記者発表レポ【前編】ラボの開設で加速する細菌叢プラットフォーム
2022年6月14日(火)にサイキンソーは東京都江東区新木場にあるオフィスビル「三井リンクラボ新木場1」で記者発表を開催しました。
サイキンソーは、自宅でできる腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」シリーズを開発・提供しています。便に含まれる腸内細菌のDNAを解析し、菌の種類と割合を検出。独自のアルゴリズムによって腸内環境の良し悪しを判定し、食生活や運動習慣などの改善アドバイスをレポートとして提供することでヘルスケアに貢献しています。
2015年のサービス提供開始以来、マイキンソーの利用者数は年々増加しています。
それにあたって、DNA解析のキャパシティを拡大すべく、会場である三井リンクラボ新木場1に新たなラボを「サイキンソー新木場ラボ」として開設しました。
そこで私たちは、新しいラボを世間にお披露目するとともに、今回の設備投資によって加速する事業戦略を発信すべく、記者発表を開催しました。
この記事では、記者発表当日の様子とサイキンソーの事業戦略について紹介いたします。
前編ではサイキンソー代表取締役 CEO 沢井のプレゼンテーションと新木場ラボツアーを、後編では弊社特別顧問で一般財団法人辨野腸内フローラ研究所 理事長 辨野義己先生の講演の様子をお届けします。
サイキンソーのこれまで
サイキンソーは「細菌叢で人々を健康に」を企業理念に掲げています。
誰もが「細菌叢」にアクセスできるようにし、「細菌叢」による予防や治療の基盤をつくることを目的としています。
では、細菌叢とは何でしょうか。
私たちの腸内には約100兆個、1,000種類もの細菌が棲みついており、この微生物群を腸内細菌叢(もしくは、腸内フローラ)と呼んでいます。
近年の研究で腸内細菌叢の状態が、腸疾患のみならず循環器系や免疫疾患など、様々な疾患と関連があると言われており、細菌叢の状態から様々な疾患リスクを検知することが期待されています。
腸内細菌叢のバランス(菌の種類や割合)は人によって異なります。
そのため、医療に応用していくには、個人の腸内細菌叢の状態と運動や食事といった生活習慣を掛け合わせたビッグデータが必要となります。
そこで、検査を通じて個人の腸内細菌叢のデータを大規模に収集する現在のマイキンソーの事業モデルが着想され、2014年にサイキンソーが産声を上げました。
次世代シーケンサーの誕生によってDNA解析の生産性が飛躍的に向上したこともあり、国内で初めて16S rRNAをターゲットとした次世代シーケンス法ベースの個人向け腸内フローラ検査 マイキンソーが誕生しました。
マイキンソーは、自宅で便を採取し返信用封筒で投函するだけで簡単に検査ができます。
Amazonで販売をしている他、医療機関で検査を導入したり、食品メーカーや製薬企業のOEMを受託するなど、チャネルも拡大しています。
手軽に検査ができることや、腸内フローラ・腸活への世間的な関心の高まりも追い風となり、2022年4月現在で累計60,000件の検査を実施することができました。
これは国内最大規模の実績です。
この膨大な検査実績とデータをもとに研究活動にも専念しています。企業やアカデミアとの研究支援・共同研究も積極的に行い、自著論文も公開しています。
マイキンソーを通して腸内細菌叢を可視化することでアクセシビリティを高めていく
データサイエンスの力で腸内細菌叢と疾患の関連性を解明し、予防や治療に活かしていく
それによって「細菌叢で人々を健康に」することを目指しています。
創業から約8年。
日本の腸内細菌叢検査のリーディングカンパニーとして、実績を重ねてきました。
これから、さらなる飛躍に向けた事業戦略についてお話します。
事業戦略の2つのテーマ
事業戦略の2つのテーマについて紹介します。
解析キャパシティの拡大
パーソナライズ基盤の整備
解析キャパシティの拡大に関して、腸内細菌叢解析には大きく3つのプロセスがあります。
ウェットラボ工程:お客様から預かった便をシーケンスし、DNAを解析する工程
細菌比率の計算工程:解析結果に基づき細菌種比率を計算する工程
検査結果・リスク判定の計算工程:菌種比率から腸内フローラスコアや各疾患リスクなどを自社開発プログラムでスコアリングする工程
このプロセスのうち、物理的な制約が生じるのがウェットラボ工程です。
