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コロナは「環境と経済」の関係性を私たちに伝えてくれるのか

コロナによる経済活動の収縮に伴い、今年の二酸化炭素の排出量は少なくなるのだろうか?

コロナの感染拡大の最中、連日ニュースでは「経済活動か医療(感染対策)か」というトレードオフのような構図が煽られているが、実はもう一つよくトレードオフではないかと議論される「環境と経済」に関してはまだそこまで関心を集めていないように思われる。よって今回、あっさりとこの関係性について考えてみたい。

*先にこの記事が全く学術的なものではない旨承知して頂きたい。

なぜ「コロナ」が「環境と経済」の関係性を調べる絶好の機会

経済学者が口酸っぱく言うことの一つが、 Correlation と Causalityは同質ではない「相関関係」=「因果関係」ではないということである。例えば

主張1:  経済発展と教育は相関関係である。
主張2: 「教育が充実したから国の経済が発展した」教育の充実が経済発展に寄与した(因果関係)

主張1、2は一見似たような主張に見えるが実際はどうだろうか。主張2は果たして正しいだろうか。「経済が発展しているから教育を充実させられている」と言うことはできないだろうか。 

同様に、「経済活動と環境汚染」に相関関係があったとしてそれは「因果関係」つまり、「経済活動活発→環境指標」であるといえるであろうか。この二つに影響を与える他の変数(事柄)があった場合(例えば環境政策の変更) 、この因果関係を実証的に示すことは困難である。

自然科学の場合、ある程度の変数のコントロールが可能である。しかし、社会科学においては社会現象をコントロールすること、例えば今回の場合、この「環境と経済」関係性を調べる為に社会経済を、意図的に停滞させたり停止させたりすることは出来ない。よって何か「ランダム」な社会現象(今回の場合急な経済活動の停滞)が起きた時というのは、言い方は悪いが、そのような「因果関係」を調べる上では絶好の社会実験ができる機会である。 

「急に(ランダムな要因により)経済活動に変化があった」これが「因果関係」を見極める為に欲しいのである。

COVID-19の影響を受け、多くの国で隔離政策や渡航規制により今年Q1、2と経済活動が停滞した。しかし、この「コロナ」は予想だにせず経済活動を停滞させ、結果として、何らかの一時的な「自然環境の変化」をもたらしたと考える。実際にベネチアの水がきれいになったというニュースを見た方もいると思う。

環境クズネッツ曲線

そもそも「経済発展と環境保全(環境への負荷)」の関係性はこれまでどうやって調べられてきたのか

「経済発展と環境保全(環境への負荷)」の関係性を調べる為の古典的仮説の一つが「環境クズネッツ曲線」である

これは、環境指標と一人当たり GDP の関係性を逆U字型の曲線で示したものである。仮定条件や具体的な公式など全て省くと「(1) 初期の経済発展においてはそれに呼応して環境汚染が悪化していくが (2) 経済発展がある一定水準を超えた段階でそれ以上の経済発展は逆に環境の改善を持たらすのでは」という考えである。

賛否両論ある。何なら否の方が多い。

原文はこちら

(クズネッツ曲線は最初にInequalityとIncome per Capitaの関係性に使われていたが その縦軸を Environmental Degradation に変えたのが環境クズネッツ曲線である)

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オリジナルの Regression model は、

ln(E/P)it = αi + γt + β1 ln(GDP/P)it + β2 (ln(GDP/P))^2it + εit

E: 排出量 GDP/P(population):一人あたりのGDP

(色々な説明を省き、すっ飛ばすと、だいたい必要なのは 排出量と一人あたりのGDPの数値である つまり出来る!この二つのデータが揃えば比較的簡単に実証できる!論文が書けるぞ!となるわけである。lnとlnの二乗使っているので「U字型」正から負の関係性なので「逆型」)

「デカップリング」とは

"De-coupling"とは「離婚」のような響きであるが、「経済発展」と「環境破壊」を社会経済構造の変革により「切り離し」ていくことである。

これは環境省を始め日本でも長年掲げられてきた指針の一つであり、私たちが環境問題を解決していくにあたり重要視すべき考えである。しかし、最近「エビデンスベース」「ファクトベース」の政策が求められている中、これまでこの相関性を示すデータが少なかった。

そんな中、今回の「コロナ」は私たちの経済社会について考えるための多くのデータをもたらしてくれたことは間違いない。

(だからと言って「コロナ」の感染が拡大して良かったなんてことは全くないが。「コロナ」のやつ 今度会ったら袋叩きにしてやる!)




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