【文化財紹介】赤レンガの洋館 〜旧大阪教育生命保険ビル〜
【2024年5月1日/大阪歴史倶楽部】
大阪歴史倶楽部です。今月は大阪市中央区高麗橋にあります、明治の最後の年(明治45年すなわち大正初年/1912年)に建てられた赤レンガ造りのハイカラな洋館「旧大阪教育生命保険ビル」(または旧日本教育生命保険ビル)をご紹介いたします。
大阪教育生命保険とは
大阪教育生命保険は、1896(明治29)年に設立された日本教育保険を前身とし、1900(明治33)年に日本教育生命保険と改称しました。その後1948(昭和23)年に解散して大正生命保険に包括されました。
大阪教育生命保険は、上記の日本教育生命保険と同一または関連会社と考えられていますが、資料が残っておらず詳しいことは分からないようです。
旧大阪教育生命保険ビル
今回ご紹介する旧大阪教育生命保険ビルは、1912(明治45)年に大阪教育生命保険の社屋として建てられました。
設計者は「建築の神様」と呼ばれる辰野金吾氏。東京駅や大阪市中央公会堂などと同じく、外壁が赤レンガ積みで花崗岩などによる白い帯が入るという、典型的な「辰野式」の建築です。
この建物は大阪教育生命保険の社屋として建築されましたが、その後、大正生命保険、大中証券本社ビルとして使用され、2002年にフレンチレストラン、2008年〜2021年までは結婚式場として利用されていました。現在は厳重な管理のもとでこの建物は閉鎖されています。
なお、大中証券本社ビルの頃までは内部も建築当初の状態をほぼ留めていたようですが、その後2002年にフレンチレストランとしてオープンした際、内部については造りかえられたようです。
外観の写真
以下は旧大阪教育生命保険ビルの外観の写真です(2024年4月 大阪歴史倶楽部 撮影)。
建物の特徴
旧大阪教育生命保険ビルは、辰野金吾氏による設計の赤レンガ造り地上2階建てで、北西角部分を玄関としています。この玄関部分には装飾が施されています。
なお、この玄関の上部は建築当初は尖った屋根を持つ塔(尖塔)のようなデザインでしたが、早い段階(1930年代頃)にはすでに現在のような形状に造りかえられていたようです。
建物北側の道路に面した屋根上には小さな屋根付き窓(ドーマーウィンドウ)が4つ配置されています。また北東角には基底部にアカンサスのような文様の装飾が付いた煙突が設けられています。
旧大阪教育生命保険ビルへの行き方
旧大阪教育生命保険ビルへは、大阪メトロ堺筋線または京阪電車の「北浜」駅6号出口から北西へ約300m(徒歩約3分)です。
行き方の目安は簡単です。「北浜」駅6号出口を出て、堺筋沿いに北へ30mほど歩くと「高麗橋」という交差点があります。
その「高麗橋」交差点を左折し、真っ直ぐ西へ250mほど行くと美しい赤レンガ造りの旧大阪教育生命保険ビルが建っています。
おわりに
今回ご紹介した旧大阪教育生命保険ビルは、東京駅や大阪市中央公会堂などを手掛けた辰野金吾氏の設計による美しい赤レンガ造りの洋館です。
大阪市中央公会堂などとともに、大正時代の後半から昭和初期にかけて大阪市が空前の繁栄を遂げた「大大阪時代」の幕開けを告げるにふさわしい、華麗な建物だと思います。
この建物は、かつて大阪教育生命保険の社屋として建てられ、その後に証券会社社屋、フレンチレストラン、結婚式場などと紆余曲折を経ました。
戦時中の大阪大空襲からも奇跡的にまぬがれて波乱の歴史とともに110年以上もの間、その美しい姿を伝えています。
なお、この旧大阪教育生命保険ビルの建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さんや周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願いいたします。
また許可なく他の人の敷地内へは入ったりしないようお願いいたします。
この建物は現在、厳重な管理のもとで閉鎖されています。建物内部には絶対に入らないようお願いいたします。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
【参考にした資料】
◎『本邦生命保険業史』保険銀行時報社 1933年
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎『日本の保険の歴史』スイス再保険会社(Swiss Re Corporate)2013年
◎西山雄大「明治35年提出の「営繕局」設置構想について」日本建築学会技術報告集28 2022年
◎「辰野金吾」『大阪文化財ナビ』大阪府建築士会 2023年版(WEB版)
◎「高麗橋ビルディング」『船場navi』船場倶楽部・集英地域活動協議会 2024年版(WEB版)
◎「オペラ・ドメーヌ高麗橋」『建築パース.com』メガソフト株式会社 2024年版(WEB版)
(『大阪歴史倶楽部』第3巻 第5 通巻25号 2024年5月1日)
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※次号は2024年6月1日に投稿する予定です。