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【すべての問題から解放されるたった10秒のマインドフルネス】―ゾンサー・キンツェリンポチェの法話
ここ数日、先週あったゾンサー・キンツェ・リンポチェの台湾での法話を聞いているのですが、ヘッドホンつけたままジャンプしたくなるくらい面白くて(たぶんみなさんそうではないかもしれない)、自分に還る時間をいただいていました。
親愛なるゾンサー・キンツェ・リンポチェ、大好きです。敬意と愛を込めて、今日はその中からぐっと来たところ(ほとんど)をシェアしようと思います。
↑こちら。残念ながら日本語はありません。(字幕機能で字幕がつくのしょうか?)なので今日はこちらの動画のまとめを書いていきます。
アイデンティティ・クライシスは本当に悲劇なのか?
わたしたちをわたしたちたらしめているのは、アイデンティティです。そのアイデンティティは名前、職業、地位、国籍、性別、家族、友人、キャリア、資格などさまざまなコンディションによって保たれています。そのコンディションというものは、基本的にどこかの誰かが作ったものでできていますよね。アイデンティティがそんなにも大切なのはなぜでしょう?
そのアイデンティティがクライシス=崩壊するということが自分を見失うということで、生きている中で最も深刻だということを僕はどこかで聞いたのです。でも近い将来、ボタンひとつで欲しいものが目の前に顕れる世界になると言われていますよね、AIのアルゴリズムですべてが選択される。僕がやらなくても僕の、リンポチェの仕事をAIがやってくれるわけです。そうなってくると人々の問題はアイデンティティをどうするかってことになってくるでしょう。
『わたし』って言うと、一般的に言って体や性別や、さっきも言った国籍、仕事、人種とか、すべて物質的なもので表現されます。でもそれをしているのはマインドなわけです。でもそのマインドに時間やお金やエネルギーを投資する人はほんの一握りで、ほとんどの人がアイデンティティに投資しているわけです。なぜかと言うと何者でもなくなることが怖いから。
物質は置いていくことができても、マインドはどこまでもついてくる
たとえばこのテーブルにはマインドがないから、ここから誰もいなくなって、テーブルがひとりぼっちになっても置いて行かれたと嘆くことはないだろうし、ここにこのテーブルよりも大きなテーブルや細いテーブルを持ってきたとしても、このテーブルが嫉妬に悶えることもない。だけどわたしたちにはマインドがあるから、そういうことが起こるわけです。
たとえば、わたしたちには今ここで自分の指を切り落とす権利があるわけです。ヤクザみたいに。髪だって好きなように切れるし、物質的なものはいくらだって切り捨てようと思えば切り捨てることができるんです。でもね、マインドだけはどこまでもついてくるんだよ。切ろうと思っても、切れない。永久削除しようとしてもできない。
もちろん、究極的には仏教哲学を持ち出してこのテーブルみたいにマインドを持たないという選択もできるんだけれど、一般的にはそうはいかないわけです。マインドを持ち歩くということは時に痛々しく、苦しいことです。だけど、その正体を知って、使い方がわかってくると、マインドは宝石のように美しいものにもなりうるわけです。
でもマインドは混乱するもの。そもそも問題というものには確かな土台がないのに、それを土台があると混乱していることから問題が発展するわけです。たとえば夜の暗がりの中に落ちていたヒモを蛇だと思ったら、怖いでしょう?でも蛇なんかどこにもいないわけです。あるのは蛇が怖いということだけ。ではこの怖い感覚はどこから来るのかというと、縁起…と言っていまうのは簡単なのですが、そうすると説明が長くなるので、ここでは習慣ということにしておきましょう。習慣がマインドをコンディショニングしていると思ってください。
そもそもわたしたちは自分がここに存在するというコンディションを習慣的に受け入れているわけですが、自分というものがあるかどうかという、基本の基本のところが実はすごく曖昧で、怪しいわけです。
何のために生きているのか?わたしたちの生きる意味
『あなたの人生の目的は何ですか?』『あなにとって人生の意味とは何ですか?』って聞いてくる人はだいたいこのアイデンティティにこだわっています。生きる目的とか、意味とか、価値とか、そういうのは仕事、地位、資格、に価値を置いていると起こる衝動です。仏教哲学ではあまり問題にされない点です。なぜかというと、『この「わたし」というものは何だろう?』ということに焦点があるので、何になるかという目的にはあまり興味がないわけです。
