『ファスト教養』を読んで〜新NISAブームとの親和性〜
『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(レジー著)を読んで
『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』が売れたので、それに便乗した本かと思いきや、さらにそれを深掘りし、映画だけでなく、ビジネスと教養との関係を中心に、現代社会における“ファスト”の概念を説いている。
また、「どうすべきか?」も、わりと明確に提示されており、『映画を早送り~』を読んだ者としても、大変読みごたえのある一冊だった。
個人的にとても響いたのは、“公共との乖離”について。
ここ最近、ネットやTVニュースなどで新NISA(資産形成)が話題となっているが、これも一種の“ライフハック”みたいなもので、「やらない者は知らないよ」という自己責任の世界ではないか。そこに“公共との乖離”はないか。
NISAのメリットを享受しようと学ぶ姿勢には、「自分さえよければ」という自分視点が軸にあり、他方、「NISAを活用しない者」への視点が抜けてしまっている。「NISAを始めよう」といった謳い文句には、紛れもなく“ファスト”を感じさせる。
ちなみに本書は、固有名詞、具体的な人名が複数出てくる。そのほとんどが否定的に書かれており、「おいおい、こんなふうに書いてしまって大丈夫か」とやや心配になるような、攻めた内容である(最後のほうで焼け石に水程度のフォローがなされているが…)。普段、SNSやYouTubeで情報を得ている人なら、誰もが知っているような話なので、イメージがしやすい。
また、著者のボキャブラリーの豊富さを最大に駆使して書かれているのが印象的で、同じような表現を繰り返さないので、読んでいて飽きが来ない。
最後に。
私にとって教養とは、自分の内面とむきあうこと。好きがベースにあること。それが結果的に、いつかどこかで役立つことがあること。そんなものである。
いやぁ、読んでよかったです。