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ゲーム屋人生へのレクイエム 36話
ワイロ天国のブラジルでワイロを断るには国家権力に頼ればいいと知ったころのおはなし
「レアルに両替しなくちゃ」
「レアルってブラジルの通貨でしたよね。ドルじゃだめなんですか?」
「大体のところはドルでオッケーなんだけどレアルじゃないと買い物できない店もあってね。ドルしか持ってないからレアルに両替したいって子会社の社長に言ったらいいところに連れて行くよってね。どこでも両替できるんだけど、その場所は闇の両替屋でいいレートを出すよって。
連れていかれたのはサンパウロにある日本人街、リベルダージという街でね。通りに大きな鳥居と提灯っぽい街灯があって日本みたいなところだったよ。お土産屋が軒を連ねてて観光客も多かったよ。
それで一軒のお土産屋に入ってさ、別にお土産いらないですよって言ったら、ここで両替してくれるって言うのよ。
それで子会社の社長が店の奥に座ってたおばあちゃんに何か一言二言話すとおばあちゃんがすっと立ち上がってさ、おばあちゃんが後ろの商品が並んだ棚をグイって押したのよ。すると棚がくるっと回ってさ、忍者屋敷のどんでん返しみたいに開いたのよ。
こっちこっちって子会社の社長について中に入ったら棚がバタンと閉まってさ。棚の後ろには窓のない部屋があって正面には鉄製の頑丈なドアがあってさ、ドアの上にカメラがあって子会社の社長がカメラに向かって手を振ったらジジジジってドアの電磁ロックが開いてそんで先に進んだのよ。するとドアの向こうは狭い中庭があってその先に鉄格子で囲まれた小さな建物があってさ、それでまたカメラに向かって手を振ると鉄格子の扉が自動的に開いたのよ。先へ進むと今度はその小さな建物のドアにまたカメラ。手を振って顔を確認されたあとようやくドアが開いて建物の中へ入ったよ」
「なんですかそれ。映画みたいな世界ですね」
「そう。なんじゃこのセキュリティって。聞けばブラジルは治安がめちゃくちゃ悪いのでこのくらいしないと危ないって言うのよ。それで中にいかつい兄ちゃんが3人いて、机の上にはドルとレアルの札束がどっさり積んであってさ。いくら両替したいって言われて、1000ドルって言ったら電卓でパチパチ計算してこの額のレアルになるって電卓見せてくれて、オッケーって言って1000ドル渡したらお札を透かしたり紫外線のライトにあてたり虫眼鏡でじっくり調べてからレアルに両替してくれたよ。ドルは偽札が多いから用心して調べるんだってさ。
それで来た道を戻って店の外に出たら、子会社の社長が店の前に立ってる兄ちゃんを見ろっていうのよ。寒くもないのに長いコート着てるから変だなと思ったら、兄ちゃんのコートの下には機関銃が隠されているって言うのよ。店が雇った用心棒だって。スゲーとこに連れてかれたよ」
「そのあとどうしたんですか?」
「近所にあった日本食の店でカレー食って帰った」
「それだけですか?」
「それだけだよ」
「今回はゲームの話が全然ありませんけど」
「まあ、そんな回があってもいいじゃないか。ゆるくやろうや」
続く
*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。