大阪大学との共同研究で細菌叢解析に最適化したウェットラボ工程を確立し、実際の解析業務も共同で行っておりました。
しかしながら、検査数は年々増加しており、今後も成長を見込んでいます。そこで解析キャパシティを拡大することで増加する検査ニーズに対応し、納期短縮などのサービス品質向上や研究開発体制の増強のため、サイキンソー新木場ラボを新設しました。これにより一か月あたりの処理能力が2.5倍に拡大しています。
次に、パーソナライズ基盤の整備に関して。
サイキンソーは8月に新サービス「マイキンソーパーソナル(Mykinso Personal)」を立ち上げる予定です(後日正式に詳細をアナウンスします)。
これによって、これまで紙のレポートを提供していた医療機関経由の被検者様にも、オンラインのマイページ上で検査結果を閲覧できるようになります。
フローラ判定や各指標・疾患リスク判定はもちろんのこと、これまで受けた検査の推移も一目で確認できますので、細菌叢のアクセシビリティが高まります。
また、腸活や腸内細菌に関するコラムや管理栄養士が監修するレシピなどのコンテンツを配信します。
マイキンソーを受けた方が検査結果を見て改善項目を把握し、腸や腸内細菌について学びを深めながら日々の腸活も実践していく。マイキンソーの結果推移を確認しながら、常に自分の知識と腸内環境をアップデートしていく喜びの提供を目的としています。
マイキンソーパーソナルは細菌叢ビッグデータのハブとなり、個人(成人)・医療機関・乳幼児の検査結果がマイキンソーパーソナルを経由して自社データベースに蓄積されます。
今後は、健康診断結果など外部の健康データと連携・統合しながら、菌叢データを活用した診療提案や運動・食事といったソリューションをパーソナライズ化して提案することで、予防・治療に活かしてまいります。
サイキンソーのこれから
代表取締役沢井のプレゼンの最後のパートは、今後の事業戦略です。
サイキンソーは、細菌叢をデバイスで取得できない人体のインサイドデータと位置づけます。近年PHRなど、健康に関する個人のデータを収集しヘルスケアに活かしていく動きが盛んですが、細菌叢データは取得障壁が高いからこそ価値があると考えます。
そして、人体のインサイドデータである細菌叢と行動・習慣の関連性を観測・分析し、パーソナライズ化された予防/未病ソリューションを提供していきます。
腸内細菌叢のコンディションが人体の様々な疾患に関連性があることは冒頭で説明した通り。数ある疾患のなかでもサイキンソーは重点分野として「循環器系・代謝系・免疫系」の3つにフォーカスしてまいります。
医療分野での応用に向けて、まずはプロバイオティクスやプレバイオティクスといった日常の食品におけるライフスタイル提案を通した「食」領域への参入を予定しています。今後は、細菌叢データ収集と並行し、ビッグデータから得られる示唆を活かして新サービスも世に出していきます。
この先も、サイキンソーは腸内細菌叢検査を提供していくことでしょう。
しかしながら、数年後は今とは違った姿をしているかもしれません。
現在は検査結果のレポートや結果に基づく生活習慣アドバイスを提供価値としており、国内約10億円規模の細菌叢データヘルスケア市場に位置しています。食領域への参入や医療分野への応用を通して、ゆくゆくは国内6.3兆円規模のセルフヘルスケア市場へ乗り出し、検査企業からソリューション企業へと進化していきます。
サイキンソー新木場ラボ
記者発表の次は、報道関係者にラボの中を案内いたしました。
三井リンクラボ新木場1の607号がサイキンソーの新たなラボとなります。
案内は取締役CSOの竹田が担当しました。
主な設備は下記となります。
サイキンソー新木場ラボの開設によって、処理能力も2.5倍に上がり、これまで一か月あたり4,000検体だったところ、10,000検体の処理が可能になりました。2023 年中に年間 70,000 件、 2024 年中に年間 100,000 件の検査実施を目指します。
最後に
サイキンソーでは「細菌叢で人々を健康に」というミッションを共に実現する仲間を募集しています。
また、以下のフォームからカジュアル面談をお申し込みいただくことが可能ですので、お気軽にお申し込みください。
その他、Twitter(@cykinso) でも相談を受け付けているのでお気軽に DM などでご連絡ください。