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フランスの他にはないすごい才能「夜、すべての血は黒い」

<文学(177歩目)>
ちょっと他にはない「文体」で、読んでいるうちに引き込まれる。驚きの作品です。

夜、すべての血は黒い
ダヴィド・ディオップ (著), 加藤 かおり (翻訳)
早川書房

「177歩目」は、セネガルのダヴィド・ディオップさんの衝撃的な作品。

「ブッカー国際賞受賞、高校生が選ぶゴンクール賞受賞作。フランスで25万部突破。」なる紹介文に関心を持って手に取りました。

「高校生が選ぶゴンクール賞」とは、フランスの高校生2,000人が選ぶ文学賞であり、ゴンクール賞の一部門として1988年に創設された。とあるのですが、実際のところ、どんな文学賞なのか?よくわかっていないのですが、若者が評価している文学作品であること。

そして、「ブッカー国際賞」の今までの受賞作品に「菜食主義者 ハン・ガン(韓江)」があったので、無駄な時間はないと思って手に取りました。

正直なところ、予想以上であり、この作品を翻訳してくれた早川書房さんに感謝。
そして、この本がフランスで25万部突破に、読者層の厚みを感じました。

戦争(第一次世界大戦)文学とのことなのですが、戦争文学としての精度も素晴らしい。
しかし、それ以上にすごい短い作品に凝縮されている。

「……知っている、わかっている、あれはしてはいけないことだった。」「おれ、アルファ・ンディアイは、あのひどく老いた人の息子は、わかっている、あれはしてはいけないことだった。」この出だしは正直なところ、「なんなんだよ!?」と感じました。

翻訳者の加藤かおりさんが、どう表現していいのか?ものすごく考えられたと思う、不思議で独特な文体。この違和感も、10ページも読み進むと、どんどん引き込まれていく。こんな経験は今までありませんでした。

この独特な文体が突いてくるのは「戦争」だけではない。
というよりも、これだけ短い作品の中に、「戦争」「愛」「死」「生」「友情」「家族」「母子」「父子」「アフリカ」「植民地」「民族」「性」「暴力」「狂気」等が濃密に詰まっている。。。

これだけのことが、わずかな文字で心に突いてくる。
読んでいると、文学による「催眠術」をかけられた感覚になります。

わずか数ページの箇所でも、1作品が描けそうな箇所が多い(特に後半)。
でも、この短い数ページで脳にしっかり残る。つまり、「第一次世界大戦」の戦争文学ではない。

フランスで25万部突破ということは、この文学による「催眠術」は25万人がかけられたのだと思う。
他にない、とてもユニークな作品です。

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