苦労と努力、不幸と温情は、すべて生きるため、生きる糧を得るため「父を想う: ある中国作家の自省と回想」
<文学(131歩目)>
閻連科さんの父を思う気持ち、とても伝わる。生きる事が難しかった時代に懸命に生きる家族を描いている。
父を想う: ある中国作家の自省と回想
閻 連科 (著), 飯塚 容 (翻訳)
河出書房新社
「131歩目」は、閻連科さんの自伝に近い郷里と家族を描いた作品です。
「ある瞬間、私はついに理解した。父の世代の生涯における苦労と努力、不幸と温情は、すべて生きるため、生きる糧を得るため、そして年老いて死ぬためにあったのだ。」
巻頭の一文が、最後まで大きな意味を持つ作品でした。
貧しい時代に懸命に生きた父親について記すことが、一族にとっても事実を表現することでもあり、表現が難しい細かい郷里への感情や自責、これらが一体となってこの作品を作っています。
閻連科さんが、「農村」から離れるも、「農村」から逃れられず、今も創作の多くが「農村」に立脚している。この背景がよく理解できました。父や一族を見る視点が「偉大であるが、欠点にも向き合う」であったことが、この作品が支持される理由だと思いました。
「農村」の普通の人々の人生、運命。これらが、中国で読まれる原点だと思うと同時に、程度の差はあれ日本でも同様なところが、感情移入しやすい作品が多くなる理由だと感じました。
今日で261日目、私の朝のルーティンです。