何者でもなくなることがアイデンティティの崩壊(クライシス)で、それが最も避けるべきことだと思っているのですよね。それは何者でもなくなることが怖いからです。だから一時的にでもそのルールや価値に当てはまるがために、Tik Tokが人気があるんですよ!Tik Tokだけじゃなくて、インスタグラムとか、すべてのSNSはそういう作用がある。ひとりぼっちになって、何者でもない自分になることを一時的に避けて『生きる意味』とか『生きる目的』をくれるからね。
でもそういうものが一番マインドの中に自分で入りこんでいく行為ですよね。それで混乱する。それで恐怖が生まれる。じゃあどうやったらノーマルになるかって言うと…(今日のお題は『ノーマルに帰る』です)
何かになる目的での「生きるや価値や意味」を忘れることだね。10秒でいいから、それを忘れるとマインドの混乱を小さくできるよ。
わたしたちのマインドは冷凍庫で凍っている
あなたのマインドは水みたいなものだよ。今その水は凍っている。なぜかというと、冷凍庫の冷却ファンが高速回転しているからだよ。そしてあなたは常に高速回転を保つように気をつけているわけです。そうやって凍らせて、マインドをアブノーマルな状態に自分でしてる。
10秒でいいと言っているように、そんな長い間でなくていいので、その冷却ファンを止めてみませんか。今やってごらん。ただ今この瞬間に一体何が起こっているのかに目を向ける、それだけ…。
もっとマインドのことが知りたくなった?そしたらこの方法が一番いい。すべてのストレスから解放されたい?そしたらこの方法がいい。よりよい人生を生きたい?うん、10秒でいいからこれをするといい。するとあなたは『良き人』になれるでしょう。でもあなたが欲しがっているものは全部オマケみたいなものだよ。アメリカのお店でよくあるでしょう?これ買ったらオマケでこれもついてきますよ、みたいな。あれですよ、あれ。
わたしたちが持っている宝物に10秒だけでも目を向ける
すごくシンプルでしょう?経典を暗記しろとか言わないし、戒律を守れとも言ってないわけです。最近の人は戒律は自由を奪うものだと思ってものすごく嫌がるからね。信仰深くなれとも言ってないでしょう?そういうのもいやがるから。ただ僕が言いたいのは、あなたが持っている宝物に気付いたらどうかって提案をしているだけです。宝物は体でも家でも仕事でも家族でもなくて、このあなたが持っている認識できるという能力、すなわちマインドのことです。それを『あなた』自身だと呼んでもいいかもしれませんね。
マインドに目を向けてみてください。あなたたちはそこに時間を費やしてこなかった。わたしたちは持っている時間もお金もエネルギーもすべてを他のことに投資して、ここには全く費やしてこなかったわけですよ!何とバカらしい。
これがあなたの持っているものの中で最強で、一番美しいものであるにも関わらず、無視されているわけだ。僕は別に背筋をピンと伸ばして、瞑想しなさいなんて言ってないんだよ、僕がこうやってジャケットのボタンを留めている間だけでいい。ただここにいるってことをしてごらん。
(そしてジャケットのボタンを留めるリンポチェ)
どうだった?僕はちょっと失敗した!というのもボタンが閉まらなくて、お腹が出てるって思われるかなって思考がよぎったから…。もう一回やり直していい?今度はボタンを外していくからね(笑)
(そしてジャケットのボタンを外すリンポチェ)
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ゾンサー・キンツェ・リンポチェ
ゾンサー・キンツェ(キンツェ・ノルブ):1961年ティンレー・ノルブの長男としてブータンに生まれ、7歳のときサキャ派のジャムヤン・キンツェの転生児とされる。主にディルゴ・キンツェに師事し、シッキムで僧侶としての教育を受けたのち、ロンドン大学で西洋的な教養も身に着ける。アートへの関心が深く、監督として映画製作も手掛ける。著書には『What makes you not Buddhist?』など多数。その他スートラの翻訳協会である『84000』や、仏教教育に関する奨学機関である『Khyentse Foundation』など幅広い活動と、オープンマインドでユーモアたっぷりの人柄で知られている。
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