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生き物としての自然体とトレーニング:本来の動きを取り戻すということ

私たちは生き物として、もともと「自然体」で生きる存在でした。しかし、現代の生活環境では、意識しなければ本来の自然な姿勢や動作を維持することが難しくなっています。

デスクワークの長時間化、移動の機械化、便利すぎる生活環境は、人間の身体を本来の動きから遠ざけてしまう要因となっています。

では、「自然体」とは何か?
これは単にリラックスしている状態ではなく、むしろ、「必要なときに適切な力を発揮し、不要な力は抜けている状態」、つまり「適切な緊張と脱力のバランスが取れている状態」を指します。

そこで今回は、「生き物としての自然体」と「トレーニングを通じた自然体」の双方の観点から、このテーマを掘り下げていきます。

1. 生き物としての自然体とは何か?

1-1. 野生動物に学ぶ自然体

私たちが「自然体」という言葉を聞いたとき、まず思い浮かべるのはリラックスした姿勢かもしれません。
しかし、野生動物を観察すると、彼らの「自然体」は単なる脱力ではないことが分かると思います。

例えば、ジャガーが木の上で休んでいる姿を思い浮かべてほしい。リラックスしているように見えますが、必要なときには一瞬で跳びかかれる準備ができています。
この状態こそが「自然体」です。

無駄に力んでいないが、必要な動きはスムーズに行える状態。

また、チーターの走りを考えてみると、「力強さ」と「しなやかさ」が見事に融合しているように思えます。全身を脱力しつつも、瞬時に筋肉を動員できるバランスが取れている。これは、トレーニングを考える上でも示唆に富むポイントとなります。

1-2. 人間はなぜ自然体を忘れたのか?

人間もまた、もともとはこのような「適切な力の使い方」を備えていました。しかし、文明の発展とともに、身体の使い方が変化してしまったのです。

・長時間の座り仕事 → 股関節が固まる
・靴文化の発達 → 足裏の感覚が鈍り、歩き方が変わる
・運動不足 → 本来の可動域(関節の動く範囲)が狭くなる


この結果、多くの人は「力みすぎる」か「脱力しすぎる」かのどちらかに偏ってしまっているのです。つまり、「生き物としての自然体」から遠ざかってしまっているということです。

2. トレーニングを通じて自然体を取り戻す

では、私たちはどのようにして「本来の自然体」を取り戻すことができるのか? ここでカギとなるのが、「トレーニングの質」です。

2-1. トレーニングを継続すると脱力ができるようになる

一般的に、トレーニングと聞くと「筋力をつけること」が目的だと考えがちです。しかし、本当に重要なのは、「適切な力の入れ方と抜き方を学ぶこと」。

例えば、初心者がスクワットをすると、最初は全身がガチガチに力んでしまうことがほとんどです。しかし、経験を積むと、「どこに力を入れ、どこを脱力すればよいのか」が分かるようになってきます。

・体幹(腹筋や背筋)は適度に緊張させる
・しかし、肩や首、余計な部分には力を入れない
・動作の流れをスムーズにすることで、効率的に動ける

などといった、この「力の適切な配分」を学ぶことで、無駄なエネルギー消費を抑えつつ、より強くしなやかに動けるようになる。これは、まさに野生動物が持つ「自然体」と同じ原理だと考えられます。

2-2. 軸を意識しながら自由に動く

「自然体」とは、単に脱力することではなく、「軸がありながら自由に動けること」でもあります。

例えば、柔道や武道の達人は、決してガチガチに力んでいない。しかし、身体の中心(体幹)はしっかり安定しているため、相手の力を受け流しつつ、自在に動くことができる。
これをトレーニングに活かすためには、次のような方法が考えられます。

・地面とのつながりを意識する(裸足でのトレーニング、バランス感覚を養う)
・動的なトレーニングを増やす(アニマルフロー、ナチュラルムーブメント)
・脱力と緊張のバランスを学ぶ(武道的なトレーニング、呼吸法)

3. 自然体とは「最適化された動き」である

ここまでの内容をまとめると、自然体とは以下のように定義できます。

・必要な部分には力を入れ、不要な部分は脱力する
・どの方向にもスムーズに動ける準備ができている
・軸がしっかりしているが、柔軟性も失われていない

つまり、「生き物としての自然体」と「トレーニングによる自然体」は表裏一体であり、トレーニングを通じて失われた身体感覚を取り戻すことが、本来の「自然体」へとつながってくるのです。

4. 結論:トレーニングとは「本来の身体の使い方を思い出すこと」

トレーニングの本質は、単に筋肉を鍛えることではない。むしろ、「自分の身体をどう動かせば最適なのか」を学ぶプロセスと言えるでしょう。
そして、その最適な動きの先にあるのが「自然体」です。

野生動物のように、必要なときに瞬時に動けるしなやかさ
武道の達人のように、最小限の力で最大限の効果を発揮する技術
現代人が失った「無理のない動き方」を取り戻す感覚

こうした視点を持ちながらトレーニングに取り組むことで、私たちは「生き物としての自然体」により近づくことができるのではないでしょうか。

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