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内→外ブランディング戦略のPURPOSE: Harvard Business Review 2019.03

前回のアジア旅行のまとめで『共感』が大事、ということを書きましたが、ビジネスの中でユーザーが共感をしてくれるのは製品やサービスではなく、その先にある提供者側に対してです。

それは「あの会社いいことやってるから頑張ってほしい」とか「あの会社で働いている人たち楽しそうだよね」といった、企業ブランディング社内組織の文化に注目されていることを意味しますが、このことを象徴する言葉として『パーパス(日本語訳はたぶん存在意義)』という概念があり、雑誌・ハーバードビジネスレビュー2019年3月号が特集しています。

なので、今回はそれをテーマに取り上げてみます。

Harvard Business Review 2019.3
ダイヤモンド社 2019.

雑誌なので(といっても論文集に近い感じだけど)何人かの著者が、1つのテーマに対してそれぞれ異なる角度から論じていますが、中でもパーパスの概念が理解しやすいと思った2つ、言葉の定義についてと組織づくりのための8ステップの考え方を紹介します。

パーパスの定義と位置づけ

1つ目は、前にも何度か紹介したBIOTOPE・佐宗さんの論文です。それぞれの言葉の定義、従来型との比較による差異、実効メソッドについて具体的に解説されています。

まず言葉の定義です。経営層が掲げるミッション・ビジョン・バリューが混在しがちなこの3つを次のように整理してます。

・ミッション:求心力を高めるもの=存在意義を示す
・ビジョン:人を動かすもの=理想の状態を示す
・バリュー:組織文化をつくるもの=共感する価値観を示す

その中でパーパスとはミッションに近い位置づけになるけど、ミッションが向かうベクトルは2種類あるということです。整理するとこうなります。

・パーパス:に向けられた指針
・アイデンティティ:に向けられた指針

なので、パーパスとは外(にいるステークホルダーやユーザー)に伝える=発信する行動を起こす必要があります。

次にこれが20世紀型と21世紀型でどう変わるかについてを比較すると

・20世紀型:自社(効率性のため) → 外部(競争優位のため)
・21世紀型:自社(なぜを問う) → 外部(関係者と共創の関係を築く)

という違いになります。20世紀型のパーパスは自社の論理で高収益を目的にしているので、ユーザーから共感を得るものではないことが分かります。

これを実効するために佐宗さんは『パーパス・ブランディング』の手法を3つのフェーズと10のアイテムで整理しています

Phase1. 思想をデザインする
Phase2. コミュニティをデザインする
Phase3. 習慣をデザインする

1から3のフェーズは内→外の流れになっています。このあたりは本書を読んだり、予算のある人はBIOTOPEに業務委託の相談をするとより深い理解が得られるのではないかと思います。(まわしものではありません)

パーパスを定着させるための8ステップ

ビジョンやパーパスといった大きな理想の概念は、スローガンに使うだけで相手に響かなかったり定着しなかったりしがちです。

ロバート E. クイン氏とアンジャン V. セイカー氏による "Creating a Purpose Driven Organization" ではどういったプロセスを経て定着させるかという、実践的な内容を8つのステップにまとめています。

1. 触発された従業員の姿を想像する
2.パーパスを見つけ出す
3.根拠の必要性を認識する
4.信頼できるメッセージを一貫性のあるメッセージに変換する
5.個人の学びを推奨する
6.中間管理職をパーパス主導のリーダーに変える
7.従業員をパーパスに結びつける
8.ポジティブ・エナジャイザーを活躍させる

これも内→外にだんだん広げている流れですね。前の記事でも書きましたが、マーケティング業界でもデザイン業界でも、外起点派と内起点派の両方があります。一例をあげると

マーケティング
・外起点:5 Force(自社を取り巻く周辺を分析し戦略を考える)
・内起点:VRIO(自社の資産に注目して市場で優位となる戦略につなげる)
デザイン
・外起点:デザイン思考(ユーザーの観察からヒントを得る)
・内起点:意味のイノベーション(深い考察から概念を再定義する)

最近の流れは内→外の内起点です。そしてパーパスも内起点であることは間違いないようです。

だけど、パーパスは内で終わらせるのではなく、外に向けて伝えたり行動を起こすことが目的なので、結果が重視されます。その結果が持たられるのは企業の信頼性や親しみであり、パーパスは21世紀型のブランディング戦略の1つだと捉えることができます。

20世紀のブランディングは、セグメントを確立させるために、高価格の商品をデザインしたり、C.Iによるイメージの一貫性をつくることに注力をしていました。どちらかというと外観的なことが主です。

対して21世紀のブランディングは、組織の中の人の想いや動機に焦点をあててメッセージを発信していくという、中身に注力した戦略だといえます。

内視点と外視点は両方大切

僕はデザインに携わる仕事をしていますが、例えば上にあげた『デザイン思考』と『意味のイノベーション』は二律背反の関係で、両方大切な考え方だと思っています。

それと同じように、ブランディングを考えるときにもどちらか一方では片手落ちだと思っています。起点は内からというパーパスの考え方は全面的に賛成ですが、アウトプットするにはやっぱり見え方としてのデザインや市場の中でどういったスタンスを示せるのか、という視点も欠かせません。(誤解ないようにいうと、上に紹介した2つの記事は外に向けての表現の大切さも論じています)

デザインストラテジーの取組みでは多くの場合ブランディングも関わってきますが、見た目のアウトプットとしてのデザインだけでもダメ、優位性をつくるためのストラテジーだけでもダメ。ということで、スターウォーズの物語にジェダイとダースベイダーの両方がいて魅力が成立するように、やっぱり二律背反を両立させる関係性が大事だなと思った次第です。

次回はより外に向けての働きかけに関する本をご紹介します。


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ジマタロ
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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