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『地面師たち』を絶賛する人が見落としている、アレなとこ【前編】「ハリソン山中は、地面師に向いてない!?」

 いま、日本のエンタメ作品の中で「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュな」Netflixドラマ『地面師たち』

 豪華キャスト陣と、実際に起きた積水ハウス地面師詐欺事件を基に練られた重厚なストーリー。Netflixだからこそ描けるバイオレンスと性描写が織りなす極上エンタメの結晶。

 フィルマークスなどの動画コンテンツ評価サイトや、各SNSでも概ね「おもしろい!」という評価が成されている。

 僕も、配信前のトレイラーの雰囲気や、キャスティングの豪華さから伝わる重厚感から「このビッグウェーブに乗り遅れまい!」と、配信開始日に第一話を鑑賞、翌日には全話イッキ見してしまった!

 のだが……。

 このドラマ、話数を増すごとに「んんん?」という感じになり、最終話に至ったところで「これは……アレですね……」という何とも言えない心情に到達致したので、今回はその想いを供養させて頂きたく、この記事を書いておる次第であります。

 とはいえ、書き始めるとその内容の長さに、自分でも引いてしまったので、今回は第一弾と称して、このドラマの最重要人物である、豊川悦司こと“トヨエツ”扮するハリソン山中について、忖度ゼロの誰かに怒られるスタイルで語っていこうと思う。

 言うなれば『純粋ハリソン批判』とでも言えようか(はい、またカント『純粋理性批判』のパクリです)。

 もちろんネタバレ有りですし、後半からは有料記事になっておりますので、目次を見られて、ご興味の湧いた方はご購入下さい。

 また今回の記事は『地面師たち』の作劇、内容に関して少々 バカにする 批判的な部分も多々ありますので、有料部分を切り抜いたり、内容をnote外へ露呈させる行為を固く禁じます(※SNS上での引用ポストにおける感想の明記、および拡散は構いません)。その点に同意された方のみ、この記事のご購入を(=共犯者となることを了承したこととします)お願い致します。

 あ! その前に、これだけは声を大にして言いたいのですが、役者様の演技は、皆さん最高でした!


ハリソン山中は『ダイハード』を見誤り、おまけに滑っている

 『地面師たち』について、エンタメライターや映画系Youtuber(僕もだが)的な人が、いろいろ語っているが、その多くの主張の中に、「今作最大の魅力は、ハリソン山中というキャラクターであることが挙げられる」という主張がある。

 語学堪能、冷静沈着、常に紳士的な振る舞いで、酒や高級料理にも造詣が深い。そんな教養溢れる人物が、地面師詐欺完遂のために何人もの仕事人を囲い、何億もの準備金を運用し、そしてその犯行が誰にもバレぬよう、関係者を"片付ける"という徹底したプロフェッショナルぶり。
 またさらに、彼自身のサイコパス的な猟奇趣味が、キャラクターデザインとして上手く機能している。彼のカリスマ性がドラマの中心に、大きな芯として存在しているからこそ、このドラマは「面白い」のだ。

 という意見が、圧倒的に多い。

ほ……本当か?

 このハリソン山中という人物。僕の目線からは、結構バカに見えてしまった。よってそのバカさに勘付かない、勘付いていても対処しない周囲の"愉快な"地面師仲間もバカに見えてきてしまい「この地面師チーム、ほんまに大丈夫か?」と、疑念が頭を支配してしまった(これに関しては後日、第二弾として記事化します)。

 さて、今回はそのハリソン山中なる人物を、バカにする深堀りしていくのであるが、まず始めにハリソン山中曰く、地面師詐欺を行う最大の目的は「己の快楽を追求するため」なのだそうだ。

「誰もが怖気づいて、二の足を踏むような、難攻不落のヤマを落としてこそ、どんな快楽も及ばない ―中略― エクスタシーとスリルが味わえる」(第1話、ハリソンの台詞より)

 このセリフは、ハリソンが「私は、ただ金の為に詐欺をする、下賤な犯罪者ではなく、生の喜びを探求するという崇高な理念でやっているのだ!」という主張を、仲間の前で高らかに演説するものであるが、しかしハリソンはその仲間にも伝えられない、秘めた快楽の追及を求めていることが劇中で明かされる。

 それは「人間が死ぬ瞬間の様子を観察すること」であり、そこから彼は、人間の本質だとか、命に対する哲学的な思考を深めるようなキャラ造形が成されている。

 ここでハリソン流、地面師詐欺の手口と快楽追及プロセスを、簡単に説明する。

 ターゲットになりそうな土地を見つける→徹底した下調べ→土地の持ち主になりすます替え玉オーディション開催→土地を買いそうな建設会社と接触→用意した替え玉と地面師チームで売買契約→替え玉にギャラを渡し解放→しかし、ハリソンの雇った殺人外人部隊が替え玉の人物を、口封じに殺害(ここからハリソンのオ〇ニータイム、以下:ハリニー)→殺人外人部隊は、替え玉を殺す際、スナッフ殺人フィルムを撮影する→彼らが撮影したスナッフフィルムを(わざわざ)スクリーンで鑑賞し、ようやく悦に浸るハリソン。(※ここで重要なワードは「ハリニー」である。忘れないでほしい)

 といった具合である。

 ちょっと待て!
 そしてこのドラマを観た人たち、もう一度冷静に考えてほしい。

スナッフフィルム収集のために地面師詐欺をするのは、非常に回りくどくないか? そして自作スナッフフィルムを観賞することが、崇高なことだろうか?

 先に述べておくが、劇中でハリソンがスナッフフィルム制作に対し、崇高な理念を語るシーンはない(秘めたる趣味なので)。しかし、ハリソンの一挙手一投足が、自意識の「崇高さ」を物語っている。

 例えば第4話にて、ハリソンが映画『ダイハード』の悪役、ハンス・グルーバ―(故アラン・リックマン)について、主人公の辻本(綾野剛)に語るシーン。

 ハリソンの態度はまさに「私は人間の本質を、死を通して見定める観測者であり、その行いは常人から理解し得ぬほどに崇高なのだ」と言わんばかりの酔狂ぶり(彼はいつも、自分に酔っているが)で、その匂い立つナルシズムから、慢心が駄々洩れである。

 細かい話だが、ハリソンは『ダイハード』をちゃんと観れていない。なぜなら……

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