米監督です。まあ、腰に限らず、あそこが痛い、ここが痛い、と会えば必ずと言っていいほど、どこがが痛い人でした。 で、誰かに揉ませる。踏ませる。 踏めと言われても、恩師をそうそうに踏めるものではありません。スタジオの

          『あかり。』 第2部 S#73 相米慎二監督の思い出譚・言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション

          雨の日だから、絵本でも読んでやり過ごそう

          絵本をいただきました。 作者は、井上コトリさんです。 徹底的にアナログな作家です。 AI? なんですか、それ? みたいな作風の方です。 梅雨の日の水の世界に住むひとたちの話です。 僕は雨が嫌いで、それは犬と暮らしていると、外に散歩に出かけられないというのは大事件だからなのですが、まあ、本来なら雨はある程度降らないと困るわけです。 ここぞとばかりに、町に遊びにでかける池の仲間たち。どうやら大きさはこの世界では無視されているよう。 子どもたちもとっくにいなくなった我が家では

          雨の日だから、絵本でも読んでやり過ごそう

          『あかり。』第2部・相米慎二監督の思い出譚/ S#72 まなざし

          映画監督に必要なものはなんだろう? 色々あるっちゃあるんだろうけど、なんといっても「まなざし」じゃないかと思う。 人を見つめる「まなざし」である。 それが、深ければ、あるいは温かかければ尚いい。 そういうものはきっと天性のもので、なかなか備わっているものではないのだ。 それは若い頃には気付けないもので、自分にはあると錯覚して物事を進めてしまう。 あるシーンで僕が必死で撮っていると、監督の視線を背中に感じた。 僕は監督に「毎日見にきてください」とお願いしていた。 寸足らずの演

          『あかり。』第2部・相米慎二監督の思い出譚/ S#72 まなざし

          このところ、すっかり元気を取り戻してくれたジャック。気持ちのいい夕方は特に調子がいいのだ。このまま最後まで駆け抜けてほしい!生きる意欲を見せてくれるのが嬉しい。

          このところ、すっかり元気を取り戻してくれたジャック。気持ちのいい夕方は特に調子がいいのだ。このまま最後まで駆け抜けてほしい!生きる意欲を見せてくれるのが嬉しい。

          数値がよくなって、このところ調子がいいジャック。まだまだ生きたいという意欲を見せてくれる。そんなふうに生きることに前向きなのが羨ましい。さすが犬です。

          数値がよくなって、このところ調子がいいジャック。まだまだ生きたいという意欲を見せてくれる。そんなふうに生きることに前向きなのが羨ましい。さすが犬です。

          https://www.threads.net/@downnorthjeans/post/C7cR-N5PVSG/?xmt=AQGzGqNRSqTgmfssdmKaXZuc5qgGsGYcRgbnfHKDCce3uA

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