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特別支援教育におけるICT・デジタルツールの実践事例と可能性 -水戸特別支援学校さんから学ぶ

2022年9月27日、茨城県立水戸特別支援学校の宮山校長と八柳先生をゲストにデジリハセミナーを開催!今回はその様子を一部レポートとしてお届けいたします。まずは、教員である八柳先生のプレゼンの内容をご紹介!

なぜ特別支援教育でICT・デジタルツールの導入が必要なのか?

文部科学省から出されました「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の報告書に、ICT利活用等による特別支援教育の質の向上という項目が提示されました。
そちらに、ICTは子どもが主体的に学ぶために有用なツールであり、学習効果を高めたり、生活上の困難の改善に役立つものであると記載されています。さらに、ICTは使用することが目的ではなく、あくまで目標を達成するための手段である、そのための分析能力が重要というのも強調されています。

水戸特別支援学校でのICTツールの導入事例

今回のウェビナーを機に、実際に私たちがどのようなICT・デジタルツールを活用しているかまとめてみました。

タブレットを使った実践例

図に示している機能の他、スライドを活用して絵本の読み聞かせをしたりとか、発語の難しいお子様に専用のアプリを活用したりしています。

その他、本校ではWeb会議システムをよく使います。休校になったときはもちろん、学校間交流や集会にも使います。一昨年の文化祭はオンラインで行ってみたりしました。
また視線入力装置を6台常設しているのですが、朝の会で呼名をしたり、生徒会選挙で投票に活用したり、余暇活動に取り入れたりしています。

また、本校にはe-スポーツ部もあります。こちらは生徒たちが自らプレゼンし立ち上げた部になります。その他電子黒板やプログラミング教材としてドローンを取り入れるなどもしています。もちろんスイッチやトラックボールマウスなどの各種入力機器を日常的に活用しています。

デジリハの活用状況について

そもそもデジリハを導入することになったきっかけは、本校校長宮山が「重度障害のあるお子様が心の中で考えている言葉を、外の世界に引き出す現場の技術が限られているのではないか。そこにICTやデジタルツールを活用することが出来るのでは」という気持ちを抱いたことが始まりです。

デジリハ導入後は、デジリハや視線入力装置を常設する部屋を「あいるーむ」として常設し、朝一からPCを立ち上げ、使いたいときにすぐ使えるように環境を整備しています。

「あいるーむ」の様子
デジリハ公式 (デジタルアート×リハビリ) on Instagram: "\みんなが動き出すデジリハの秘密/ 楽しいを追求するため、様々な機能や特性をもつプレイヤーの皆様に適した仕組みをたくさん入れ込んでいます #デジリハ #リハビリ #デジタルアート #ubdobe #リハビリテーション #障害児 #ソーシャルイノベーション #医療 #福祉 #理学療法士 #作業療法士 #言語聴覚士 #PT #OT #ST #リハビリツール #放課後等デイサービス #放課後デイ #児童発達支援 #児発 #ゲーミフィケーション #最新リハビリ #特別支援教育 #特別支援学校" デジリハ公式 (デジタルアート×リハビリ) shared a post on Instagram: "\みんな www.instagram.com

※水戸特別支援学校様で開催した体験会の様子

日本特殊教育学会での発表内容について

2022年9月に行われた日本特殊教育学会にて、「自立活動におけるICT(デジリハ)活用の効果と課題ー特別支援学校(肢体不自由)教師に対するインタビュー調査をもとにー」をテーマとし、ポスター発表を行いました。

実際にデジリハを活用している教員4名に対し、インタビュー調査で得られた語りをもとに、カテゴリわけをしたものが以下の表になります。

一部結果の抜粋

なぜ「気づき」が得られやすくなるのか

インタビュー調査の中で、「デジリハを活用する中で”気づき”が得られやすくなった」という語りが観察されました。その要因として、普段1対1で、かつ手作りでピンポイントに課題にアプローチするための教材を用いて行われる指導ではどうしても「指導する側・される側」という関係性になりやすいですね。一方デジリハを活用する場面では、児童生徒は主体的にデジリハに取り組み、教員はそれを客観的に支援・観察することが可能になります。そのような視点の変化が気づきに繋がっているのではと考察しています。

児童生徒に見られた変化

児童生徒側にも気づきが見られました。デジリハをプレイするときにどうしても姿勢が崩れてしまうお子様がいたときに、アプリをクリアするために自ら姿勢を修正する様子などが見られました。
関わっている要因としては、デジリハのシンプルかつゴールが明確であるという「ゲーム性」、ゲームクリアのために必要な「必然性のある身体の動き」、そして児童生徒と教員間に見られた「関わりの変化」があると考えます。

一方で、実際にデジリハを活用したことで漠然としたICTへの期待から、より具体的にアナログ教材とデジタルツールの比較が出来るようになり、既存のアナログ教材を再評価するような語りも見られました。

どんどん質問してみた!

ここからは、ゲストである宮山校長・八柳先生にご回答いただいた質問について一部抜粋してお届けしていきます。

なぜICT・デジタルツールを大活用するようになったのでしょう?

宮山校長)きっかけはやはりコロナでした。私が本校に赴任してすぐ休校というようになって。そのタイミングでzoomでこんなことが出来るよ!という活用方法を紹介いただいたことがあって、みんなでこれ使えるね!となり、4月20日の時点ですでにオンライン授業が出来るようになっていました。すごく勢いがありましたね。訪問教育担当の先生が特にのめり込んで取り組んで、若い教員に限らず幅広い年代の職員が盛り上がっていました。

茨城県立水戸特別支援学校の宮山校長

そこから、継続・発展を続けられたポイントは?

宮山校長)新たに校務分掌を見直して、ICTのプロジェクトチームなどを立ち上げました。八柳先生には「自立活動を思いっきりやってね!」と一任して、そこから部屋を大掃除してあいるーむを立ち上げました。他校の先生にも声をかけたりしながら、出来そうなことを手当たり次第にやっていきました。
八柳先生)私自身はICTなどに明るいわけではなかったのですが、ICT推進チームとの横の連携がうまく出来ました。設定などの立ち上げの部分はICTチームが、そこから先の活用の部分は自立活動のチームがやる、という形で分担出来たのが良かったと感じています。
そもそもICT・デジタルツール活用について、保護者の皆様からのニーズはすごく大きいと感じます。教員側は苦手意識があることもあるし、従来の「お子様の身体にしっかり触れて、お子様が直接物に触れて」というアプローチを大切にしている場合も多いのではないでしょうか。しかしこれからの時代はしっかりとデジタルツールを活用できるようになっていくことが重要だと考えています。

これからの特別支援教育におけるICT・デジタルツール活用に期待するものは?

八柳先生)視線入力装置などの活用が随分身近になってきているなと感じます。身近になるほど抵抗感も減ってくるはずなので、ICT・デジタルツールを遊具の一つのような感覚で、「これをやらなきゃ!!」と息苦しくならずに捉えられるようになると良いと思っています。デジリハ使って一番感じたのは楽しいから子ども達は学ぶし、楽しいから主体的になる。それが教育に繋がるんだということです。「これを使って勉強しなさい!」と硬くなるだけでなく、遊びを入口に教育を広げていけるといいと考えています。

宮山校長)肢体不自由のお子様と接している中で、私たちがどうしても検知しきれない動きというものがあるんですよね。それをデジリハのようなICT・デジタルツールを活用することで「あ、ここ見ているんだ」とか「理解しているんだ」というのが見えるようになるというのも大きなメリットだと感じています。

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