初心者向け!マインドフルネスとは【意味・仕組みを簡単に解説】
まずはじめに、今大流行で、グーグルやアップルが研修に採用しているなどでもてはやされているマインドフルネスは心理学的な側面の強いマインドフルネスです。わたし自身は現在、タイの国立マハチュラルンコーン仏教大学の修士課程で仏教哲学と瞑想の研究をしています。実は心理療法としてのマインドフルネスと、仏教哲学のマインドフルネスはちょっと軸が違います。今日はふたつを比較しながらご紹介したいと思います。
マインドフルネスとは?用語の意味と仕組み解説
マインドフルネスという言葉の意味と語源
マインドフルネスという言葉は英語にもとからあった単語ではありません。上座部仏教典である、パーリー語経典(ティピタカ)を英訳したT.W.Rhyus Davis(T.W.ラス・デイヴィス)がパーリー語のSati(サティ)に当たる英訳が見当たらず、マインドフルネスという造語をあてたことがはじまりです。
*ラス・デイヴィスの訳したパーリー語経典が『Pali Text Society』の翻訳にあたるものです。論文などアカデミックな場でパーリー経典を英文で引用する際は、PTSから引用することがスタンダードです。
Sati(サティ)はサンスクリット語のSmrti(スムルティ)という言葉で、ざっくり訳すと気をつける、記録するという意味ですが、サンスクリット語・パーリー語などのインドの古代言語は時と場所と受け手によってあらゆる奥行を見せる言葉です。きっとラス・デイヴィスはただアウェアネスと訳すには奥が深すぎると感じてマインドフルネスという言葉を作ったのでしょう。ちなみに漢訳では『念』と訳されています。
マインドフルネス(サティ)の意味
マインドフルネスとは、『今ここに意識を留めること』でマインドの習性をマスターすることです。もし今ここに意識を向けなかったら、マインドは常に過去や未来のことをあれこれ詮索して、『今』はほったらかしになってしまう傾向があります。けれど実際は過去と未来はどうにかすることができません。どうにかできるのは現在進行中の『今ここ』だけです。
とは言っても、どうにもならないからこそ、過去と未来が気になってしまうのがマインドの習性です。マインドの習性を知って、おざなりになりがちな『今』に自ら注意を向けていくと、極端な回路で堂々めぐりをしていた思考エネルギーが分散され、バランスがとれてマインド全体の構造が見えてきます。
よく言われる『ジャッジせず、ありのままに見る』とはこのことで、普段は気にならない『今』に目を向けると、気になりすぎていた『過去』や『未来』からズームアウトすることで余裕ができ、起こっている思考や感情を俯瞰することができます。
マインドフルネスとは、過去や未来に夢中なせいでほったらかしになっている今に気づき、意識がマインドの全貌を把握することです。
心理学的マインドフルネスと伝統的マインドフルネス【2つの視点から解説】
心理学的マインドフルネス=瞑想による体や脳に対するの効果や有効性重視
マサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士が提唱したマインドフルネスストレス低減法(MBSR: Mindfulness Based Stress Reduction) が基礎になっています。ジョン・カバット・ジン博士ご本人は、禅やヴィパッサナー瞑想を通して仏教に大変造脂の深い方です。ですが今広く使われているマインドフルネスの概念は、マインドフルネスストレス軽減法を元に、宗教色を一切廃したものであり、ビジネスシーンや教育現場などで一般的に広く受け入れられています。2000年以降は瞑想による体や脳についての効果や有効性が、多くの研究により示されたため、マインドフルネスだけでなく、さまざまな瞑想法がポピュラーなものとなりました。
伝統的なマインドフルネス=今に気づくことで、選択のパターンが変化する
心理学的マインドフルネスと伝統的マインドフルネスの違いは、どちらも仏教瞑想を起源としていますが、ふたつの違いは『目的』です。心理学的マインドフルネスは痛みやストレスを軽減したり、集中力を高めて能力を上げたりと、得られる『効果』が重要視されますが、仏教の目的はマインドがどういうもので、何をしているのか、その正体を知り、真実を悟ることです。今に気づくことで自動運転されている思考・感情の選択パターンが変化し、それによって人生が生きやすい方向へシフトする、と考えるのが仏教のマインドフルネスです。
伝統的なマインドフルネスは生産的ではなく、むしろ清算することが目的です。
マインドフルネスで得られる効果7つ【痛みの軽減・能力アップ・人生好転】
マインドフルネスで得られる効果は前述でもありましたが、心理学的マインドフルネスでは目的とされ、伝統的なマインドフルネスでは心の変化の過程でもたらされる副産物のようなものです。マインドフルネスによる心理学的に立証されている効果は以下のとおりです。
科学的に立証されているマインドフルネスの効果7つ
①集中力が上がる
②ストレスが軽減する
③ミスが少なくなる
④冷静に判断できるようになる
⑤自己肯定感がアップする
⑥感情のアップダウンが少なくなる
⑦抗うつ、不安障害、PTSDの緩和
良いことばかりですね。実は伝統的マインドフルネスでもサティパタナ・スッタという経典の中でマインドフルネスの効果について実は言及している部分があります。そちらも紹介いたします。
ブッダが説いたマインドフルネスの効果7つ
①自分を苦しめる習慣・思考パターンから解放される
②未来への不安や心配がなくなる
③過去への嘆きや後悔がなくなる
④身体的な痛み・不快から解放される
⑤精神的な痛み・不快から解放される
⑥マインドがどういう構造で何をしているのか解る
⑦起こっていることすべてが、マインドによる茶番だと悟る
どちらを好むかはあなたの自由!どちらにしてもマインドフルネスは素晴らしいライフスキルです。次回はマインドフルネスのやり方について解説していきます!
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