#69 年の始まりについての愛を語る
車を運転している際に、ふとした拍子でColdplayの「Viva La Vida(美しき生命」が流れている。どこからかカーン、カーンと涼しげな鐘の音が鳴るのが聞こえる。新しい命が産声を上げる。新しい年が始まった。信じるべき言葉に耳を寄せて、その響きをゆっくりと噛み締めるように聞こうとする。
心がこう、高鳴るようなシンバルの音のように脈打つのが聞こえる。そういえば昔、ドイツでひとり年越しをしたことがあった。若者たちが、そこらじゅうで花火を打ち上げている。古い要塞が立ち並び、言葉にならない言葉を若者たちは叫んでいる。何かから、逃れるように。
遥か彼方に、一番星が輝いていて、流れ星が一つ落つる。
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明けまして、おめでとうございます。グッバイ2022年、ハロー2023年。私はこの記事を火照る体でぼんやりとした頭で書いている。年明け早々、どうもちょっと体がだるいなと思っていたら、熱を測ると微熱があった。37.4℃だった。試しにPCR検査をしたら陰性だった。ふぅと一息。後輩がコロナに罹り、とても大変だったという話を聞いてビクビクしていたのだ。
とはいえ、多少なりとも熱があるのでだるいことに変わりはない。少し体がキシキシする。カレーを食べるようになってから、とんと病気らしい病気になったことがなかったので、ちょっと自分でもびっくりしている。友人たちと年越しをしたら、気がつけば私は寝てしまっていて、新しい年になる瞬間を見逃した。年末は、ネトフリでM-1グランプリを見て、鍋をつつき、お酒を飲んだ。
年末同じ時期になると、大体高校や中学やらの同窓会があり、細々とながらもこうして気の置けない友人たちと集まることができるのは幸せなことだと思った。不思議とふわふわした夜で、ネオンライトがまるで万華鏡のようにキラキラと輝いていた。
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改めて2022年、仲良くしてくださった方々ありがとうございました。よく年末になると芸能人やら一般人やらが「今年一年を振り返ったらどんな年だったかを一字で表してください」というインタビューをされているけれど、もし私がインタビューを受ける機会があったなら「怠」という字にしたと思う。わからないけれど、他の年に比べるとちょっと色々消極的だった様な気がする。
仕事でもプライベートでも新しい経験や知識を身に付けることは行なっているのだけど、どこか停滞してしまったような感覚がある。本当は「#愛について語ること」シリーズも、当初の計画だと半年くらいで100話書き終える予定だったのに、ハッとした時にはもうすでに、年末の神様がそこまで近づいてきていて、「もうすぐ今年も終わりじゃからノゥ」とニコニコしながら、新しい年へ誘いをしている。
「乗り遅れない様にしないと!」と思ったけれど、後に残すものがほとんどない。少し休憩したい時期だったのかもしれない。それから新しい神様がぴょんぴょんと飛び跳ねながらやってくる。「今年は気張っていこう」とウサギの姿をした神様は言う。「飛躍の年だよ」
そんなふうに助言をしてもらったにも関わらず、私は友人たちと年を越した後、実家に帰って、おせちをつつきながらグダッとしている。それからずーっと将棋のアプリでゲームをしていた。将棋は強さによって階級があり、ある一定の勝ち星を上げると次の級へ繰り上がる。年末ギリギリのタイミングで3級へと昇級するはずだったのだが、あと一歩のところで連敗を喫し、いまだに4級。悔しくて、ひたすらパチパチと将棋を打っていたらあっという間に深夜2時。
あれ、こんなはずじゃなかったんだけどな。たぶん、将棋の打ちすぎで普段使わない頭を使ったもんだから熱が出たんだと勝手に解釈している。全くもって何をしているのか。
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というわけでようやく将棋の呪縛から放たれ(結局何回やっても昇級できなかった)、今年初の文章を書いている。いわゆる書き初め。とりあえず最近の学びは、お笑いがいかに緻密なストーリーテリングによって構成されており、それが小説にも活かすことができるのではないかということと、丈夫だと思っていた自分の体は意外と脆かったという幻想に似た諦めの気持ちに気がついたこと、年末に食べるカレーは意外と悪くないということ。
今年はどんな年になるだろう。将棋を打ち続けて朦朧とした頭でカーテンを開ける。少し寒気がする。空気が冷たくて、息が白い。親が買ってきたおせち料理のご相伴に預かっていると、「なんでおせちはこんなにも冷たいのだろうね」と言って、温め直している。暖かさに、飢えている。
今描きたい小説がある、撮りたい写真がある、雑誌も友人と最後まで完成させる。今年こそは海外へ行く、統計検定2級を取得する。夜間の調理師学校に行くことを検討する。noteも負担にならない程度に書き続けて、「#愛について語ること」シリーズも最後までおえる。(企画にご参加いただいた方の中で、まだ紹介させていただいてないものがありすいません!最終回までにご紹介させていただきます。)
「やらなければならない」というものを極力減らして、自分が「やりたいこと」を優先的にやろうと思った。文章も、写真も統べからく気持ちが乗っていないと、見た人の気持ちを惹きつけない。全ての中途半端な出来事とはおさらばして、少しでも前に進む努力をしよう。
貪欲に生きる。とりあえず、今年の目標。きちんと目の前の物事と向き合う。こういうのって大体書いて満足しちゃうパターンがあるので、きちんと年末になった時に自分が立てた計画に対してどれだけ達成できたかを比較するようにしよう。
皆様、寒さが一層厳しい時期ですので、どうか心穏やかにお過ごしください。今年は積極的にいろんな人たちと関われる年になりますように。
故にわたしは真摯に愛を語る
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